そして私は惰眠を貪る

猫枕

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 別に良いとか悪いとかじゃなくて、なんていうのかな、タイプが違う?テイストが合わない?なんかそういう相手って誰にでもいると思うの。

 一緒の時間が気詰まりな相手。

 学校で勝手に組まされたグループで、会話の内容もリズムも合わないっていうか、相手も私と組まされて面白くないんだろうな~なんて憂鬱になってきて、とにかく

『早くこの時間終わってー!』

 って思う相手。


 私の場合はそれが婚約者だったってだけ。
 
 
 私の名前はリーヴィア・リュネール。

 この国では貴族制度が無くなって久しいけれど、元〇〇みたいな階級差は厳然として残っている。

 一応私も名家の娘ということにはなっているけれど、正直言って我がリュネール家は家門といい財産状況といい、大した家柄ではないわ。 

 だから、いくら親同士が友達だからって、うちより遥かに格上のヴァルノー家が息子ラルスと私の結婚にこんなに乗り気な理由が分からないの。

 「私達親戚になれるのね~」

 なんて仲良し同士がノリで決めた婚約なんだろうけど、子供たちの成長に伴って、

「この子達は合わない」

 ことがハッキリしてくれば、どちらかが

「やっぱりヤメましょう」

 って言い出すものだと思っていたけれど、一向にそういう話にはならなくて。

 何度となく父に

「私とラルスは違いすぎてお互い気が合わない」

「結婚しても上手くいかない」

「私が不幸になってもいいの?」

 と婚約を解消するようお願いしたのだけど、

「う~ん。でも、先方がな~」

 としか言わない。  


 業を煮やしてラルスの母親に直談判にも行ったんだけど、

「ラルスさんは他に好きな女の子がいるみたいです」

「私と無理矢理結婚させられるなんて可哀想です」

「ラルスさんは大変おモテになられるので、もっと条件の良いお相手がいくらでも見つかるはずです」

「うちの両親に気を遣っておられるのらなら心配は御無用です」

 むちゅこたん命のヨハンナおばさまなら直ぐに婚約解消に同意してくれるとばかり思っていたのに、

「親友のルキアと私の子ども達が結婚する日が来るなんてね!」
 
 とまるで聞きやしない。

「ラルスさんは大変おモテになるのですが、その中でも特にコリーナ・ダ・シルバさんと仲が良いそうで、ラルスさんとコリーナさんは学園でも公認の恋人同士なんですよ」

「リーヴィアちゃんが気を揉むのはわかるわ。
 でも、今だけだから。
 すぐにラルスはアナタの所に戻ってくるわ」

 戻って来るもなにも小学校時代以降特に口を利いたこともない。

 そして私は学園内でイケてるカップル、ラルス&コリーナの恋路を邪魔する存在と認識されていて、何の関係も無い生徒からまで敵を見るような目を向けられているの。
 もう慣れたけど。


「・・・いえ、そうではなくてですね。
 コリーナさんはダ・シルバ家のお嬢様ですよ。
 私なんかより遥かに格上。
 これはラルスさんの将来にとってもヴァルノー家全体にとっても喜ばしいことではありませんか」

「まあまあまあ、リーヴィアちゃん。
 さすがリーヴィアちゃん。
 ラルスの幸せを一番に考えてくれるなんて、なんて素敵なお嫁さんなんでしょう!

 ラルスは幸せ者ね」



 ・・・・話が全く通じない。

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