良いものは全部ヒトのもの

猫枕

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 対談の当日、気の進まないミリアムに対してシャイニーは浮き足立ってそのままどっかに飛んで行きそうにフワフワしている。

 めかしこんだところで美しくなれるわけでもなく、却ってグリッターに好かれようと頑張っているように勘違いされるのも癪に障るので、失礼にならない程度の無難な格好に留めたミリアムに比してシャイニーは気合いが入っていた。

 光沢のある水色のドレスにはふんだんにレースがあしらわれており、髪飾りはまるでティアラのようだった。

 二人で並ぶとお姫様とメイドのようだと心の中で自嘲しながら会場の高級ホテルに向かう。

 控え室にシャイニーを残して対談の為に用意された部屋へ向かうとき、シャイニーが両の手をグッと握って頑張ってのポーズをした。

 案内された部屋でソファーに座ると、約束の時間から大幅に遅刻してライターに伴われた男性が入室してきた。

 背の高さは普通。痩せ型の男だった。

 遅れて来たことを詫びるでもなく挨拶もなしにソファーに座ると開口一番

「へぇーアンタがマダム・シャノアール?

 思ってたのと違うね」

 随分失礼な男だ。

 ミリアムは一応フォーマルな装いをしてきたのに、目の前の男は、よくその格好でこのホテルに入れましたね、と突っ込みたくなるヨレヨレ具合だった。

 髪はボサボサ伸び放題。

 伸び過ぎた前髪のせいで顔はほとんど見えない。

 仕方なくライター主導で対談が始まるが第一印象最悪の相手と話が盛り上がるわけもない。

 ふとグリッターがコーヒーを飲もうと前髪を掻き上げる。
 すると、こんなイケメンが一体今までどこに隠れていたの?というくらいの中性的な美貌の男が現れた。

新聞社の人によるとグリッターは高位貴族のご令息だそうだが、こんなイケメンが社交界で噂にならないわけがない。

 きっとグリッターは社交の場には顔を出さない変人なんだろう。

 しかし、いくら彼が絶世の美男子だからどうだというのだ。
 
 感じの悪いヤツに変わりはない。

 特段 面白い話もないまま対談は終わった。

 
さっさと部屋を出ていこうとするグリッターをミリアムは引き留めた。


「すみません。ホンの1分でいいので会っていただきたい人がいるんです」
 
 
 グリッターはあからさまに嫌そうな顔を、したんだと思う、前髪で見えないけど。


「そういうの、断ってんだよね」

 
ミリアムは新聞社のライターに急いでシャイニーを連れてきてくれるよう頼んでグリッターの腕をガッシと掴んだ。


「あ、あの、さっき、お聞きするのを忘れたことがあるんです。もうちょっと、もうちょっとだけお話しましょうよ」


ヤメロ、待って、離せ、と二人で揉み合っているとドアがノックされシャイニーが入ってきた。

 

「ご無理言って、ごめんなさい」



 すまなさそうに言ったシャイニーを見て、グリッターの動きが止まった。



 「・・・・フェアリーちゃん・・」
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