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しおりを挟む「・・・というわけなのよ」
リーヴィアが適当にあしらうと、
「何も答えてないじゃない!」
とキレるコリーナ。
「・・・ったく冗談も通じないな。
だって、説明すんの面倒くさくって。
大体このメンツ見れば想像つくでしょ?」
コリーナは一同を見回して、
「私を除け者にしようなんて随分偉くなったもんだわね。苛められっ子のウジウジだったくせに!
アンタの周りだけ湿度高め~!」
とリーヴィアに向けて相変わらずの暴言を吐きながら、誘ってもいないのにギャルソンに椅子を用意させて当然のようにリーヴィアとラルスの間に割り込んだ。
「ドンコはイジメられっ子だったのか?」
『そこは掘り下げんでいいのよ、団長』
「で?何の集まりなの?」
尚も食い下がるコリーナ。
一同がお互いの出方を伺うように沈黙を続ける中、
「ミスティック・Kさんに団長さんとゾーイさんを会わせに行くんだ」
とジャンがゲロった。
「「オイっ!!」」
リーヴィアとヴェリタスにジャンが
『ごめ~ん』と口をパクパクさせる。
ま、わかるよ。コリーナの圧に抗うのは心臓がキューッてなるからね。
アンタが黙ってたって、どうせラルスがペラペラ喋るんだからさ!
「アンタ達さぁ」
コリーナがリーヴィア、ヴェリタス、ジャンの三人を睨む。
「アンタ達がミスティック・Kとやらに会えたのは誰のお陰でしたっけ?」
「・・・偉大なる経営者、ウリエル・ダ・シルバ様のお陰です」
コリーナはチッ!と小さく舌打ちして、
「まあ、いいわ。
その偉大なるお父様の娘である私コリーナ・ダ・シルバの〝パパお願い〟があったからこそよねぇ?」
「「「・・・はい」」」
「その私を蔑ろにするって人としてどうよ?」
『人としてどうかと思うのは元同級生の親に挨拶もせずにその人の前で偉そうに娘を叱責してるオマエの方だぞ』
コリーナはヴェリタスの母親など取るに足りない存在と思っているのか、それとも全く眼中に入って無いかのどっちかなんだろう。
当のソラリスが一連のやり取りを面白そうにニヤニヤして見ているのが救いだ。
「ダ・シルバさんは僕達が気安く連絡を取れるような存在じゃないからさ」
ジャンが言い訳をする。
「ほら、前に会った時も大学の前で待ち伏せしてやっと会えたくらいなんだし」
僕達危うく警察に連れて行かれそうになったんだよ~、と気弱に笑って見せるジャンに溜飲を下げたコリーナが、
「ま、そうだわよね」
とすぐに機嫌を直す。
「だけど8人で行くとなると大きめな車が必要よね?」
「8人?」
「運転手入れれば9人になるわね」
『やっぱり来るんだ~』
『めんどくせぇ~』
リーヴィアとヴェリタスは目だけで会話した。
「あ、それと、うちのファラオちゃんも行くから10人乗りね」
〝ファラオちゃん〟とはコリーナが連れて来た見るからに高級そうだが躾の悪い犬のことらしい。
さっきから泥の着いた前足でリーヴィアのスカートに登って、隙あらば皿から食べ物を奪っていく。
「犬も?」
「犬って言わないで!ファラオよ!」
「犬だろ。ってか普通レンタカーにペットはご遠慮ください、じゃないの?」
「ペットじゃないもん。家族だもん」
コリーナが超絶可愛い顔でラルスに上目遣いで助けを求める。
「う、・・・うん。乗せていいか、頼んでみよっか」
コリーナのうるうるに頬を赤らめるラルス。
事情を知らない団長とゾーイは何故ドンコの夫とコリーナが〝いい感じ〟なのか困惑気味だ。
二人はドンコを盗み見たが、ドンコが気にする素振りは全く無い。
『こっちの世界の流儀なのかも知れないな』
二人はこの件については追及しないことに決めた。
「そうだ!
うちの交通会社で観光バスもやってるから手配させればいいのよ。
それならファラオちゃんが一緒でも文句無いわよね?」
コリーナが名案名案と勝手に話を進める。
一同がソラリスを伺い見るが、
「私はどっちだって構わないわよ」
と気にしている様子は無い。
かくしてソラリスがかつて恩を売ったハイヤー業者ではなく、『ダ・シルバ観光』の小型バスで一行はミスティック・Kに会いに行くことになった。
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