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腹痛で苦しむラルスを捨て置いて、リーヴィアはさっさとヴェリタスとジャンに会いに行った。
「出版社に問い合わせてみたんだけど、まったく相手にされなかったわ」
ヴェリタスはカップの中をシナモンスティックでかき回しながら口を尖らせた。
「まあ、そうでしょうね。メディアにも今まで一切露出してないしね」
「本名は何と言うのか、男性なのか女性なのか歳はいくつなのか、一切わからないんだって」
「〝月光騎士団について是非作者様にお知らせしたいことがある〟とか、〝20年前に消えた姫君のことで〟とか出版社の人に伝言して貰えばなんとか会えないかな?」
「また頭のオカシイのが来た、で終わりだよ」
「〝僕も騎士団の団員になりたい〟、とか、〝マルム・マールムのアジトを発見した〟とかって押しかけて来るヤツが後を絶たないんだって。
あんまりしつこい人は速やかに警察にお引き取りお願いしてるって言ってたよ」
3人はうーんと腕を組んで考え込んだ。
「なんかさ、どんなVIPでも簡単に会えるような圧倒的な権力を持った人とかいないかな~?」
「「「ん?」」」
3人は互いに顔を見合わせた。
「で?私に何の協力をしろっていうの?」
ソファにふんぞり返って脚を組むコリーナ・ダ・シルバは崩れた姿勢が尚一層退廃的な優美さを醸していて、最後に会った時より更に美しくなっていた。
入学するのに学力は必要無いが、強力な親の権力か財力を必要とする超お嬢様大学スカラ・デ・ロッサの校門前でコリーナを張った三人は危うく警備員によって警察に突き出されるところをコリーナに救い出された。
「アンタ達がブタ箱で一夜を明かそうと私には何の関係も無いんだけどさぁ」
悪ぶって言ったコリーナは高級ホテル、ザ・タワーの自分専用のスウィート・ルームでリーヴィア達三人にシャンパンを勧めた。
「でもま、知らない仲じゃないし、石の下のダンゴムシみたいに何ゴソゴソやってんのかな?って思ってさ」
「助けてくれてありがとう」
微笑むジャンに、
「アンタ達、まだ一緒につるんでんだ~。他に友達いないの?」
と言ったコリーナはどこか羨ましそうにリーヴィア達を見ていた。
「大学生活はどう?新しい友達はできた?」
リーヴィアが聞くと、
「あったりまえでしょ?あんなトリニティみたいな一般人の行く学校と違って、セレブリティの子女ばかりが集う学校なんだから。品格が違うのよ」
と艷やかな髪を美しい指でクルクルと巻きながら言った。
「で、一般人のアンタ達が身の程知らずにもこのコリーナ・ダ・シルバに何の頼み事があるっていうのよ?」
相変わらずの尊大な態度にうんざりしながらヴェリタスがお願いする。
「私達、〝月光騎士団〟の作者に会いたいのよ」
「え~。オタクもここに極まれりって感じね」
「出版社にも行ったんだけど門前払いで」
「ププッ・・・そりゃそうでしょ」
コリーナは馬鹿にしたように笑った。
「だけど、そんなくだらないお願いならお断りするわ」
「「「・・・・・・」」」
コリーナはがっかりする三人を満足そうに眺めてから、
「なんかもっと面白い話かと思ったのに、残念~」
と組んだ両手を上に上げてファ~っと伸びをした。
「・・・さすがにダ・シルバさんでも無理だよね?」
ジャンの言葉にコリーナがピクリと反応する。
「いくらダ・シルバさんが大企業のお嬢様だからって、ダ・シルバさん本人に権力があるわけじゃないもんね」
まあ、なんのかんの言ったって偉いのはコリーナの父親であって、別にコリーナが偉いわけでもなんでも無いもんね、とリーヴィアとヴェリタスがヒソヒソする。
「ちょっと!失礼じゃないの!」
「ゴメンゴメン、いくらダ・シルバさんだって、あの謎の作家に会えるコネクションなんかあるわけ無いのに。
僕達一般人は、つい大金持ちの人はどんなことでもできるって幻想を抱いちゃう。
ホント、待ち伏せなんかして迷惑までかけて申し訳なかったよ」
ジャンはリーヴィアとヴェリタスに席を立つように目配せする。
「シャンパンごちそうさま」
三人が席を立とうとするとコリーナが怒ったように言った。
「ちょっと待ちなさいよ!!
アンタ達、私を誰だと思ってるのよ!!
天下のコリーナ・ダ・シルバを舐めてもらっちゃ困るわ!」
ソファに座り直しながらジャンはコリーナに見えないように俯きながらニヤッとした。
「出版社に問い合わせてみたんだけど、まったく相手にされなかったわ」
ヴェリタスはカップの中をシナモンスティックでかき回しながら口を尖らせた。
「まあ、そうでしょうね。メディアにも今まで一切露出してないしね」
「本名は何と言うのか、男性なのか女性なのか歳はいくつなのか、一切わからないんだって」
「〝月光騎士団について是非作者様にお知らせしたいことがある〟とか、〝20年前に消えた姫君のことで〟とか出版社の人に伝言して貰えばなんとか会えないかな?」
「また頭のオカシイのが来た、で終わりだよ」
「〝僕も騎士団の団員になりたい〟、とか、〝マルム・マールムのアジトを発見した〟とかって押しかけて来るヤツが後を絶たないんだって。
あんまりしつこい人は速やかに警察にお引き取りお願いしてるって言ってたよ」
3人はうーんと腕を組んで考え込んだ。
「なんかさ、どんなVIPでも簡単に会えるような圧倒的な権力を持った人とかいないかな~?」
「「「ん?」」」
3人は互いに顔を見合わせた。
「で?私に何の協力をしろっていうの?」
ソファにふんぞり返って脚を組むコリーナ・ダ・シルバは崩れた姿勢が尚一層退廃的な優美さを醸していて、最後に会った時より更に美しくなっていた。
入学するのに学力は必要無いが、強力な親の権力か財力を必要とする超お嬢様大学スカラ・デ・ロッサの校門前でコリーナを張った三人は危うく警備員によって警察に突き出されるところをコリーナに救い出された。
「アンタ達がブタ箱で一夜を明かそうと私には何の関係も無いんだけどさぁ」
悪ぶって言ったコリーナは高級ホテル、ザ・タワーの自分専用のスウィート・ルームでリーヴィア達三人にシャンパンを勧めた。
「でもま、知らない仲じゃないし、石の下のダンゴムシみたいに何ゴソゴソやってんのかな?って思ってさ」
「助けてくれてありがとう」
微笑むジャンに、
「アンタ達、まだ一緒につるんでんだ~。他に友達いないの?」
と言ったコリーナはどこか羨ましそうにリーヴィア達を見ていた。
「大学生活はどう?新しい友達はできた?」
リーヴィアが聞くと、
「あったりまえでしょ?あんなトリニティみたいな一般人の行く学校と違って、セレブリティの子女ばかりが集う学校なんだから。品格が違うのよ」
と艷やかな髪を美しい指でクルクルと巻きながら言った。
「で、一般人のアンタ達が身の程知らずにもこのコリーナ・ダ・シルバに何の頼み事があるっていうのよ?」
相変わらずの尊大な態度にうんざりしながらヴェリタスがお願いする。
「私達、〝月光騎士団〟の作者に会いたいのよ」
「え~。オタクもここに極まれりって感じね」
「出版社にも行ったんだけど門前払いで」
「ププッ・・・そりゃそうでしょ」
コリーナは馬鹿にしたように笑った。
「だけど、そんなくだらないお願いならお断りするわ」
「「「・・・・・・」」」
コリーナはがっかりする三人を満足そうに眺めてから、
「なんかもっと面白い話かと思ったのに、残念~」
と組んだ両手を上に上げてファ~っと伸びをした。
「・・・さすがにダ・シルバさんでも無理だよね?」
ジャンの言葉にコリーナがピクリと反応する。
「いくらダ・シルバさんが大企業のお嬢様だからって、ダ・シルバさん本人に権力があるわけじゃないもんね」
まあ、なんのかんの言ったって偉いのはコリーナの父親であって、別にコリーナが偉いわけでもなんでも無いもんね、とリーヴィアとヴェリタスがヒソヒソする。
「ちょっと!失礼じゃないの!」
「ゴメンゴメン、いくらダ・シルバさんだって、あの謎の作家に会えるコネクションなんかあるわけ無いのに。
僕達一般人は、つい大金持ちの人はどんなことでもできるって幻想を抱いちゃう。
ホント、待ち伏せなんかして迷惑までかけて申し訳なかったよ」
ジャンはリーヴィアとヴェリタスに席を立つように目配せする。
「シャンパンごちそうさま」
三人が席を立とうとするとコリーナが怒ったように言った。
「ちょっと待ちなさいよ!!
アンタ達、私を誰だと思ってるのよ!!
天下のコリーナ・ダ・シルバを舐めてもらっちゃ困るわ!」
ソファに座り直しながらジャンはコリーナに見えないように俯きながらニヤッとした。
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