58 / 62
58
しおりを挟む
団長が意を決してガムの包み紙を開けようとした時、
「ちょっと待ってください」
ジャンが止めた。
「もし、思惑通り〝あっち〟に団長さんとゾーイさんが行ったとして、その時に僕達が〝あっち〟に居なければ困ったことになるんじゃないでしょうか?」
「なるほど。確かに向こうに知り合いは居ないし状況も分からないからな」
「元団長に会いに行くったって、どうすりゃ会えるかも分からないし、第一俺達が勝手に敬愛してるってだけで知り合いでもなんでもないしな」
「僕達は同時にあっちに行く必要があります」
「どうやって?」
「・・・分かりませんが、取り敢えず僕とヴェリタスは今のところ向こうで起きなければいけない時間には目覚めるので問題無いとは思うんですが」
「が?」
「問題はリーヴィアです。リーヴィアがどのタイミングで行き来しているのか、今だに不明なんです」
「存在そのものがイレギュラーな感じするもんな、ドンコは」
とゾーイ。
「なら、どうすれば?」
「・・・有効かどうかはわかりませんが、皆で同時に食べて〝あっち〟に行くことを強く願う、というのはいかがでしょうか?」
「まあ、なんか、それっぽい感じはするわよね」
とヴェリタス。
「しかして、同時に食べるとは?・・・何を・・・」
団長の目がテーブルに置かれたクタクタのガムらしき物を捉える。
同じ物を見つめるヴェリタスの顔も引きつっている。
「・・・まさに、旅は道連れだな」
ゾーイが呟く。
2枚のガムを5人で分けるというのはなかなかに難易度が高い。
「そっちが少ないんじゃないか?」
とか
「いや、そっちが」
と、この場合はいかにより多くを自分以外に押し付けるかで一悶着して、いよいよ、こねくり回されて汚い粘土みたいになったガムっぽい物が各自の前に用意され、覚悟を決めて、と言う時にリーヴィアの爆笑が響いた。
「アハハハ・・・これさ、皆で輪になって手を繋いで『いざ!行かん!』かなんか念じてさ、モグモグモグモグやって、結局何も起こらなかったら超ウケなんだけどォ~。アハハハハハハ」
「「「「・・・・・・・」」」」
「ドンコは『誰しもが思ってはいるが敢えて口にしない事』を平気で言うのは何なんだ」
団長は呆れて脱力した。
「と、とにかくやってみようよ」
ジャンが言って、一同は「裏切りっこ無しよ?」と何度も確認して、せーの!で口に入れた。
「なんだミント味か」
「意外と平気かも」
「むしろ爽やかかも」
一同は腹痛を起こすのではないかという恐怖の中、なんとか自分を励まそうとポジティブな発言をした。
病は気から。
そんな言葉を心の支えに。
そこでまたリーヴィアが、
「なんかちょっと塩味しない?」
と余計なことを言い、皆がうぇ~っとなったところで、
「月の女神エストに願い奉らん。
我らを光の道に導きたまへ」
リーヴィアが〝月光騎士団〟のセリフを唱えると辺りを柔らかな虹色の光が包み、一同の姿が消えた。
「ちょっと待ってください」
ジャンが止めた。
「もし、思惑通り〝あっち〟に団長さんとゾーイさんが行ったとして、その時に僕達が〝あっち〟に居なければ困ったことになるんじゃないでしょうか?」
「なるほど。確かに向こうに知り合いは居ないし状況も分からないからな」
「元団長に会いに行くったって、どうすりゃ会えるかも分からないし、第一俺達が勝手に敬愛してるってだけで知り合いでもなんでもないしな」
「僕達は同時にあっちに行く必要があります」
「どうやって?」
「・・・分かりませんが、取り敢えず僕とヴェリタスは今のところ向こうで起きなければいけない時間には目覚めるので問題無いとは思うんですが」
「が?」
「問題はリーヴィアです。リーヴィアがどのタイミングで行き来しているのか、今だに不明なんです」
「存在そのものがイレギュラーな感じするもんな、ドンコは」
とゾーイ。
「なら、どうすれば?」
「・・・有効かどうかはわかりませんが、皆で同時に食べて〝あっち〟に行くことを強く願う、というのはいかがでしょうか?」
「まあ、なんか、それっぽい感じはするわよね」
とヴェリタス。
「しかして、同時に食べるとは?・・・何を・・・」
団長の目がテーブルに置かれたクタクタのガムらしき物を捉える。
同じ物を見つめるヴェリタスの顔も引きつっている。
「・・・まさに、旅は道連れだな」
ゾーイが呟く。
2枚のガムを5人で分けるというのはなかなかに難易度が高い。
「そっちが少ないんじゃないか?」
とか
「いや、そっちが」
と、この場合はいかにより多くを自分以外に押し付けるかで一悶着して、いよいよ、こねくり回されて汚い粘土みたいになったガムっぽい物が各自の前に用意され、覚悟を決めて、と言う時にリーヴィアの爆笑が響いた。
「アハハハ・・・これさ、皆で輪になって手を繋いで『いざ!行かん!』かなんか念じてさ、モグモグモグモグやって、結局何も起こらなかったら超ウケなんだけどォ~。アハハハハハハ」
「「「「・・・・・・・」」」」
「ドンコは『誰しもが思ってはいるが敢えて口にしない事』を平気で言うのは何なんだ」
団長は呆れて脱力した。
「と、とにかくやってみようよ」
ジャンが言って、一同は「裏切りっこ無しよ?」と何度も確認して、せーの!で口に入れた。
「なんだミント味か」
「意外と平気かも」
「むしろ爽やかかも」
一同は腹痛を起こすのではないかという恐怖の中、なんとか自分を励まそうとポジティブな発言をした。
病は気から。
そんな言葉を心の支えに。
そこでまたリーヴィアが、
「なんかちょっと塩味しない?」
と余計なことを言い、皆がうぇ~っとなったところで、
「月の女神エストに願い奉らん。
我らを光の道に導きたまへ」
リーヴィアが〝月光騎士団〟のセリフを唱えると辺りを柔らかな虹色の光が包み、一同の姿が消えた。
80
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く
ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。
逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。
「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」
誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。
「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」
だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。
妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。
ご都合主義満載です!

嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉
海林檎
恋愛
※1月4日12時完結
全てが嘘でした。
貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。
婚約破棄できるように。
人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。
貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。
貴方とあの子の仲を取り持ったり····
私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる