そして私は惰眠を貪る

猫枕

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「アンタ達一体何の話をしていたの?」

 自分一人が蚊帳の外だったことが面白くないコリーナは帰りの車の中でブツクサ文句を言った。

「気にしなくていいよ。ただのオタクの世迷言だからさ」

 ヴェリタスが言うと、

「親のコネを使ってここまで連れてきてあげた私に対してその態度はないんじゃない?」
 
 とご立腹だ。

 まあ、確かにコリーナは〝良い奴〟
には程遠いが、かと言って色々利用価値みどころのある人物である。

 ご機嫌取りに少々の暴言を甘受しておけばなんやかんやとこっちに都合良く動かせるのだから、完全に関係を切るのは勿体なく思える。


「・・・まあ、どうせ言ったところで信じられる話じゃないだろうからさ」

 リーヴィアが仕方なく言うと、

「信じるか信じないかは私が決めるから教えなさいよ」

 としつこい。

 地元に戻るまで長時間のドライブになるので、

「じゃあ言うけど、他言無用でお願いね。
 その代わりダ・シルバさんがラルスと裸で抱き合っていた件についても一生他言しないから」

「アンタ!この私に交換条件を突きつけようなんて、つけあがるのもいい加減にしなさいよ!」

「あーハイハイ」

 リーヴィアはちょっと反抗的な態度を取って軽くコリーナを怒らせ、圧倒的にコリーナが上だということを互いに再確認することでコリーナを満足させる、という手法で一通りのお約束のギャイギャイをやってから、トリニティ学園卒業後から現在までの経緯を説明し始めた。

 ラルスとは形だけの結婚で初夜にゲロ合戦になった、という話でコリーナは

「きったないわねぇ」

 と顔を顰めながらもゲラゲラ笑っていた。

 そしてラルスの母親に監禁まがいのことをされた話をすると、嫌いなはずのリーヴィアの為に本気で怒っているようだった。

 そして、いよいよ〝あっち〟の世界の話になると、

「アンタ達、全員一度診てもらった方がいいよ。
 良い病院紹介しようか?」

 と言った。

「ほらね、ヤッパリそうなるから言いたくなかったんだよね」

 リーヴィアが不貞腐れると、

「信じられないかも知れないけど本当なんだ」

 とジャンが言った。

「えっ?本当なの?」

「なんでジャンが言うと信じるのよ?」

「ジャンの言葉には他人を説得するような重みが感じられるもの」


 そうして三人は〝あっち〟に行った経緯についてコリーナに語った。


「じゃあ、私も行くしかないわね」

「「「・・・・・・・・」」」

「なによ」

「「「・・・・・・・・」」」

「感じ悪いわね!」

「・・・飴のせいじゃないかって僕達が勝手に思ってるだけで絶対にそうなのかは分からないよ?」
 
「いいから」

 コリーナは手のひらをグイとジャンの前に差し出した。

「早くよこしなさいよ」

「・・・確認しとくけど、もしダ・シルバさんが〝あっち〟に行けたとしても、〝あっち〟は〝こっち〟とは違う世界だから」

「分かってるわよ」

「〝こっち〟に似てるけど違う世界だから、〝あっち〟では〝こっち〟の身分とか権威とか通用しないから」

「何をうだうだ言ってるのよ」

「だからジャンが言いたいのは、あっちの世界で我儘放題傍若無人な振る舞いは慎めってことよ」

 ヴェリタスが言うと、

「私がいつそんなことしたっていうのよ?」

 としれっとしている。

 仕方なくジャンが月の雫ドロップを一つ渡すとコリーナは、

「確かに見たことのない飴だわねぇ」

 と言ってさっさと包み紙を開けて口に放り込んだ。

 もうちょっと有り難がって食べたっていいのになぁ・・・リーヴィアはそう思った。

「ね?美味しいでしょ?」

 小首を傾げて同意を求めるジャンにコリーナは、

「まあまあだわね」

 と言った。

 今夜眠ったら夢の中までこの人と一緒なのかもしれない、と思うとジャンは気が重くなった。

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