そして私は惰眠を貪る

猫枕

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 翌日の放課後リーヴィアとジャンとヴェリタスが一緒にいるとアガタがやって来た。
 彼女は昨日のことは夢か何かであったかのように一日素っ気ない態度だったのでリーヴィアが意外そうな顔をすると、

「・・・一応一緒の班だし、何かするんなら私も手伝わなきゃ、と思って・・・」

 と周りを気にしながらゴニョゴニョ言った。

 コリーナとその一味の目が気になるのだろう。

「・・・私達、別に好きでやってるんだしアガタさんの立場が悪くなるんなら無理に参加しなくていいよ。
 こっちのことは気にしないで」

 リーヴィアがそう言った時ラルスがやって来た。

「模型作るのか?」

 と何の悪びれる様子もなく、当然のように言ってきた。

「・・・いや、別に決まってないけど」

 なんで急に接触してくんだよ、と口角だだ下がりのリーヴィア。

 するとコリーナが、

「なんでこんな所にいるのよ~。探したのよ~」

 と言いながら入って来た。

「なんかここ、ジメジメする~」

 馬鹿にしたように笑っている。

「なんかココだけ暗くな~い?
 ね、ラルス、ボーリング行かない?」

 捻挫はどうした?

 そうツッコミを入れたいリーヴィアであったが、コリーナの登場はこの気詰まりな雰囲気から解放してくれる天使の降臨だった。

 ハイハイ、どこでもいいから行った行った!


「研究発表は必修だから俺たちもちゃんと参加しないと」

 間髪入れずラルスが余計なことを言う。

「えーっ!そんな面倒なことしなくたって卒業くらいできるのにぃ~」

「一緒に協力して何かを作ったってことが後々の俺たちのかけがえのない思い出になるじゃないか」

 ラルスがコリーナを見つめる。

「もうっ。仕方ないなぁ」

 コリーナがラルスを見つめる。

 2人が見つめ合う。


「やっぱ、モテる人って凄いね。
 僕じゃあんなセリフとてもとても」

 とジャンがヴェリタスにヒソヒソする。

 ヴェリタスが声を出さずにゲーっとジャンに言ってみせる。

 アガタは空気。

 結果、元々5人のグループなのだから、これが本来のあるべき姿ではあるのだが、一緒に作業をすることになってしまった。
 まあ、別のグループのヴェリタスも参加していたのだけど。

「何?アンタ達が作った模型じゃ役に立たなかったってワケ?」

 コリーナはケラケラ笑って、

「そんなの川くらい作っちゃえばいいじゃない」

 と言った。

 皆が無言で、コイツ何言ってんの感を出していると、

「校庭に重機入れてチャチャとやっちゃえばいいじゃない」

 と事も無げ。

「いや、流石に学校の許可が出な・・」

 出るんだろうな。この人なら。


 というわけで、出来ましたとも。

 氾濫を再現する為の旧ウエストリバーと改修工事後の、全長100メートルの川が2本校庭に出現しましたとも。


 発表会当日。

 実験は全校生徒のみならず、地方行政区の土木事務所の職員までが見守る中、学校裏に広がる湖沼からポンプで汲み上げた大量の水を一気に放水し、歓声の上がる中、見事に実験は成功しましたとも。

 で?どうなったかって?

 学長賞のみならず市の教育長から特別な賞までいただきましたとも。

 表彰式では代表者のコリーナが誇らしげに授与されたメダルを首から掛け、堂々とスピーチなさってましたねぇ。

 慶ばしいことではありませんか。


「・・・なんだかねぇ」

 リーヴィアが愚痴る。

「・・・でもさ、あれだけの実験させてもらえただけでも良かったじゃない?」

 ジャンが慰める。徹夜で川の設計図を引いたのは彼だ。

「・・・そうだよね。・・・でもさ、人生の縮図を見た気がするよね。
 圧倒的な財力を前にすると人は沈黙するしかないのかなって・・・」

「まあ、・・・腐るなよ」

 するとヴェリタスがやって来て、

「私達の班なんかアンタ達の後だったから霞む霞む」

 と不満そうに言った。

「いや、あのアルキメデスポンプの再現は大したもんだったよ」

「優秀賞貰えたじゃない」

「古代の技術、ブルドーザーの前にて敗れ去りぬ!!」

 3人は一様に肩を落としてハァ~とため息をついた。






 

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