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しおりを挟む奇妙な一行が中央駅に集まった。
リーヴィア、ジャン、ヴェリタスの3人とラルス、コリーナ、そしてもう一人のメンバーのアガタ・コッタの3人の計6人。
アガタに至ってはリーヴィアは入学以来一度も口を利いたことがない。
いつもコリーナにくっついてリーヴィアに嫌な視線を送ってくるが、これといって具体的に何か言われたことはない。
まあ、生粋の金フンなんだろう。
列車は全席自由席のローカル線で2席ずつが向かいあって1ボックス4人乗りになっている。
リーヴィア達は何か言われる前にさっさと乗り込んで3人でボックス席に座った。
遅れて乗ってきた3人は席が見つからず隣の車両に行ったのでリーヴィア達はひとまずホッとした。
「なんか、僕が余計なこと言っちゃったから。ゴメンね」
ジャンがしょんぼりする。
「気にしないで。ああいう時緊張しちゃう気持ち、私もよくわかるから」
リーヴィアが笑うとジャンも安心したように微笑んだ。
「それよりさぁ、コリーナの格好見た?」
ヴェリタスが馬鹿にしたように笑う。
「岩場とか歩くのにヒラヒラしたワンピース着てさ、踵の高いサンダルだよ?」
どうせつまんないだの疲れただの文句垂れるに決まってんだから、現地で巻いてやろうゼ、などと悪い相談をしている2人を苦笑いで見つめるジャン。
「大体さあ、今まで無関係を貫いてきていたのに、なんで急に一緒に出掛けようなんて言い出したのかしらね?あのクズ」
「さあ?コリーナとイチャついてるとこでも見せつけたいんじゃない?あのクズ」
ラルスの悪口を言う二人の前でジャンが困ったような顔をしていた。
そうこうしているうちに列車は目的地の駅に着いた。
貸自転車を借りる段になって、アガタが「自転車なんか乗れない」と騒ぎだした。
「なんだ、女の子で乗れるのはヴェリタスだけか」
ラルスが言うと、
「私はラルスの後ろでしょ?そしてリーヴィアがジャン・ディドロと乗るのよね?じゃ、アガタ、あんたはヴェリタスの後ろ」
とさっさとコリーナが決めてしまった。
ヴェリタスもアガタも互いに嫌そうな顔をしたが、ヴェリタスもここまで来ておいてアガタに帰れと言うわけにもいかないので渋々コリーナに従うことにした。
かくして3組の2人乗り自転車が田舎道を進んでいった。
ラルスはコリーナの自分を取り繕って良い人に見せようという気が一切無いところをむしろ気に入っていたし、他人に対して高飛車で少々意地悪が過ぎるところがあるとは思っていたがそれも含めて魅力的に感じていた。
甘ったるい口調でいかにも優しそうな事を言うくせに、その実自分の欲望の為なら平気で他人を陥れる母のような人間よりずっと裏が無くて良いと思っていた。
だけど自転車が走り出すとすぐに、
「道がガタガタで振動がキツイ」
「日射しが強くて肌が焼ける」
「こんなクソ田舎の何が面白いんだ」
「カエルがうるさい」
「セミがやかましい」
「映画見に行ったほうが良かった」
と文句が止まらないのでいい加減イライラした。
一方のリーヴィアは風に髪を靡かせながら終始笑顔でジャンに言葉をかけている。
「重くない?」
「大丈夫だよ」
「あの凄く高い所を飛んでるのは何?」
「ヒバリだよ」
「キレイな声で鳴くのね。初めて見た」
教室では身を潜めるように萎縮しているリーヴィアがジャンと一緒だと晴れやかに笑っているのがラルスの気分を下げた。
あんな風に笑うリーヴィアを久しく見たことがなかった。
それが何故だかラルスにはショックだった。
それは紛れもなく自分のせいで、自分がリーヴィアに冷たくしたから周りも迎合してリーヴィアを悪く言い始めたわけで、でもそれはあの両親の悪巧みからリーヴィアを守りたいって気持ちもあったわけで。
せっかくのリーヴィア達の楽しみに割り込むような真似までして自分は何がしたいんだろう?
それでもラルスはなんとなくリーヴィアがラルスの知らないところでジャンと仲良くしているのが気に食わなかった。
自分はさんざんコリーナと見せつけるようにベタベタとしているというのに。
ラルスは自分の気持ちがよく分からなかった。
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