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「またいつ眠っちゃうか分からないから急いで連れて来たんだ」
ヴェリタスとジャンの前にリーヴィアを連れてきたラルスはなぜだかちょっと得意気だった。
「ありがとう。じゃ、またあとで」
「え?」
リーヴィアはさっさとヴェリタスとジャンと三人でテーブルについて、大丈夫だった?心配してたんだよ?と盛り上がり始めた。
ラルスもエイっ!と無理矢理仲間に入ってしまえば拒絶されることもないのだろうが、漂うアウェイ感にそこまで強引な態度に出る勇気は無かった。
三人にしてみればリーヴィアをこんな状況に陥らせたのはヴァルノー。
ラルスも間違いなく敵側の人間なのだから。
かといいラルスも帰る気にはなれなかった。
リーヴィアがヴェリタスとジャンとどんな話をするのか気になって仕方がなかったのだ。
ラルスは話に夢中になっている三人に気づかれないように柱の陰になる席に陣取った。
「それがさあ、不思議なことに眠ると必ず同じ場所に行くのよ」
ラルスから話を聞いていたヴェリタスとジャンはさほど驚く様子も無くウンウンそれで?と相槌を打っている。
「月光騎士団の団長とゾーイと友達になっちゃって!」
へ~、いいな~、と盛り上がる三人。
「団長とゾーイだけ?他のメンバーは?」
「あ、・・・そういえばいつも出てくるのは団長とゾーイだけだな。・・・あと裏切り者ヴィリー」
「ヴィリーって死んじゃったじゃない?」
「マンホールに落ちてね」
「ヴィリーの奴、出世してるみたいだよ。
まあ、本人がそう言ってるだけで私はいいとこ小役人だと思ってるんだけどね」
「ヴィリーが役人?」
「うん。色んなことが原作とは違うみたいでね、クーデターで王家は倒されちゃったみたい」
「「・・・クーデター」」
「あ、あとヤーノシュを知ってるのか?って聞かれたからヤーノシュは何処かにいるんじゃないかな?私は会ったことないけど」
三人はあっちの世界のあれこれについて楽しそうに話している。
『こんなことなら自分も月光騎士団のファンを公言しておけば良かった』
ラルスは今更ながら後悔した。
「牛丼ってのがあってね、もんのすごい美味しいの。
二人にも食べさせたいわ~。私、そのうち作り方覚えて作ってあげるからね」
「それは楽しみだわ~」
「楽しみだね」
あ、そうそう。そう言ってショルダーバッグをゴソゴソしたリーヴィアが、
「さっきバッグの中見たらこれが入ってたの」
とキャンディを二つテーブルに置く。
「こっちじゃ食べたこと無い味なんだ。
ちょっと食べてみて?」
「え~。別の世界の食べ物たべるなんて初めての体験~」
「ワクワクする~」
ヴェリタスとジャンはあり得ない話をすんなりと受け入れて包み紙を開いている。
「月の雫ドロップって書いてる」
「ロマンチックね」
「え~。なんかオパールみたいに虹色に光ってるよ」
俺も見たい!見せてくれ!ラルスは柱の陰でジリジリした。
「じゃ、もったいないけど食べるよ?」
二人がせーの、で同時に口に入れた。
「うーん。甘酸っぱいけど、それでいてどこかクリーミー」
「うーん、今までに食べたこと無い味だよね?」
美味しい、美味しい、と二人は喜んでいる。
「夢の世界のだと思うと美味しさも格別だよね?」
ヴァルノー家に帰るとラルスと一緒に帰ってきたリーヴィアを見てヨハンナは一瞬イヤな顔をしたが、すぐに猫なで声で、
「仲良くなるのは良いことだわ~。二人でデートでもして来たのかしらねぇ~」
とペチャペチャ喋った。
鬱陶しい母親からリーヴィアを護るように腕でガードしながら、ラルスはリーヴィアを部屋に送った。
「久しぶりにヴェリタスとジャンに会えて嬉しかったわ。今日はありがとう」
リーヴィアから笑顔を向けられてラルスは嬉しくなった。
「あ、あのさ、なにか向こうから持ってきたものとか無いの?」
「?」
「・・・なんていうか・・・お土産的な・・・」
「あ、ああ!・・・ゴメンネ。ラルスが心配してくれてるの知らなかったから・・・」
「あ、・・・うん。・・・そうだよね」
「それに、月光騎士団の世界なんてラルスには興味無いだろうし」
『ある!あるよ!もの凄くある!』
「あ、いや・・・別に気にしないで。
ただ、なんとなく夢の世界から持ってきた物があったら見てみたいな~なんて。珍しいし」
「そうだよね~」
それっきりリーヴィアはラルスに今度何かお土産を持ってくるとも何とも言わなかった。
「じゃ、私そろそろ寝るね。久しぶり歩き回って疲れちゃった」
ラルスはもう少しリーヴィアと話をしていたかったが、ゆっくり休んでね、と言い残して部屋を出た。
明日の朝、リーヴィアは目覚めるのか、それともまた何日も眠り続けるのか・・・・。
翌日の大学でラルスが友達とカフェにいるところへヴェリタスとジャンがやって来た。
「ちょっと話せる?」
二人が神妙な顔をしているのでラルスは友達に断って席を立った。
木立の中の人気の無いウッドデッキまで来た時ヴェリタスが言った。
「私達、リーヴィアに会ったのよ」
「?そりゃ昨日会ったよね?」
「・・・・違うんだ。僕達も夢の世界に行ったんだ」
ヴェリタスとジャンの前にリーヴィアを連れてきたラルスはなぜだかちょっと得意気だった。
「ありがとう。じゃ、またあとで」
「え?」
リーヴィアはさっさとヴェリタスとジャンと三人でテーブルについて、大丈夫だった?心配してたんだよ?と盛り上がり始めた。
ラルスもエイっ!と無理矢理仲間に入ってしまえば拒絶されることもないのだろうが、漂うアウェイ感にそこまで強引な態度に出る勇気は無かった。
三人にしてみればリーヴィアをこんな状況に陥らせたのはヴァルノー。
ラルスも間違いなく敵側の人間なのだから。
かといいラルスも帰る気にはなれなかった。
リーヴィアがヴェリタスとジャンとどんな話をするのか気になって仕方がなかったのだ。
ラルスは話に夢中になっている三人に気づかれないように柱の陰になる席に陣取った。
「それがさあ、不思議なことに眠ると必ず同じ場所に行くのよ」
ラルスから話を聞いていたヴェリタスとジャンはさほど驚く様子も無くウンウンそれで?と相槌を打っている。
「月光騎士団の団長とゾーイと友達になっちゃって!」
へ~、いいな~、と盛り上がる三人。
「団長とゾーイだけ?他のメンバーは?」
「あ、・・・そういえばいつも出てくるのは団長とゾーイだけだな。・・・あと裏切り者ヴィリー」
「ヴィリーって死んじゃったじゃない?」
「マンホールに落ちてね」
「ヴィリーの奴、出世してるみたいだよ。
まあ、本人がそう言ってるだけで私はいいとこ小役人だと思ってるんだけどね」
「ヴィリーが役人?」
「うん。色んなことが原作とは違うみたいでね、クーデターで王家は倒されちゃったみたい」
「「・・・クーデター」」
「あ、あとヤーノシュを知ってるのか?って聞かれたからヤーノシュは何処かにいるんじゃないかな?私は会ったことないけど」
三人はあっちの世界のあれこれについて楽しそうに話している。
『こんなことなら自分も月光騎士団のファンを公言しておけば良かった』
ラルスは今更ながら後悔した。
「牛丼ってのがあってね、もんのすごい美味しいの。
二人にも食べさせたいわ~。私、そのうち作り方覚えて作ってあげるからね」
「それは楽しみだわ~」
「楽しみだね」
あ、そうそう。そう言ってショルダーバッグをゴソゴソしたリーヴィアが、
「さっきバッグの中見たらこれが入ってたの」
とキャンディを二つテーブルに置く。
「こっちじゃ食べたこと無い味なんだ。
ちょっと食べてみて?」
「え~。別の世界の食べ物たべるなんて初めての体験~」
「ワクワクする~」
ヴェリタスとジャンはあり得ない話をすんなりと受け入れて包み紙を開いている。
「月の雫ドロップって書いてる」
「ロマンチックね」
「え~。なんかオパールみたいに虹色に光ってるよ」
俺も見たい!見せてくれ!ラルスは柱の陰でジリジリした。
「じゃ、もったいないけど食べるよ?」
二人がせーの、で同時に口に入れた。
「うーん。甘酸っぱいけど、それでいてどこかクリーミー」
「うーん、今までに食べたこと無い味だよね?」
美味しい、美味しい、と二人は喜んでいる。
「夢の世界のだと思うと美味しさも格別だよね?」
ヴァルノー家に帰るとラルスと一緒に帰ってきたリーヴィアを見てヨハンナは一瞬イヤな顔をしたが、すぐに猫なで声で、
「仲良くなるのは良いことだわ~。二人でデートでもして来たのかしらねぇ~」
とペチャペチャ喋った。
鬱陶しい母親からリーヴィアを護るように腕でガードしながら、ラルスはリーヴィアを部屋に送った。
「久しぶりにヴェリタスとジャンに会えて嬉しかったわ。今日はありがとう」
リーヴィアから笑顔を向けられてラルスは嬉しくなった。
「あ、あのさ、なにか向こうから持ってきたものとか無いの?」
「?」
「・・・なんていうか・・・お土産的な・・・」
「あ、ああ!・・・ゴメンネ。ラルスが心配してくれてるの知らなかったから・・・」
「あ、・・・うん。・・・そうだよね」
「それに、月光騎士団の世界なんてラルスには興味無いだろうし」
『ある!あるよ!もの凄くある!』
「あ、いや・・・別に気にしないで。
ただ、なんとなく夢の世界から持ってきた物があったら見てみたいな~なんて。珍しいし」
「そうだよね~」
それっきりリーヴィアはラルスに今度何かお土産を持ってくるとも何とも言わなかった。
「じゃ、私そろそろ寝るね。久しぶり歩き回って疲れちゃった」
ラルスはもう少しリーヴィアと話をしていたかったが、ゆっくり休んでね、と言い残して部屋を出た。
明日の朝、リーヴィアは目覚めるのか、それともまた何日も眠り続けるのか・・・・。
翌日の大学でラルスが友達とカフェにいるところへヴェリタスとジャンがやって来た。
「ちょっと話せる?」
二人が神妙な顔をしているのでラルスは友達に断って席を立った。
木立の中の人気の無いウッドデッキまで来た時ヴェリタスが言った。
「私達、リーヴィアに会ったのよ」
「?そりゃ昨日会ったよね?」
「・・・・違うんだ。僕達も夢の世界に行ったんだ」
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