良いものは全部ヒトのもの

猫枕

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 結果から言うとミリアムの小説は2位だった。

 まったく私らしいわね、と苦笑いのミリアムだったが、副賞の賞金も嬉しかったし受賞作は新聞に掲載されることにもなった。

 本名を知られたくないミリアムはペンネームで応募したが、受賞に際しても個人情報は一切秘匿を押し通すことにした。

 ミリアムはよく猫みたいな目だと言われるし、髪の毛が真っ黒なので、黒猫を意味するシャノアールというペンネームにした。

 ちなみに1位の作品は文学的価値が高いということで、新聞ではなく文芸雑誌、
シェイプ オブ ザ ハート での掲載となった。

 ミリアムの小説が新聞に載ると反響がすごかった。

 特に奥様方からの支持が絶大で、編集部はホクホクしていた。

 新聞掲載がダイジェスト版だったので、近く未掲載分を含めた単行本を出版する運びとなったが、既に予約注文が多数入っているという。

 編集部には全国から手紙が寄せられ、自分の事を書いているかと思ったなどという共感も寄せられた。

 手紙の中には相談めいたことも相当数含まれていたので、編集長は

 「マダム・シャノアールの
     女は波乱万丈」

なる人生相談のコーナーを立ち上げると勝手に決めていた。

 それについては相談しないのか!と突っ込んだミリアムだったが、突っ込むべきは「マダム」の方ではないかという指摘はなかった。


 加えて来月からは新連載も始まるということで、さすがのミリアムもこれ以上両親に内緒にしておくわけにもいかなくなった。





 夕食の席でミリアムは綺麗に包装された箱を両親それぞれに渡した。

 「なにかしら?」

「プレゼントかい?誕生日でも何かの記念日でもないのに」

「まあ、開けてよ」

 なんだろう?と首を傾げながらも面白そうに包みを開ける二人。
 
 中から出てきたちょっと高級な万年筆は名入れがしてあるお揃いだ。

「あら、ステキじゃない」

 「どうしたんだい?」

「初めて自分でお金を稼いだ記念のプレゼントよ」

「自分で稼いだって、どうやって?」

ミリアムは懸賞小説のことを話した。

「マダム・シャノアールのことは職場の女の子たちが話題にしていたよ」

「あの小説を書いていたのがミリアムだったとはね・・・・マダムって・・・・」


「それで、マダム・シャノアールが私ってことは秘密にして欲しいの」

「なんで~。早速明日自慢しようと思ってたのに~。
 この小説書いてるのボクの娘だよ~って」

「お父様、もしバラしたら一生口利かないから!」

「え?・・・・・分かったよ」

 こうしてミリアムの女子学生 兼 覆面小説家の二足のわらじ生活がスタートした。


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