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しおりを挟む「マルム・マールムと戦って現政権を奪取する?そんなの非現実的だよね」
ジャンが冷静に言う。
「下手したら、こっちの方がテロ組織に認定されちゃうよ」
ヴェリタスも団長の主張に対しては懐疑的だ。
「そもそも女神の力が弱まってる、とか言ってるけど、女神信仰は盛んに行われてるように見えるけどなあ。
孔雀卵屋も盛況だし」
リーヴィアも二人に同調する。
「女神信仰は禁止されていたけど、国民の反発を抑えられずに近年復活したんだよ」
「へぇー。そうだったんだ」
「実際、マルム・マールムも女神のご加護が弱まってきたことでこの国に危機が迫ってきていることに気づいて焦ってはいるんだ。
天罰としか思えないような災害が頻発したりしてるからね。
だから、彼らの信仰する〝暗い月〟の神ヌパと女神エストが結婚して一つになった、というような神話をでっち上げて女神信仰に正当性を与えて国民の間に再び女神崇拝のブームを作り出しはしたんだが」
「上手くはいかなかった?」
「女神の力を顕現させるのに必要な王家を滅ぼしてしまったんだからな」
「・・・・ふーん」
「だから、今となってはマルム・マールムも王家の血を継ぐ存在を喉から手が出るほど欲しがっているはず」
「はあ。だからイヤミの奴、あっち側の人間のクセにやたらと〝リーヴィア姫〟を崇拝するようなこと言ってたのか~」
「・・・あいつの場合は元々地下神殿で隠れて信仰するくらい女神に心酔していたから」
団長は遠くを見るような目をして言った。
「元々この国の将来の為にもう一度〝月光騎士団〟を作ろう、と言い出したのはアイツだったんだ」
「え?そうなの?」
団長は深く頷いた。
「もう、あんな奴の話はヤメロよ」
ゾーイが不機嫌に言った。
重い空気を変えようとジャンが
「ちょっと思いついたんですが」と、またおかしなことを言い出した。
「元団長が〝こっち〟に来れないと言うのなら、団長さんとゾーイさんが〝あっち〟に会いに行けばいいんじゃないですかね?」
は?と皆が声を揃えた。
「どうやって?」
「確証はないんですが、僕達は〝こっち〟の食べ物、まあ、月の雫ドロップなんですけど、それを食べたことで〝こっち〟に来れてるんじゃないかと思ってるんです。
多分、リーヴィアの力も何か作用してるとは思いますが」
「・・・・・で?」
「だから、もしかして、ですけど団長さん達が〝あっち〟の食べ物を食べれば〝あっち〟に行けるかも知れないと思ったんですけど」
一同が沈黙する。
「そんな馬鹿なことあるか?」
「・・・無い・・・と思います。
思いますけど、ダメ元で試してみるのも有りじゃないかと」
「・・・どう思う?ゾーイ」
「・・・俺は、元団長さんに助言がもらえるんなら、やってみる価値はあると思う」
リーヴィアがガサゴソとショルダーバッグをまさぐる。
そして内ポケットの底からヨレヨレになったチューインガムを2枚見つけ出した。
「ハイ。どうぞ」
「「・・・・・・」」
「ドンコ、これいつのだよ?」
「なんだかホコリがたかっているぞ」
団長とゾーイが、なんかベタベタしてる~、と言いながら恐る恐る摘み上げる。
「うん、っとね~。多分2年生の時の校外学習で遺跡見に行った時のやつだから、3年は経ってないはずだよ?」
「鞄の中見れば大体ソイツの為人がわかるってもんだよな」
「あと、地図書かせれば大体その人物の頭の程度が分かるというのが私の持論だ」
「なによぉ、二人して私の悪口言ってんでしょ?」
「・・・二人、でも無いかな」
ヴェリタスとジャンも若干引いている。
「ジャン、すまんが次来る時に何か安心して口に入れられるものを持って来てはくれまいか?」
「わかりました」
「大~丈夫だってば~。
ガムが腐るなんて聞いたことないもん」
何故コイツは笑っているのだろう?
一体何が面白いというのだろう?
「だってさぁ~。女神エストから特別なご加護を賜ったって話が本当ならよ?
その私が2年半?持ち歩いてバッグの底で熟成させたガムの方が効き目ありそうじゃない?」
「「「「・・・・・・・」」」」
「・・・そ、そう言われてみると、そんな気もしてくるなあ・・・」
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