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しおりを挟む「リーヴィア。アナタは自分の生家、リュネール家の伝説について知ってる?」
ソラリスはいたずらっ子みたいな目で言った。
「え?リュネールのですか?・・・詳しくは知りませんけど・・・もしかして、あの、・・・うちの先祖は月から来たってヤツですか?」
ソラリスは笑うのを我慢するように口を結んで頷いた。
「へ?え?それとこの婚約が関係してるってことですか?」
「・・・多分」
「え~!アンタんちの先祖、月から来たの~?」
ヴェリタスが笑っている。
「そんなわけないじゃん!」
「その伝説ってどんな話なの?」
「知らないわよ」
「ママは知ってる?」
「私も詳しくは知らないんだけど、太古の昔にこの星から分かれて月ができたんだけど、その時に実はもう一つ月ができてて、もう一個の月は別の公転軌道をもってこの星とか月から見えない遠くに離れていったんだって。
・・・あくまでも言い伝えよ。
学校で言わないでよ、落第するから」
「へ~。それで?」
「で、もう一個の月は何百年だかのすごい長い周期でこの星に近づくんだって」
「ほーん。で?」
「で、近づいた時に何やら起こるらしいのよ」
「何が?」
「知らない」
「知らないの?」
「知らないけど、なんか〝月の光の道〟だか、なんかそういうのが示されて、財宝だかなんだか巨万の富が隠された秘密の場所に導かれる・・・みたいな」
「すごいじゃない!」
「それがこの婚約となにか関係があるのでしょうか?」
「確か、その道が示されるのはリュネールの血族から出る選ばれし者に限るのだ、とか」
「で?」
「だからヨハンナはリーヴィアの血を継ぐ孫を手に入れようとしているんじゃないかと・・・」
「その子が〝月の光の道〟を示されて財宝を手に入れられる、と思っていると?」
「・・・じゃないかな、と。」
「そんな与太話の為に自分の息子を私と婚約させたっていうんですか?」
「確証はないけど」
「そんなの馬鹿げてる。ってか馬鹿」
「まあ、他に目的があるのかも知れないけど一番考えられるのはそれかな、と」
「そんな作り話、誰が信じるのですか?」
「・・・あの女の頭の中には甘~い綿菓子でもつまってるんじゃない?
学生時代も月の伝説に夢中になってたから」
「じゃあ、どうして自分がリュネール家に嫁いで自分でリュネールの血を継ぐ子どもを産まなかったのかな?」
ヴェリタスが不思議そうに言った。
「うちは母がリュネールなの。父は婿養子だから」
「ヨハンナがキアラに意地悪だったのもそのせいだと思うわ。
とにかくヨハンナは自分が伝説の一族になりたかったんでしょうね。
キアラが羨ましくてしょうがなかったのよ」
「じゃ、ラルスの母親がリーヴィアのお母様の立場だったら
『私の先祖は月から来たの。
・・・私もいつかは月に帰るのかしら・・・』
とか言ってたのかしらね?ウケるんだけど」
ヴェリタスは勝手に自分でウケて笑った。
「・・・うちの母、そんな作り話なんかこれっぽっちも信じてませんよ?
月人の話を教えてくれた時も、いかにも先祖に頭のおかしい人がいたみたいでね~、って、絶対に口が裂けても『私の先祖は月から来た。とか言っちゃダメよ、変な人だと思われるから』って恥ずかしそうに顔を赤くしてたんですから」
「うん。まあ、本当にそれが真相かどうかは断言できないわよ。
ただ、あの女は底意地が悪いくせにメルヘンとファンタジーが主食、みたいなところがあったから」
「・・・なんて馬鹿馬鹿しいのかしら・・・それで息子に他に愛する人がいても私との結婚を強要しているのかしら?
そうなるとラルスもとんだ災難だわね。
きっとあの話の通じない母親に何回婚約解消したい、と頼んだところで聞き入れられないのかもしれませんね。
そう考えればラルス本人が婚約解消を言ってこないのも辻褄が合うのかも」
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