上 下
39 / 40

39 その後の話

しおりを挟む

 ニコとラウラの結婚式から約半年後、
驚きの知らせが届いた。

 なんとカリスとランディーが結婚したというのだ。

 結婚してからというものラウラは司書に主婦にと忙しい毎日を送っていたのでpanicからは足が遠のいていた。

 今夜はニコが帰って来ないので、久しぶりに行ってみることにした。 

 カウンターの中にはカリスだけでなくランディーもいてバーテンダーの真似事をしていた。

 仕事が早く終わった日や週末は手伝っているのだそうだ。

「ちょっと、どうしちゃったのよ?
 
 大丈夫なの?」

 ラウラがカリスに小声で言うと、

「聞こえてるんだけど」

 とランディーが即答する。

 ランディーはラウラに完全にフラれた後、毎日のようにpanicに通ってカリスに慰めてもらっていたのだそうだ。

「からかってただけだけどね~」

 とカリス。


 「まあ、何か飲みなよ。何にする?」

 そう言われてラウラはお腹を擦る。

「お酒はちょっと」

「え?おめでた?」

 カリスは自分もお腹に手を置いて、

「同級生だね」

 と言った。

「え?カリスも?」

 ラウラとカリスはレモネードで乾杯する。


「だけど、なんで結婚?」

「それがさあ、聞いてよ!あのクソ男」

「ランディー?」

「なんでクソ男がオレなんだよ!」

「違う、ライアンだよ」

「あのイケオジ?」

 「アイツね、別れた奥さんとの間に6才の息子がいるんだけど、元奥さんがその子を置いて男の所に行っちゃったのよ」

 「ちょっと無責任な気もするけど」

「そしたら父親であるライアンが引き取るのは自然な流れよね。

 そしたらアイツ私に結婚して家庭に入ってリラとアイツの息子の育児に専念しろって言ったのよ?!
 この店も閉めて主婦になれって。

はあ?ってカンジよ。

 アイツさあ、政治評論家かなんか知らないけど新聞やらラジオやらで女性の権利と社会的地位の向上とか声高に言ってたんだよ?
 
それに教育の機会均等だの教育の重要性だのやたら言ってるくせに、自分の子供には向き合わないってなんなの?

 アイツ、子供の面倒なんて見れないからって息子を年老いた自分の母親に丸投げしたんだよ?
 で、母親は持病があるから子供の世話が充分にできないって。
 まるで私が冷たいみたいに責めるように言うの。


 そしたらさ、ここで口論してたら、ランディーが、

『その息子連れて来いよ。

 オレが育てるから』

 って言ったのよ」


 「それで、その子はどうなったの?」 

「さすがに反省したみたいで息子を家に呼び寄せてシッターとか雇ってなるべく家にいるようにしたみたいよ。
 お母さんにもちょくちょく来てもらってるみたい。

 私とも関係修復したいって言われたけど、あの本性見ちゃったら無理よ」

「で、なんで結婚?」

 「うるせーな」

「ランディー馬鹿だから本気で父親になるつもりで学校のこととか調べてたの」

「思い込みの激しい人だからね」

「ハゲてなんかないぞ!」

「で、燃え尽きちゃって、子供欲しい病に罹患しまして、リラを連れ回したりしてたわけ」

 「通報、通報」

「なんでだよ!!」

「で、リラもランディーに懐いちゃったし。ま、いいかって」

「なるほどー。ってイマイチ分かんないけど、一応おめでとう。って式とかやんないの?」

「オレはやりたいんだけど、カリスが渋ってて。
 ラウラからも言ってやってよ!」



 そんな話をしていたらニコが慌てた様子で飛び込んで来た。

「やっぱりここだ!

 予定が変わって急いで帰ったらラウラがいないから心配したんだよ~。

あ、ランディーさんカリスさん今晩は。

 ご結婚おめでとうございます!

 今日は何も用意してないから後でちゃんとお祝いさせてください」

「一番年下が一番ちゃんとしている」

「ランディーさん、ラウラを助けてくれてありがとう」

「オマエ顔会わせるたびにそれ言うのヤメロ」

 「何度でも言うよ。ランディーさんラウラだけじゃなくてお腹の子供も守ってくれたんだもんね」

「カリスもお腹に赤ちゃんがいるんだって」

「生まれる前から友達がいるって素敵だね。

 ボクね、絶対女の子がいいんだ。

 ラウラにそっくりな女の子」 

 
 「あー、そしてカリスがランディーそっくりな男の子の生む未来!」
 

 「この道はいつか来た道。
 
   歴史は繰り返す」

 「??どゆこと?」

 あのね~、と昔話に花を咲かせてpanicの夜は更けていった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?

朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。 何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!   と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど? 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)

お花畑な人達には付き合いきれません!

ハク
恋愛
作者の気まぐれで書いただけ。

痛みは教えてくれない

河原巽
恋愛
王立警護団に勤めるエレノアは四ヶ月前に異動してきたマグラに冷たく当たられている。顔を合わせれば舌打ちされたり、「邪魔」だと罵られたり。嫌われていることを自覚しているが、好きな職場での仲間とは仲良くしたかった。そんなある日の出来事。 マグラ視点の「触れても伝わらない」というお話も公開中です。 別サイトにも掲載しております。

平凡なピピルと氷雪の王子の四年間

碧りいな
恋愛
ピピルは15歳だった一年前、自分が転生した事に気が付いた。しかも前世の記憶では母親よりも歳上の良いお年。今生は長めの人生経験を活用し地道に堅実に安定した人生を送ろうと計画するが、訳もわからぬまま王子の側室候補になってしまう。 見た目よりも多めの経験値と割り切りと要領の良さで順調にやり過ごして行くけれど、肝心の王子に放置され続けて早一年。社交界デビューを卒無くこなしたピピルは怒りを含んだ冷たい視線を感じる。その視線の主こそが…… 小説家になろう様でも投稿させて頂いています。

皇太子に愛されない正妃

天災
恋愛
 皇太子に愛されない正妃……

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

断罪シーンを自分の夢だと思った悪役令嬢はヒロインに成り代わるべく画策する。

メカ喜楽直人
恋愛
さっきまでやってた18禁乙女ゲームの断罪シーンを夢に見てるっぽい? 「アルテシア・シンクレア公爵令嬢、私はお前との婚約を破棄する。このまま修道院に向かい、これまで自分がやってきた行いを深く考え、その罪を贖う一生を終えるがいい!」 冷たい床に顔を押し付けられた屈辱と、両肩を押さえつけられた痛み。 そして、ちらりと顔を上げれば金髪碧眼のザ王子様なキンキラ衣装を身に着けたイケメンが、聞き覚えのある名前を呼んで、婚約破棄を告げているところだった。 自分が夢の中で悪役令嬢になっていることに気が付いた私は、逆ハーに成功したらしい愛され系ヒロインに対抗して自分がヒロインポジを奪い取るべく行動を開始した。

処理中です...