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「おい、ドンコ起きろ」
ゾーイの言葉でリーヴィアはヴァルノー家の自分の部屋で目覚めた。
きっとヴェリタスとジャンも今頃自分の部屋で眠っているんだろう。
「ほう、これがドンコの部屋か。
思ったよりは片付いているな」
家政婦が掃除してるのを知らない団長が物珍しそうに部屋を見回している。
「しっ!ヨハンナに見つかったら面倒だから」
部屋に男がいることを姑にバレたら大騒ぎするに違いない。
そして彼らが〝あっちの世界〟の騎士団員だなんて知ったら有頂天で騒ぎまくって彼らを質問攻めにするに決まっている。
想像するだけで恐ろしい。
リーヴィア達三人はまだ夜の明けやらぬ薄暗い中、こっそり邸を抜け出すことにした。
抜き足差し足そっと門に近づいたところで、
「リーヴィア」
背後から声を掛けられビクつく。
「なにしてるの?」
なんでこんな時間にいるのかなぁ?げんなりしながら振り向きざまにラルスを認める。
「今ちょっと取り込み中だから。じゃ」
さっさと立ち去ろうとするリーヴィア達を引き止めるラルス。
「この人達誰?」
「・・・あっちから来た〝月光騎士団〟の人」
面倒くさそうに返事するリーヴィアの様子に団長とゾーイはどうしたらいいのか分からずに「あ、どーも」的な曖昧な挨拶をラルスに向ける。
「えっ?!本物の月光騎士団の人?!」
「しっ!声デカいよ。ババアが起きたら困るでしょ?」
リーヴィアがこっちこっちと団長達を誘導して門の外に出ると後ろからラルスもついてくる。
自分の母親をババア呼ばわりされた件について一応抗議した方がいいかどうか迷いながら。
「なんでラルスがこんな時間に外にいるのよ?」
ついてくんな、と言わんばかりのリーヴィアの態度に若干挫けそうになりながらも、
「今日からジョギング始めようと思って」
と何故か誇らしげなラルス。
なかなか感心じゃないか、という団長の言葉に、
「いつでも騎士団に入れるようにと思いまして」
とおかしなことを口走るラルス。
「騎士団に入る?」
リーヴィアの顰めっ面に慌てて、
「いや、騎士団に入れるくらい体力をつけたいって、そういうことだよ」
と誤魔化すと、
「ま、どうでもいいけどね」
といかにも関心無さ気に返されて落ち込むラルス。
「・・・えっ・・・と、ドンコ、宜しければこちらの御人を紹介頂けないかな?」
団長の言葉に顔を輝かせたラルスが
「申し遅れまして。
私はリーヴィアの夫のラルス・ヴァルノーと申します」
と爽やかに自己紹介した。
「「・・・ヴァルノー・・・」」
『え?え?なに?なんか問題でも?』
しかし団長達は其々に簡単な自己紹介をして、それ以後〝ヴァルノー〟について言及することはなかったので、その話はそれっきりになってしまった。
「こ、これから皆さんはどうされるのですか?」
ラルスが作り笑いで探りを入れる。
なんとかなし崩し的に仲間に入りたい。
「もう少し常識的な時間になるまでどっかで時間潰して、ヴェリタスとジャンと合流する予定よ」
「へ、へぇ~・・・で?そのあとは?」
「〝月光騎士団〟の作者に会いに行くのさ」
ゾーイが答えると、ラルスの頭の中は、オラなんかワクワクすっぞ!状態になった。
〝月光騎士団〟の作者と〝本物の騎士〟の邂逅。
そのファンタジーな展開を目の前で目撃する俺!!
「行けば?」
「は?」
「ジョギング。行くんでしょ?」
「えっ?」
『そんなぁ~。俺だけ仲間外れとかヤメようよ~』
そこにはトリニティ学園で、いつも陰口を叩かれて身を潜めるようにオドオドしていたリーヴィアの姿は無かった。
「あっち行け」と言わんばかりの冷たい視線に射抜かれながら、
『ああ、そう言えば、記憶の彼方に行ってしまっていたが本来のリーヴィアってあまり物事にとらわれない呑気な性格で、意地悪ではない反面大分Sキャラだったよな~』
と記憶の糸を手繰り寄せるラルス。
『〝私が悪うございました。
過去のことは心から悔いて反省しています。
どうか仲間に入れてください〟
って、もう、言っちゃおっかな~。
プライドとか、なんかそういうの、もう、どうでもいっかな~』
いつかちゃんとリーヴィアに謝りたいと思ってはいるけど、でも第三者がいる場所ではちょっと嫌だな。
そんなことをボンヤリ考えていると、
「じゃ、団長。俺達もジョギングしましょうか?」
とゾーイが言って、
「そうだな。こんな早朝じゃコーヒー屋も開いてないだろうしな。
私達もお供して宜しいか?」
と団長がラルスに笑いかけた。
「え~。私は走んないからね。
私は〝ル・プチ・デジュネ〟でお茶飲んでるから終わったら来てね。
あそこは朝5時から開いてるんだもん。
場所分かる?ラルス」
『それって、それって、ジョギング終わったら団長さんとゾーイさんを連れて来いってことだよね?
俺も一緒にプチ・デジュネできるってことだよね?』
ラルスはめちゃくちゃイケメンな顔で、
「もちろんさ。まかせて」
と白い歯で笑った。
◆◆◆
全身神経痛?みたいな感じで痛いッシュ!
しばらく書けたら投稿というスタイルでいきたいと思います。
宜しくお願いします。
ゾーイの言葉でリーヴィアはヴァルノー家の自分の部屋で目覚めた。
きっとヴェリタスとジャンも今頃自分の部屋で眠っているんだろう。
「ほう、これがドンコの部屋か。
思ったよりは片付いているな」
家政婦が掃除してるのを知らない団長が物珍しそうに部屋を見回している。
「しっ!ヨハンナに見つかったら面倒だから」
部屋に男がいることを姑にバレたら大騒ぎするに違いない。
そして彼らが〝あっちの世界〟の騎士団員だなんて知ったら有頂天で騒ぎまくって彼らを質問攻めにするに決まっている。
想像するだけで恐ろしい。
リーヴィア達三人はまだ夜の明けやらぬ薄暗い中、こっそり邸を抜け出すことにした。
抜き足差し足そっと門に近づいたところで、
「リーヴィア」
背後から声を掛けられビクつく。
「なにしてるの?」
なんでこんな時間にいるのかなぁ?げんなりしながら振り向きざまにラルスを認める。
「今ちょっと取り込み中だから。じゃ」
さっさと立ち去ろうとするリーヴィア達を引き止めるラルス。
「この人達誰?」
「・・・あっちから来た〝月光騎士団〟の人」
面倒くさそうに返事するリーヴィアの様子に団長とゾーイはどうしたらいいのか分からずに「あ、どーも」的な曖昧な挨拶をラルスに向ける。
「えっ?!本物の月光騎士団の人?!」
「しっ!声デカいよ。ババアが起きたら困るでしょ?」
リーヴィアがこっちこっちと団長達を誘導して門の外に出ると後ろからラルスもついてくる。
自分の母親をババア呼ばわりされた件について一応抗議した方がいいかどうか迷いながら。
「なんでラルスがこんな時間に外にいるのよ?」
ついてくんな、と言わんばかりのリーヴィアの態度に若干挫けそうになりながらも、
「今日からジョギング始めようと思って」
と何故か誇らしげなラルス。
なかなか感心じゃないか、という団長の言葉に、
「いつでも騎士団に入れるようにと思いまして」
とおかしなことを口走るラルス。
「騎士団に入る?」
リーヴィアの顰めっ面に慌てて、
「いや、騎士団に入れるくらい体力をつけたいって、そういうことだよ」
と誤魔化すと、
「ま、どうでもいいけどね」
といかにも関心無さ気に返されて落ち込むラルス。
「・・・えっ・・・と、ドンコ、宜しければこちらの御人を紹介頂けないかな?」
団長の言葉に顔を輝かせたラルスが
「申し遅れまして。
私はリーヴィアの夫のラルス・ヴァルノーと申します」
と爽やかに自己紹介した。
「「・・・ヴァルノー・・・」」
『え?え?なに?なんか問題でも?』
しかし団長達は其々に簡単な自己紹介をして、それ以後〝ヴァルノー〟について言及することはなかったので、その話はそれっきりになってしまった。
「こ、これから皆さんはどうされるのですか?」
ラルスが作り笑いで探りを入れる。
なんとかなし崩し的に仲間に入りたい。
「もう少し常識的な時間になるまでどっかで時間潰して、ヴェリタスとジャンと合流する予定よ」
「へ、へぇ~・・・で?そのあとは?」
「〝月光騎士団〟の作者に会いに行くのさ」
ゾーイが答えると、ラルスの頭の中は、オラなんかワクワクすっぞ!状態になった。
〝月光騎士団〟の作者と〝本物の騎士〟の邂逅。
そのファンタジーな展開を目の前で目撃する俺!!
「行けば?」
「は?」
「ジョギング。行くんでしょ?」
「えっ?」
『そんなぁ~。俺だけ仲間外れとかヤメようよ~』
そこにはトリニティ学園で、いつも陰口を叩かれて身を潜めるようにオドオドしていたリーヴィアの姿は無かった。
「あっち行け」と言わんばかりの冷たい視線に射抜かれながら、
『ああ、そう言えば、記憶の彼方に行ってしまっていたが本来のリーヴィアってあまり物事にとらわれない呑気な性格で、意地悪ではない反面大分Sキャラだったよな~』
と記憶の糸を手繰り寄せるラルス。
『〝私が悪うございました。
過去のことは心から悔いて反省しています。
どうか仲間に入れてください〟
って、もう、言っちゃおっかな~。
プライドとか、なんかそういうの、もう、どうでもいっかな~』
いつかちゃんとリーヴィアに謝りたいと思ってはいるけど、でも第三者がいる場所ではちょっと嫌だな。
そんなことをボンヤリ考えていると、
「じゃ、団長。俺達もジョギングしましょうか?」
とゾーイが言って、
「そうだな。こんな早朝じゃコーヒー屋も開いてないだろうしな。
私達もお供して宜しいか?」
と団長がラルスに笑いかけた。
「え~。私は走んないからね。
私は〝ル・プチ・デジュネ〟でお茶飲んでるから終わったら来てね。
あそこは朝5時から開いてるんだもん。
場所分かる?ラルス」
『それって、それって、ジョギング終わったら団長さんとゾーイさんを連れて来いってことだよね?
俺も一緒にプチ・デジュネできるってことだよね?』
ラルスはめちゃくちゃイケメンな顔で、
「もちろんさ。まかせて」
と白い歯で笑った。
◆◆◆
全身神経痛?みたいな感じで痛いッシュ!
しばらく書けたら投稿というスタイルでいきたいと思います。
宜しくお願いします。
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