52 / 62
52
しおりを挟む
「アンタ達一体何の話をしていたの?」
自分一人が蚊帳の外だったことが面白くないコリーナは帰りの車の中でブツクサ文句を言った。
「気にしなくていいよ。ただのオタクの世迷言だからさ」
ヴェリタスが言うと、
「親のコネを使ってここまで連れてきてあげた私に対してその態度はないんじゃない?」
とご立腹だ。
まあ、確かにコリーナは〝良い奴〟
には程遠いが、かと言って色々利用価値のある人物である。
ご機嫌取りに少々の暴言を甘受しておけばなんやかんやとこっちに都合良く動かせるのだから、完全に関係を切るのは勿体なく思える。
「・・・まあ、どうせ言ったところで信じられる話じゃないだろうからさ」
リーヴィアが仕方なく言うと、
「信じるか信じないかは私が決めるから教えなさいよ」
としつこい。
地元に戻るまで長時間のドライブになるので、
「じゃあ言うけど、他言無用でお願いね。
その代わりダ・シルバさんがラルスと裸で抱き合っていた件についても一生他言しないから」
「アンタ!この私に交換条件を突きつけようなんて、つけあがるのもいい加減にしなさいよ!」
「あーハイハイ」
リーヴィアはちょっと反抗的な態度を取って軽くコリーナを怒らせ、圧倒的にコリーナが上だということを互いに再確認することでコリーナを満足させる、という手法で一通りのお約束のギャイギャイをやってから、トリニティ学園卒業後から現在までの経緯を説明し始めた。
ラルスとは形だけの結婚で初夜にゲロ合戦になった、という話でコリーナは
「きったないわねぇ」
と顔を顰めながらもゲラゲラ笑っていた。
そしてラルスの母親に監禁まがいのことをされた話をすると、嫌いなはずのリーヴィアの為に本気で怒っているようだった。
そして、いよいよ〝あっち〟の世界の話になると、
「アンタ達、全員一度診てもらった方がいいよ。
良い病院紹介しようか?」
と言った。
「ほらね、ヤッパリそうなるから言いたくなかったんだよね」
リーヴィアが不貞腐れると、
「信じられないかも知れないけど本当なんだ」
とジャンが言った。
「えっ?本当なの?」
「なんでジャンが言うと信じるのよ?」
「ジャンの言葉には他人を説得するような重みが感じられるもの」
そうして三人は〝あっち〟に行った経緯についてコリーナに語った。
「じゃあ、私も行くしかないわね」
「「「・・・・・・・・」」」
「なによ」
「「「・・・・・・・・」」」
「感じ悪いわね!」
「・・・飴のせいじゃないかって僕達が勝手に思ってるだけで絶対にそうなのかは分からないよ?」
「いいから」
コリーナは手のひらをグイとジャンの前に差し出した。
「早くよこしなさいよ」
「・・・確認しとくけど、もしダ・シルバさんが〝あっち〟に行けたとしても、〝あっち〟は〝こっち〟とは違う世界だから」
「分かってるわよ」
「〝こっち〟に似てるけど違う世界だから、〝あっち〟では〝こっち〟の身分とか権威とか通用しないから」
「何をうだうだ言ってるのよ」
「だからジャンが言いたいのは、あっちの世界で我儘放題傍若無人な振る舞いは慎めってことよ」
ヴェリタスが言うと、
「私がいつそんなことしたっていうのよ?」
としれっとしている。
仕方なくジャンが月の雫ドロップを一つ渡すとコリーナは、
「確かに見たことのない飴だわねぇ」
と言ってさっさと包み紙を開けて口に放り込んだ。
もうちょっと有り難がって食べたっていいのになぁ・・・リーヴィアはそう思った。
「ね?美味しいでしょ?」
小首を傾げて同意を求めるジャンにコリーナは、
「まあまあだわね」
と言った。
今夜眠ったら夢の中までこの人と一緒なのかもしれない、と思うとジャンは気が重くなった。
自分一人が蚊帳の外だったことが面白くないコリーナは帰りの車の中でブツクサ文句を言った。
「気にしなくていいよ。ただのオタクの世迷言だからさ」
ヴェリタスが言うと、
「親のコネを使ってここまで連れてきてあげた私に対してその態度はないんじゃない?」
とご立腹だ。
まあ、確かにコリーナは〝良い奴〟
には程遠いが、かと言って色々利用価値のある人物である。
ご機嫌取りに少々の暴言を甘受しておけばなんやかんやとこっちに都合良く動かせるのだから、完全に関係を切るのは勿体なく思える。
「・・・まあ、どうせ言ったところで信じられる話じゃないだろうからさ」
リーヴィアが仕方なく言うと、
「信じるか信じないかは私が決めるから教えなさいよ」
としつこい。
地元に戻るまで長時間のドライブになるので、
「じゃあ言うけど、他言無用でお願いね。
その代わりダ・シルバさんがラルスと裸で抱き合っていた件についても一生他言しないから」
「アンタ!この私に交換条件を突きつけようなんて、つけあがるのもいい加減にしなさいよ!」
「あーハイハイ」
リーヴィアはちょっと反抗的な態度を取って軽くコリーナを怒らせ、圧倒的にコリーナが上だということを互いに再確認することでコリーナを満足させる、という手法で一通りのお約束のギャイギャイをやってから、トリニティ学園卒業後から現在までの経緯を説明し始めた。
ラルスとは形だけの結婚で初夜にゲロ合戦になった、という話でコリーナは
「きったないわねぇ」
と顔を顰めながらもゲラゲラ笑っていた。
そしてラルスの母親に監禁まがいのことをされた話をすると、嫌いなはずのリーヴィアの為に本気で怒っているようだった。
そして、いよいよ〝あっち〟の世界の話になると、
「アンタ達、全員一度診てもらった方がいいよ。
良い病院紹介しようか?」
と言った。
「ほらね、ヤッパリそうなるから言いたくなかったんだよね」
リーヴィアが不貞腐れると、
「信じられないかも知れないけど本当なんだ」
とジャンが言った。
「えっ?本当なの?」
「なんでジャンが言うと信じるのよ?」
「ジャンの言葉には他人を説得するような重みが感じられるもの」
そうして三人は〝あっち〟に行った経緯についてコリーナに語った。
「じゃあ、私も行くしかないわね」
「「「・・・・・・・・」」」
「なによ」
「「「・・・・・・・・」」」
「感じ悪いわね!」
「・・・飴のせいじゃないかって僕達が勝手に思ってるだけで絶対にそうなのかは分からないよ?」
「いいから」
コリーナは手のひらをグイとジャンの前に差し出した。
「早くよこしなさいよ」
「・・・確認しとくけど、もしダ・シルバさんが〝あっち〟に行けたとしても、〝あっち〟は〝こっち〟とは違う世界だから」
「分かってるわよ」
「〝こっち〟に似てるけど違う世界だから、〝あっち〟では〝こっち〟の身分とか権威とか通用しないから」
「何をうだうだ言ってるのよ」
「だからジャンが言いたいのは、あっちの世界で我儘放題傍若無人な振る舞いは慎めってことよ」
ヴェリタスが言うと、
「私がいつそんなことしたっていうのよ?」
としれっとしている。
仕方なくジャンが月の雫ドロップを一つ渡すとコリーナは、
「確かに見たことのない飴だわねぇ」
と言ってさっさと包み紙を開けて口に放り込んだ。
もうちょっと有り難がって食べたっていいのになぁ・・・リーヴィアはそう思った。
「ね?美味しいでしょ?」
小首を傾げて同意を求めるジャンにコリーナは、
「まあまあだわね」
と言った。
今夜眠ったら夢の中までこの人と一緒なのかもしれない、と思うとジャンは気が重くなった。
96
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く
ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。
逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。
「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」
誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。
「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」
だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。
妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。
ご都合主義満載です!

嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉
海林檎
恋愛
※1月4日12時完結
全てが嘘でした。
貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。
婚約破棄できるように。
人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。
貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。
貴方とあの子の仲を取り持ったり····
私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる