41 / 62
41
しおりを挟む「・・・それってリーヴィアが出てくる夢を見た、とか、そんなこと?」
ラルスは動揺を隠せない。
「違うんだ。僕達二人共あっちの世界に行ったんだよ」
ジャンとヴェリタスは互いに、ね?っと顔を見合わせて頷き合っている。
「リーヴィアは?」
「今朝はまだ眠ってた」
「じゃあ、まだあっちに居るんだ」
二人はあーだこーだと二人だけで話し始める。
「あ、あのさ。もうちょっと俺にも分かるように話してくれる?」
「あーゴメンゴメン。
私達も最初はリーヴィアの話が印象深すぎて影響されて夢に見たんだと思ったの」
「だけど夢にしちゃ明瞭すぎるし、リーヴィアは僕達が来たって喜んでるし、それで試しに何か持って帰ろうって話になって」
「で、朝会って答え合わせしたら、全部ピッタリ合ってて。やっぱり私達が向こうに行ったのは間違いないだろうってことになって」
「・・・どうしてそんなことになったんだ?」
未だ二人の言うことがイマイチ理解できないラルスが疑問を投げかける。
「そこなんだけどさ。
実は昨日、私達リーヴィアに貰った向こうの飴を食べちゃったんだよね」
『知ってるけど。羨ましかったけど。俺だって食べたかったけど』
「それが原因としか考えられないんだ」
「どういうこと?」
「いろんな神話とか言伝えとかで、異界に行った時にそこのものを食べると帰れなくなっちゃう系の話って割とあるあるなのよ」
「ちょちょちょちょちょちょ・・もうちょっと分かるように説明して」
「え?だから、リーヴィアが持ってきた飴食べたから向こうに行ったのかな?って。メカニズムは私達にもわかんないよ」
「・・・向こうの物を食べたからか・・・なるほど・・・・ってちっともわかんないけどさ、さっき君達何か持って来たって言ってなかった?」
「そうそうそうだった」
「ラルス君にお土産持ってきたんだよ」
『待ってました~!』
「ハイ」
ヴェリタスがくれたのは小さな人形だった。
紐が付いていて鞄か何かにぶら下げるようになっている。
「・・・えっと、これは?」
戸惑うラルスにヴェリタスは得意気に言った。
「〝月の女神本舗〟って人気のお菓子屋さんがあってね、〝月の雫ドロップ〟とか有名なんだけど。そこの会社のマスコットキャラクターの〝パコちゃん〟人気なの」
「・・・へ、・・・へぇ。そうなんだ。ありがとう」
次はジャン。
「僕も同じく〝パコちゃん〟のキーホルダーで~す!」
ニコニコしている。
「なんてったって限定グッズだからね。
もうね、それ付けてたら女のコ達に大人気でモテモテなんだよォ~。
ま、向こうの世界の話だけど」
ねっ、とか言いながらヴェリタスとジャンが相槌を打っている。
若干イラッとくる。
「そ、それは珍しい物をありがとう」
『そこは普通に〝月の雫ドロップ〟でいいだろう?
パコちゃん要らん!
オパール色に輝く女神のドロップを食べてみたかったのにぃ。
俺だって、あっちの世界に行ってみたい!』
「し、しかし君達は問題なく目覚めたんだよね?」
「うん。ちゃんといつもの時間に起きたよ」
「あっちでもこっちでも動き回って、いわば眠ってない状態だと思うんだけど、体の方は大丈夫なの?」
「それが不思議なんだよな。ちっとも疲れて無いんだ」
「そうなのよ」
「・・・君たちは目覚めるのにリーヴィアは何日も眠り続ける。・・・この違いは何なんだろう?」
「・・・そこね。私達も考えたんだけど、一つにはリーヴィアがあっちで何やかんや食べまくってるから、かな?とも思うし、」
「向こうには美味しい物が色々あるもんね」
「牛丼とかね」
ジャンがニコニコしている。
「もう一つは、リーヴィアがよっぽど現実世界に帰りたくないのか」
「・・・・・・・・」
「今のところ考えられるのはそのくらいかな?本人にもわからないって言ってたし」
「・・・・・・・・」
よっぽど帰りたくない。
よっぽど帰りたくないのか・・・だろうな・・・。
ラルスはそこはかとなく傷ついた。
116
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く
ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。
逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。
「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」
誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。
「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」
だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。
妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。
ご都合主義満載です!

嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉
海林檎
恋愛
※1月4日12時完結
全てが嘘でした。
貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。
婚約破棄できるように。
人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。
貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。
貴方とあの子の仲を取り持ったり····
私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる