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39 その後の話
しおりを挟むニコとラウラの結婚式から約半年後、
驚きの知らせが届いた。
なんとカリスとランディーが結婚したというのだ。
結婚してからというものラウラは司書に主婦にと忙しい毎日を送っていたのでpanicからは足が遠のいていた。
今夜はニコが帰って来ないので、久しぶりに行ってみることにした。
カウンターの中にはカリスだけでなくランディーもいてバーテンダーの真似事をしていた。
仕事が早く終わった日や週末は手伝っているのだそうだ。
「ちょっと、どうしちゃったのよ?
大丈夫なの?」
ラウラがカリスに小声で言うと、
「聞こえてるんだけど」
とランディーが即答する。
ランディーはラウラに完全にフラれた後、毎日のようにpanicに通ってカリスに慰めてもらっていたのだそうだ。
「からかってただけだけどね~」
とカリス。
「まあ、何か飲みなよ。何にする?」
そう言われてラウラはお腹を擦る。
「お酒はちょっと」
「え?おめでた?」
カリスは自分もお腹に手を置いて、
「同級生だね」
と言った。
「え?カリスも?」
ラウラとカリスはレモネードで乾杯する。
「だけど、なんで結婚?」
「それがさあ、聞いてよ!あのクソ男」
「ランディー?」
「なんでクソ男がオレなんだよ!」
「違う、ライアンだよ」
「あのイケオジ?」
「アイツね、別れた奥さんとの間に6才の息子がいるんだけど、元奥さんがその子を置いて男の所に行っちゃったのよ」
「ちょっと無責任な気もするけど」
「そしたら父親であるライアンが引き取るのは自然な流れよね。
そしたらアイツ私に結婚して家庭に入ってリラとアイツの息子の育児に専念しろって言ったのよ?!
この店も閉めて主婦になれって。
はあ?ってカンジよ。
アイツさあ、政治評論家かなんか知らないけど新聞やらラジオやらで女性の権利と社会的地位の向上とか声高に言ってたんだよ?
それに教育の機会均等だの教育の重要性だのやたら言ってるくせに、自分の子供には向き合わないってなんなの?
アイツ、子供の面倒なんて見れないからって息子を年老いた自分の母親に丸投げしたんだよ?
で、母親は持病があるから子供の世話が充分にできないって。
まるで私が冷たいみたいに責めるように言うの。
そしたらさ、ここで口論してたら、ランディーが、
『その息子連れて来いよ。
オレが育てるから』
って言ったのよ」
「それで、その子はどうなったの?」
「さすがに反省したみたいで息子を家に呼び寄せてシッターとか雇ってなるべく家にいるようにしたみたいよ。
お母さんにもちょくちょく来てもらってるみたい。
私とも関係修復したいって言われたけど、あの本性見ちゃったら無理よ」
「で、なんで結婚?」
「うるせーな」
「ランディー馬鹿だから本気で父親になるつもりで学校のこととか調べてたの」
「思い込みの激しい人だからね」
「ハゲてなんかないぞ!」
「で、燃え尽きちゃって、子供欲しい病に罹患しまして、リラを連れ回したりしてたわけ」
「通報、通報」
「なんでだよ!!」
「で、リラもランディーに懐いちゃったし。ま、いいかって」
「なるほどー。ってイマイチ分かんないけど、一応おめでとう。って式とかやんないの?」
「オレはやりたいんだけど、カリスが渋ってて。
ラウラからも言ってやってよ!」
そんな話をしていたらニコが慌てた様子で飛び込んで来た。
「やっぱりここだ!
予定が変わって急いで帰ったらラウラがいないから心配したんだよ~。
あ、ランディーさんカリスさん今晩は。
ご結婚おめでとうございます!
今日は何も用意してないから後でちゃんとお祝いさせてください」
「一番年下が一番ちゃんとしている」
「ランディーさん、ラウラを助けてくれてありがとう」
「オマエ顔会わせるたびにそれ言うのヤメロ」
「何度でも言うよ。ランディーさんラウラだけじゃなくてお腹の子供も守ってくれたんだもんね」
「カリスもお腹に赤ちゃんがいるんだって」
「生まれる前から友達がいるって素敵だね。
ボクね、絶対女の子がいいんだ。
ラウラにそっくりな女の子」
「あー、そしてカリスがランディーそっくりな男の子の生む未来!」
「この道はいつか来た道。
歴史は繰り返す」
「??どゆこと?」
あのね~、と昔話に花を咲かせてpanicの夜は更けていった。
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