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しおりを挟むリーヴィアは一人っ子だ。当然リーヴィアの実家の財産は将来リーヴィアが受け継ぐことになる。
リュネール家を丸ごとヴァルノーに吸収することが両親の目的なのだろうか。
ラルスは首を捻った。
確かにリュネールも旧貴族で由緒正しい家柄ではあるが、現在のリュネール家は、あの凡庸なリーヴィアの父ダヴィッドがそう大きくもない繊維関係の会社を経営しているのみであり、比較的裕福ではあるものの、特筆するほどの資産も権力も無い。
要はただの小金持ち。
それに、いくらリーヴィアが一人娘だからといってリュネール家の財産を受け継ぐのはダヴィッドが亡くなった後のことだ。
ましてや孫の代で思惑通りリュネールの財産をヴァルノーに移し替えることができたとしても、その頃には既に当のラルスの親が亡くなっている可能性が高い。
一体両親は何をしたいんだろう?
たどり着いた答えは、ただただ両親はリーヴィアという人質を楯にして学生時代と同じようにイジメまがいの憂さ晴らしをしたいのではないか、という説得力に欠けるものだった。
そんなことの為にわざわざ息子まで巻き込むのか?と言われれば相手を納得させられるどころか自分を納得させられる回答も出せないのだが、ラルスに考えつくのは精々それくらいだった。
ラルスは中等部に上がったくらいから急激に女子にモテるようになった。
その中でも積極的にアピールしてくるのがコリーナだった。
コリーナは新興財閥ダ・シルバ家の娘で女子の中心的な存在だった。
自信に満ち溢れたコリーナは、どこかオドオドして他人の顔色を伺うようなリーヴィアとは違って魅力的に見えた。
コリーナには少し意地悪な面が垣間見えたが、彼女の置かれた状況を考えるに、そうなってしまうのも仕方が無いとも思えた。
むしろコリーナなら黙ってあの母親の言いなりになってメソメソするような性格ではない。
押しの強さでは互いに引けを取らないだろう。
むしろヴァルノー家の嫁になるには相応しいかも知れないとさえ思った。
まあ、嫁と姑が張り合う家に自分が帰りたいかと問われれば苦笑いするしかないのだが。
そんなわけでラルスは、『あのダ・シルバ家の娘をものにした』、とあれば強欲な母親は喜んでリーヴィアなんか手放すと思っていた。
ダ・シルバの資産はリーヴィアのリュネール家など足元にも及ばないまさに富豪であるだけでなく、政界も動かせる権力を有しているからだ。
しかし、母の答えは違っていた。
「遊ぶのはいくら遊んでも構わないけど、結婚はリーヴィアじゃなきゃダメ」
ラルスは試しに言ってみた。
「あの子のことは好きになれないよ」
すると母親はニヤリと笑ったのだ。
「そうよね。ラルスみたいな素敵な子がリーヴィアなんか相手にしたくないわよね。
でもダメ。
好きになんかならなくていいの。
大事になんかしなくていいの。
ただ結婚して子どもを作ればいいのよ」
ラルスはゾッとした。
正直に言ってリーヴィアの事は特に好きでも嫌いでもない。
だけど幼少期に仲良く遊んだ情はある。
ある時点までは確かに将来の結婚相手だと認識していたし、今となっては思い出せないが、もしかしたら自分の初恋の相手はリーヴィアだったのかも知れない。
両親の本当の目的が何なのか分からないが、この結婚でリーヴィアが不幸になることだけは予測がつく。
だから絶対に自分はリーヴィアと結婚するわけにはいかないのだ。
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