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しおりを挟む「それでリーヴィアは外出を禁止された上に部屋に軟禁されてるってわけ?
ってか、部屋から出してもらえないんなら監禁じゃない。監禁!」
大学のカフェテリアの隅っこの席に陣取ったヴェリタスはジャンと並んで向かいの席のラルスを睨みつけた。
バツが悪そうに俯くラルスにヴェリタスは容赦なく非難の声を浴びせた。
「アンタの親がやってることは契約違反だし、そもそも犯罪だからね?」
「・・・それはもう、その通りだ。
・・・・申し訳ない」
「私に謝ってどうすんのよ」
ジャンが、
「ラルスは知らなかったんだからさ、そんなに責めないであげてよ」
と執り成そうとするが、
「はあ?知らなかった?ラルスが面倒事から逃げてるからリーヴィアは酷い目あったんでしょう?」
と余計に火に油を注ぐ結果になった。
「で?こうなっても尚お母様の言いなりの坊っちゃんはリーヴィアをここに連れてくることもできなかったってわけ?
外出着や靴を返してあげるのもお母様の許可が無いとできないってわけ?」
「・・・違うんだ。・・・リーヴィアは目覚めないんだ」
「「は?」」
ラルスはリーヴィアが昏々と何日も眠り続ける事、そして眠ってる間は毎回同じ夢の世界にいて、まるでそこで暮らしているかのようにそこの住人達とコミュニケーションを取り、飲み食いしているらしいことを説明した。
「しかもな、リーヴィアは夢の中で〝月光騎士団〟の団長やゾーイと一緒に居酒屋に行ったりしてるみたいなんだ」
ヴェリタスとジャンはにわかには信じられない話にあんぐりしていたが、ラルスの話しぶりや疲れた表情から彼が嘘をついているようにも思えなかった。
「・・・それでさ、・・・ちょっと二人にこれを見て欲しいんだ」
ラルスがポケットから出したハンカチを開いて見せると、其処には例の王冠とコインがあった。
「「これは?」」
「リーヴィアが、眠ったままのリーヴィアがいつの間にか手に握っていたんだ」
「「コイン?」」
「ちょっと見てほしいんだけどさ、君達なら詳しいと思って。
月の女神エストを記念したコインみたいなんだ。
このコインは〝月光騎士団〟のファンの為に作ったコレクションアイテムかなんかなのだろうか?」
どれどれ、と二人はコインと王冠を交換しながら表も裏も舐め回すように吟味したが、
「公式グッズとしてコインが売り出されたとかノベリティとして配られた、という話は少なくとも自分達の知る限り無いわ」
「うん。僕も関連グッズは全て把握してるから無いと思う」
「もしアイテムとして作るんなら銅貨じゃなくて金メッキくらいにはしそうじゃない?」
二人共コインがファンに向けて作られたグッズだという線については否定的だった。
「・・・まあ、物凄くマニアックなファンが個人的に造ったって線もゼロじゃないだろうけど」
「でもコインを鋳造するって大変だから個人的にやるのは現実的ではないと思うよね」
三人は結論の出ないままテーブルの真ん中に置かれた銅貨をじっと見た。
「えっと、じゃあこっちの王冠に心当たりは無い?」
ラルスが今度は栓抜きの跡のある少し曲った王冠を差し出した。
「俺が一応調べた限り、そこに書かれている酒造メーカーは少なくとも国内に存在しないんだ」
ヴェリタスとジャンは二人で代わり番こに王冠をこねくり回して吟味した。
「確かに甘いような酸っぱいような匂いが微かにするから、本物のシードルの王冠みたいよね」
ヴェリタスが王冠に鼻を近づけてスーハーした。
「じゃあさ、リーヴィアがコレを夢の中から持ってきたって言うの?」
ヴェリタスが半笑いで聞くと、
「・・・でも、そうとしか説明がつかない状況なんだよ」
とラルスが情けない声を出した。
「ありえない話だとは思うよ。
だけどさ、何日も何も飲み食いしなくても脱水も衰弱もしないんだ。
ただ幸せそうな顔で眠り続けるだけなんだ」
「・・・まあ、リーヴィアだからね。
他の人ではあり得ないけど、リーヴィアは伝説のリュネール家の血を継いでるからね。
そんなこともあるかも知れないって思ってしまうわよね」
三人は沈黙した。どうすればいいのかサッパリわからなかった。
すると気詰まりな雰囲気をどうにかしようとジャンが口を開く。
「・・・でも、なんで王冠?もうちょっと良い物持ってくればいいのにね」
ジャンのしみじみとした口調が可笑しくてつい三人で笑ってしまった。
「とにかく、次にリーヴィアが目覚めたら私達の所に連れて来てよね」
笑い事じゃないんだよ、と神妙な顔をしたヴェリタスだったが、それでも現状できることは何一つ無いので、そんな言葉を挨拶にして三人は解散した。
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