5 / 42
5
しおりを挟む結果から言うとミリアムの小説は2位だった。
まったく私らしいわね、と苦笑いのミリアムだったが、副賞の賞金も嬉しかったし受賞作は新聞に掲載されることにもなった。
本名を知られたくないミリアムはペンネームで応募したが、受賞に際しても個人情報は一切秘匿を押し通すことにした。
ミリアムはよく猫みたいな目だと言われるし、髪の毛が真っ黒なので、黒猫を意味するシャノアールというペンネームにした。
ちなみに1位の作品は文学的価値が高いということで、新聞ではなく文芸雑誌、
シェイプ オブ ザ ハート での掲載となった。
ミリアムの小説が新聞に載ると反響がすごかった。
特に奥様方からの支持が絶大で、編集部はホクホクしていた。
新聞掲載がダイジェスト版だったので、近く未掲載分を含めた単行本を出版する運びとなったが、既に予約注文が多数入っているという。
編集部には全国から手紙が寄せられ、自分の事を書いているかと思ったなどという共感も寄せられた。
手紙の中には相談めいたことも相当数含まれていたので、編集長は
「マダム・シャノアールの
女は波乱万丈」
なる人生相談のコーナーを立ち上げると勝手に決めていた。
それについては相談しないのか!と突っ込んだミリアムだったが、突っ込むべきは「マダム」の方ではないかという指摘はなかった。
加えて来月からは新連載も始まるということで、さすがのミリアムもこれ以上両親に内緒にしておくわけにもいかなくなった。
夕食の席でミリアムは綺麗に包装された箱を両親それぞれに渡した。
「なにかしら?」
「プレゼントかい?誕生日でも何かの記念日でもないのに」
「まあ、開けてよ」
なんだろう?と首を傾げながらも面白そうに包みを開ける二人。
中から出てきたちょっと高級な万年筆は名入れがしてあるお揃いだ。
「あら、ステキじゃない」
「どうしたんだい?」
「初めて自分でお金を稼いだ記念のプレゼントよ」
「自分で稼いだって、どうやって?」
ミリアムは懸賞小説のことを話した。
「マダム・シャノアールのことは職場の女の子たちが話題にしていたよ」
「あの小説を書いていたのがミリアムだったとはね・・・・マダムって・・・・」
「それで、マダム・シャノアールが私ってことは秘密にして欲しいの」
「なんで~。早速明日自慢しようと思ってたのに~。
この小説書いてるのボクの娘だよ~って」
「お父様、もしバラしたら一生口利かないから!」
「え?・・・・・分かったよ」
こうしてミリアムの女子学生 兼 覆面小説家の二足のわらじ生活がスタートした。
31
お気に入りに追加
856
あなたにおすすめの小説
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。
ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。
なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。
妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。
しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。
この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。
*小説家になろう様からの転載です。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
【完結】婚約解消ですか?!分かりました!!
たまこ
恋愛
大好きな婚約者ベンジャミンが、侯爵令嬢と想い合っていることを知った、猪突猛進系令嬢ルシルの婚約解消奮闘記。
2023.5.8
HOTランキング61位/24hランキング47位
ありがとうございました!
第一夫人が何もしないので、第二夫人候補の私は逃げ出したい
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のリドリー・アップルは、ソドム・ゴーリキー公爵と婚約することになった。彼との結婚が成立すれば、第二夫人という立場になる。
しかし、第一夫人であるミリアーヌは子作りもしなければ、夫人としての仕事はメイド達に押し付けていた。あまりにも何もせず、我が儘だけは通し、リドリーにも被害が及んでしまう。
ソドムもミリアーヌを叱責することはしなかった為に、リドリーは婚約破棄をしてほしいと申し出る。だが、そんなことは許されるはずもなく……リドリーの婚約破棄に向けた活動は続いていく。
そんな時、リドリーの前には救世主とも呼べる相手が現れることになり……。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる