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森の邸から見上げる夜空は都会の空とは違って荘厳な美しさがある。
人工的な物を一切廃した自然だけの正に神が創りたもうたそのままの美。
セレネがうっとりと星空を眺めて、
「ゼファー様、あの『墨壺座』の北北東にちょっと離れたところに輝いている星、キレイですね」
「どれ?アレ?」
「アレじゃなくてソレです」
「ソレ?」
「違います。アレです」
「ああ~アレか~」
「そうです!なんかピンクっぽくて可愛くないですか?」
「よしきた、待ってろ!
今、採ってやるからな」
「ヤメテくださいよ~!
人類滅亡するじゃないですかぁ」
「そうかぁ?
俺はオマエが欲しがる物ならなんだって手に入れてやりたいと思うんだけどな」
「えっ?」
セレネはズキュンときた。
「じゃあ、あの星の輝きに似た石を探して指環を作ろう」
ゼファーはニコニコ笑っていて、セレネをからかっている風でも冗談を言ってる風でもない。
「・・・・そんなの言われたら勘違いしちゃうよ」
「勘違いって?」
「まるでプロポーズみたいじゃないですかぁ」
「え?セレネは俺と結婚しないの?
俺はてっきりそのつもりで動いてたんだけど」
「??ゼファー様はご結婚されるんですよね?」
「うん」
「どこかの国のお姫様と」
「オマエと」
「だってこの前王様に呼び出されてたじゃないですか。
ヴィクトリア王女様がどうとかって」
「は?俺はちゃんと断っただろう?
見てなかったの?」
「見ちゃ悪いかと思って・・・・」
「ええーっっ!!
俺、メッチャ格好つけて
『俺には心に決めた女がいるんだ!
魔法で解決できることならいくらでも協力するが、この恋心だけは譲れねぇ!!
セレネー!!愛してるぞー!!』
って言ったじゃ~ん」
ゼファーは両手をブンブン振りながら体を捩ってスネている。
「・・・聞かなくて良かったかも」
「オマエが何にも言わないからてっきりオッケーなのかと思ってたよ」
「・・・・まあ、オッケーですけど・・・ちゃんとロマンチックにプロポーズして欲しいかな・・・・って」
ゼファーが紺色の前髪を掻き上げると普段見たこともないようなよそ行きの顔が出てきた。
いつもヘラヘラ笑っているちょっとタレ気味の大きな目が、キリッ!としている。
夜空の星に負けないキラッキラの目でじっと見つめられてセレネは恥ずかしさにモジモジした。
「セレネ」
「ハイ」
ゼファーはいつもと違う、メッチャ良い声を響かせた。
「俺の『大人のキノコの山』を食べてくれないか?」
バッチーーーーーン!!!
「痛ってェーーーーーーーー!!!」
「ねぇセレネたん。機嫌直してよ」
「ぶーだ!」
「イザって時にフザケちゃうの。
サービス精神旺盛だから」
「そんなのサービス精神と違うモン」
「ねぇ、これ王宮のマカロンだよ。綺麗でしょ?美味しいよ」
「このコソ泥が。
ゼファー様は盗んできた物で私を養うおつもりなんですか?プンプン」
「人聞きの悪いこと言うなよ~。
これは俺と兄貴のじゃれ合いみたいなもんなんだから」
「そういえばゼファー様の女性の好みってどんな感じなんですか?
母と王妃様じゃ全然違うような気がするんですけど」
「う~ん。ダフネさんの次に好きになったのは街のパン屋の奥さんだったな。
ふっくらパンみたいに笑顔の素敵な美味しそうな女性だったよ」
「美味しそう?」
「支給される飯だけじゃ足りなくてな、時々瞬間移動で城を抜け出してたのよ。
で、パン屋の奥さんはいつもニコニコしながらジャムパンをオマケしてくれるのよ。
あ、この人俺に惚れてんな~って」
「・・・・腹ペコ坊主が不憫だっただけじゃない?」
「その次は学校の食堂のおばさん。
いっつも大盛りにしてくれんの。
なんか、俺って年上にモテるんだよねー」
「・・・・・」
「で、学校の事務のお姉さんでしょ。
すっごいニコニコして挨拶してくれるの。どんだけ俺に惚れてんの?って感じだよな」
何故かセレネの頭に
「おめでとう!」「おめでとう!」
と互いに言い合っている復活祭の場面が思い浮かんだ。
「・・・・話を要約すると、ゼファー様は食べ物をくれる人の事を好きになっちゃうってこと?」
「うーん。どっちかって言うと、優しくしてくれた人、なのかなぁ?
俺は優しさに餓えていたのかもね」
うわっ…こうやってサラっと同情を買う手法、計算なのかしら?
「まあ、俺って根っからの次男気質っての?
甘えん坊だからな」
「王妃様にも甘えてたんですか?」
「アイツは俺を甘やかしてはくれなかったよ。
ちゃんとしろ、って叱られるのもまた嬉しかったな」
『ただの、かまってちゃんなんじゃないだろうか?』
大魔法使い、かまってちゃん。
「・・・・私は年上でもなければゼファー様を甘やかしてあげられる包容力もありませんよ」
セレネは自分がゼファーの初恋の相手ダフネに似ているから私を選んだのではないかと不安になった。
「ゼファー様はどうして私を伴侶にしようとお思いになられたのですか?」
するとゼファーは溶けるような優しい笑顔でこう言った。
「俺は今まで他人に優しくしてもらいたくて、親切にしてもらえると嬉しくて、この女性が俺の運命の人なんだって思ってた。
だけどセレネが初めてなんだ。
望む事は何でもしてやりたい!
って思えたのは。
セレネに出会って初めて俺は与える歓びを知ったんだ」
人工的な物を一切廃した自然だけの正に神が創りたもうたそのままの美。
セレネがうっとりと星空を眺めて、
「ゼファー様、あの『墨壺座』の北北東にちょっと離れたところに輝いている星、キレイですね」
「どれ?アレ?」
「アレじゃなくてソレです」
「ソレ?」
「違います。アレです」
「ああ~アレか~」
「そうです!なんかピンクっぽくて可愛くないですか?」
「よしきた、待ってろ!
今、採ってやるからな」
「ヤメテくださいよ~!
人類滅亡するじゃないですかぁ」
「そうかぁ?
俺はオマエが欲しがる物ならなんだって手に入れてやりたいと思うんだけどな」
「えっ?」
セレネはズキュンときた。
「じゃあ、あの星の輝きに似た石を探して指環を作ろう」
ゼファーはニコニコ笑っていて、セレネをからかっている風でも冗談を言ってる風でもない。
「・・・・そんなの言われたら勘違いしちゃうよ」
「勘違いって?」
「まるでプロポーズみたいじゃないですかぁ」
「え?セレネは俺と結婚しないの?
俺はてっきりそのつもりで動いてたんだけど」
「??ゼファー様はご結婚されるんですよね?」
「うん」
「どこかの国のお姫様と」
「オマエと」
「だってこの前王様に呼び出されてたじゃないですか。
ヴィクトリア王女様がどうとかって」
「は?俺はちゃんと断っただろう?
見てなかったの?」
「見ちゃ悪いかと思って・・・・」
「ええーっっ!!
俺、メッチャ格好つけて
『俺には心に決めた女がいるんだ!
魔法で解決できることならいくらでも協力するが、この恋心だけは譲れねぇ!!
セレネー!!愛してるぞー!!』
って言ったじゃ~ん」
ゼファーは両手をブンブン振りながら体を捩ってスネている。
「・・・聞かなくて良かったかも」
「オマエが何にも言わないからてっきりオッケーなのかと思ってたよ」
「・・・・まあ、オッケーですけど・・・ちゃんとロマンチックにプロポーズして欲しいかな・・・・って」
ゼファーが紺色の前髪を掻き上げると普段見たこともないようなよそ行きの顔が出てきた。
いつもヘラヘラ笑っているちょっとタレ気味の大きな目が、キリッ!としている。
夜空の星に負けないキラッキラの目でじっと見つめられてセレネは恥ずかしさにモジモジした。
「セレネ」
「ハイ」
ゼファーはいつもと違う、メッチャ良い声を響かせた。
「俺の『大人のキノコの山』を食べてくれないか?」
バッチーーーーーン!!!
「痛ってェーーーーーーーー!!!」
「ねぇセレネたん。機嫌直してよ」
「ぶーだ!」
「イザって時にフザケちゃうの。
サービス精神旺盛だから」
「そんなのサービス精神と違うモン」
「ねぇ、これ王宮のマカロンだよ。綺麗でしょ?美味しいよ」
「このコソ泥が。
ゼファー様は盗んできた物で私を養うおつもりなんですか?プンプン」
「人聞きの悪いこと言うなよ~。
これは俺と兄貴のじゃれ合いみたいなもんなんだから」
「そういえばゼファー様の女性の好みってどんな感じなんですか?
母と王妃様じゃ全然違うような気がするんですけど」
「う~ん。ダフネさんの次に好きになったのは街のパン屋の奥さんだったな。
ふっくらパンみたいに笑顔の素敵な美味しそうな女性だったよ」
「美味しそう?」
「支給される飯だけじゃ足りなくてな、時々瞬間移動で城を抜け出してたのよ。
で、パン屋の奥さんはいつもニコニコしながらジャムパンをオマケしてくれるのよ。
あ、この人俺に惚れてんな~って」
「・・・・腹ペコ坊主が不憫だっただけじゃない?」
「その次は学校の食堂のおばさん。
いっつも大盛りにしてくれんの。
なんか、俺って年上にモテるんだよねー」
「・・・・・」
「で、学校の事務のお姉さんでしょ。
すっごいニコニコして挨拶してくれるの。どんだけ俺に惚れてんの?って感じだよな」
何故かセレネの頭に
「おめでとう!」「おめでとう!」
と互いに言い合っている復活祭の場面が思い浮かんだ。
「・・・・話を要約すると、ゼファー様は食べ物をくれる人の事を好きになっちゃうってこと?」
「うーん。どっちかって言うと、優しくしてくれた人、なのかなぁ?
俺は優しさに餓えていたのかもね」
うわっ…こうやってサラっと同情を買う手法、計算なのかしら?
「まあ、俺って根っからの次男気質っての?
甘えん坊だからな」
「王妃様にも甘えてたんですか?」
「アイツは俺を甘やかしてはくれなかったよ。
ちゃんとしろ、って叱られるのもまた嬉しかったな」
『ただの、かまってちゃんなんじゃないだろうか?』
大魔法使い、かまってちゃん。
「・・・・私は年上でもなければゼファー様を甘やかしてあげられる包容力もありませんよ」
セレネは自分がゼファーの初恋の相手ダフネに似ているから私を選んだのではないかと不安になった。
「ゼファー様はどうして私を伴侶にしようとお思いになられたのですか?」
するとゼファーは溶けるような優しい笑顔でこう言った。
「俺は今まで他人に優しくしてもらいたくて、親切にしてもらえると嬉しくて、この女性が俺の運命の人なんだって思ってた。
だけどセレネが初めてなんだ。
望む事は何でもしてやりたい!
って思えたのは。
セレネに出会って初めて俺は与える歓びを知ったんだ」
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