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しおりを挟む「んじゃ、何?月光騎士団ってのは今現在は存在してないの?」
リーヴィアは居酒屋どん底で奈良漬をポリポリしながら団長に聞いた。
「存在してるさ。俺たちがそうだ」
「でもさ、王家に雇われてるわけでも無いんでしょ?そういうのマスターレスの浪人ってんじゃないの?」
「・・・オマエはズケズケと言いにくいことを平気で聞くヤツだなぁ」
リーヴィアはポリポリしながら、
「しかしこれ旨いな。なんか酔っ払うけど」
とヘラヘラしている。
「クリームチーズと合わせるともっと旨いぞ」
「団長ってなんにでもかんにでもチーズ乗っける派?」
「ヤメロよ。ヴィリーのヤツも俺のことチー牛とか馬鹿にしてくるんだよ」
「・・・奢ってもらっといてなんだけどさぁ、収入源はどうしてんの?騎士団ったって学校のクラブ活動みたいなもんでしょう?」
「殴るぞオイ」
団長は拳を振り上げるマネをしてから小声になった。
「まあ、普段は道路工事とか建設現場で肉体労働したり遊園地で着ぐるみ着てたりもするけどさ」
更に声を潜めて、
「支援してくれる人もいるんだよ」
と言った。
「月光騎士団のファン?」
「・・・ファン・・・まあ、それに近いかも知れんが、・・・この体制に反対する人達も一定数いるってことさ」
「ふぅん。・・・じゃ、お姫様を見つけて今の政府を倒して王政復古するってわけ?」
「しっ、・・・誰が聞いてるか分からないから」
「ふ~ん。じゃ、私今度あっちで目覚めたら何か役に立つことできないか探してみる。
まっ、期待はしないで欲しんだけどさ、牛丼代くらいは稼がないとね。
ポケットにあっちのお金いっぱい詰め込んで来たらこっちで大富豪になるとかならないかな?」
「・・・オマエの言う事はちっとも分からない」
その頃ラルスはリーヴィアの夢日記を繰り返し読んでいた。
ラルスが気付かない内に目覚めることがあるらしく、前に読んだ時よりも記述が増えている。
元々『月光騎士団(小説)』の隠れファンであるラルスにとって、団長やゾーイ、裏切り者ヴィリーの出てくる話はそれだけで興味がそそられた。
しかも、リーヴィアの創作にしては随分内容が具体的で生き生きしている。
それに随所でリーヴィア自身が「原作とこっちの世界では事情が大きく違う」と驚いていることが不思議でもある。
何日も飲まず食わずで眠ったままなのに衰弱する様子も見えないのはどういうことなんだろう?
まさかそんなことがある筈はないのだが、リーヴィアは眠ってる間に別の世界に行っているのではないか?
ついついそんな非現実的なことを考えてしまうラルスだった。
そんなある日、眠るリーヴィアが拳を固くして何か握りしめていることにラルスは気付いた。
なんだろう?とラルスが指を一本一本慎重に開かせてみると飲み物の王冠とコインが出てきた。
王冠にはシードルと書いてあるが見たことの無い会社名と商品名のロゴが印刷してあり、もう一個の銅貨もこの国の物では無かった。
〝10z〟と書かれた銅貨はこの国の通貨単位では無いし、ラルスが知る限りの近隣諸国のものでも無い。かといい子供の玩具にしては作りが精巧で、どっからどうみても本物のコインにしか見えないのだ。
コインを裏返してみたラルスは息を呑んだ。
そこには美しい女性の横顔が彫られていて、〝月の女神エスト〟と刻印されていたからだ。
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