上 下
6 / 16

6

しおりを挟む

「・・・・という訳なんですよ」

 わたしが話し終わっても女将さんは黙ったままだった。

 こりゃ完全に引かれたかな。

「で、それでですね」

 女将さんが何も言わないので続けて話す。

「まあ、もしかしたら、ていうかその可能性の方が高いとは思うんですけど、私が完全に屋敷から姿を消しても誰も探さないんじゃないかなぁ~なんて。やっぱ、マズイかなあ」

 またも黙る女将さん。

「あとはバレるとしたら洗濯ですよね。
 洗濯も自分でやるからってことにして、月曜日に食材受け取るときにわざとらしく元気な顔見せて労いの言葉でもかけてやれば、日曜日の早朝に屋敷に戻って洗濯とか掃除やって、月曜日の朝に抜け出してくる。
 一週間不在でもバレないんじゃない?」

 あれー?女将さん涙出てる?

「・・・・で、夜遅くに帰るのも怖いし疲れるから、裏の休憩室で寝泊まりしてもいいですか?」

 女将さんが涙をぬぐい鼻をかんだ。

「私のアパートで暮らせばいいよ。
このすぐ近くだからさ。
 お貴族様のお屋敷のようにはいかないだろうがさ、必要な物は揃ってるし風呂は無いけどシャワーは浴びれるしね
 洗濯は自分でやるのが面倒だったら通りの先に洗濯屋があるから、あそこで頼めばいいよ」

女将さんがお茶を淹れ替えてくれて一服する。

「おかしいな、とは思ってたんだよ。 

あんたが毎週持ってくる食材。

その辺じゃ手に入らない高級品ばかりだろ。

 チーズもバターもベーコンも。
それにワインにお菓子だろ。

どっかから盗んで来てるんじゃなくて良かったよ」

 女将さん、私をなんだと思ってたんですか?!

「いくらバイト代払うって言っても受けとらないし。

 ああ、今度は仕事としてやるんだから、ちゃんと給料受けとるんだよ」




 
 こうして私はレインボーの雇われ女将となった。



しおりを挟む
感想 198

あなたにおすすめの小説

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

形だけの妻ですので

hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。 相手は伯爵令嬢のアリアナ。 栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。 形だけの妻である私は黙認を強制されるが……

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。

Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。 二人から見下される正妃クローディア。 正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。 国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。 クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

処理中です...