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女将さんと私
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私がレインボーに通うようになって間もない頃、女将さんに店の名前をレインボーにした理由を聞いたことがある。
女将さんが言うには、虹は希望と幸福と共生の象徴なんだそうな。
「この辺には色んな人間がいるからさ、
中には差別されたり蔑まれたりしてんのもいるし、昔 犯罪やったのとかもさ。
だけど皆ここでは等しく客さ。
温かいご飯を食べて腹一杯になって安心したような顔になるのさ。
虹は色が集まってキレイな橋を作るんだ。
ここは誰も拒まないんだ」
あの日私は抜け穴から外に出た。
「離れ」での生活は、悪くはなかった。
何もしなくても全て与えられて、悪口も言われない、安全で生ぬるくて退屈な世界。
どこにいても私の周りにはいつも透明な膜が張っていて、他の人と同じ空間にいるようで決して触れることも声が届くこともなかった。
私は一体自分が本当に「いる」のかすら自信が持てなくなっていった。
話し相手のいない部屋の中で色んな自分を演じた。
そのうちに本当の自分ってどんななんだったっけ?分からなくなった。
そして私はレインボーに来た。
気がついたら私の周りの膜がなくなっていた。
ありのまま受け入れられる喜びを知った。
女将さんは貧乏な客が来ると オカズをたくさん盛ったりパンを一個増やしたり お釣りを多く渡したりしていた。
他の客はそれを見てもズルいとか不公平だとか言わない。
「罰を下すのは役人とか神様だろ」
そう言って鼻つまみ者とも平気で笑って話をしていた。
女将さんが娘さんの所に旅立つ前に、何故かこんな話を私にした。
「シンディー、神様っていうのはね、
きらびやかな衣装を着た王みたいな姿で現れるんじゃないんだ。
魔法みたいに願いを叶えてくれるわけじゃないのさ。
ボロボロの服着てさ、みんなから馬鹿にされて蔑まれてさ、惨めな格好してるんだよ。
そうして私らみたいな どうしようもない とるに足りない人間たちとさあ、
一緒に泣いてくれるんだよ」
私を救ってくれたのは 地位も財産も無い
無学な女将さんだった。
女将さん、私はレインボーをしっかり引き継いでいくからね。
落ち着いたら きっと遊びに来てね。
女将さんが作った 来る者は誰でも迎え入れられる場所、レインボー。
カランコロ~ン
「あ、ゴメンなさい 。 満席です」
(ホントに完結です)
読んでいただいて ありがとうございました
女将さんが言うには、虹は希望と幸福と共生の象徴なんだそうな。
「この辺には色んな人間がいるからさ、
中には差別されたり蔑まれたりしてんのもいるし、昔 犯罪やったのとかもさ。
だけど皆ここでは等しく客さ。
温かいご飯を食べて腹一杯になって安心したような顔になるのさ。
虹は色が集まってキレイな橋を作るんだ。
ここは誰も拒まないんだ」
あの日私は抜け穴から外に出た。
「離れ」での生活は、悪くはなかった。
何もしなくても全て与えられて、悪口も言われない、安全で生ぬるくて退屈な世界。
どこにいても私の周りにはいつも透明な膜が張っていて、他の人と同じ空間にいるようで決して触れることも声が届くこともなかった。
私は一体自分が本当に「いる」のかすら自信が持てなくなっていった。
話し相手のいない部屋の中で色んな自分を演じた。
そのうちに本当の自分ってどんななんだったっけ?分からなくなった。
そして私はレインボーに来た。
気がついたら私の周りの膜がなくなっていた。
ありのまま受け入れられる喜びを知った。
女将さんは貧乏な客が来ると オカズをたくさん盛ったりパンを一個増やしたり お釣りを多く渡したりしていた。
他の客はそれを見てもズルいとか不公平だとか言わない。
「罰を下すのは役人とか神様だろ」
そう言って鼻つまみ者とも平気で笑って話をしていた。
女将さんが娘さんの所に旅立つ前に、何故かこんな話を私にした。
「シンディー、神様っていうのはね、
きらびやかな衣装を着た王みたいな姿で現れるんじゃないんだ。
魔法みたいに願いを叶えてくれるわけじゃないのさ。
ボロボロの服着てさ、みんなから馬鹿にされて蔑まれてさ、惨めな格好してるんだよ。
そうして私らみたいな どうしようもない とるに足りない人間たちとさあ、
一緒に泣いてくれるんだよ」
私を救ってくれたのは 地位も財産も無い
無学な女将さんだった。
女将さん、私はレインボーをしっかり引き継いでいくからね。
落ち着いたら きっと遊びに来てね。
女将さんが作った 来る者は誰でも迎え入れられる場所、レインボー。
カランコロ~ン
「あ、ゴメンなさい 。 満席です」
(ホントに完結です)
読んでいただいて ありがとうございました
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途中の家族会議シーンのなんとも言えない空気感が好きです。
元シンディーが友達を欲して文房具やカップを2つずつ買うシーンが切ないのですが、時を経てその夢が叶うところがほっこりしました。ハンナともいい雰囲気で折り合いを付けられているところも好きです。変にざまぁなど無く、人の温かさを感じられるお話で、また読み返したいと思える作品でした。
素敵なお話をありがとうございました。
感想ありがとうございます。
随分前の作品なのに今でも読んでくださる方々には感謝しています。
もっと面白いものが書けるように努力しますので、これからも宜しくお願いします。
原因不明の体調不良で寝込んでおりまして、お返事が遅くなりましたことをお詫びします。
読んでくださってありがとうございました。
良いお話でした。ありがとうございました。
元お兄様とどうなるか気になりますが、これはこれでハッピーエンドなのかなって感じで良かったです。
感想ありがとうございます。
だいぶん前に書いた話なのですが、今でも読んでくださる方がいらして嬉しいです。
あの後女将さんが戻ってきて、レインボーを再び女将さんに任せて新アグネスは元兄の海外転勤に付いて未開の土地に行く、なんてのでどうでしょうか?
読んでくださってありがとうございました。
悪い人が出てこない ハッピーエンドで読了感が良いですね。たまに読み返しています。
読んでくださってありがとうございます。
だいぶ古い話になってしまったのですが、今でも読んでいただけて嬉しいです。