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34 火事のあと

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 ラウラが目覚めると自室のベッドの上だった。
 煙を吸ったラウラは軽い一酸化炭素中毒になったようだ。 
 
 ラウラの母が泣きながらランディーが助けてくれたことを教えてくれた。

 小屋は全焼したらしい。

 家族が代わる代わる様子を見に来てくれてカリスもフルーツを持って来てくれた。


 兄は隠していたエロ本が灰塵に帰したとガックリ肩を落としていた。

 
夜には血相を変えたニコも見舞いに来てくれたが、ランディーは翌日も現れることはなかった。

 彼がヤケドを負ったことを知ったのはそれから数日後のことだった。

 ラウラはマークス邸を訪れた。
 ランディーの母、マークス夫人が出迎えてくれた。

「まあ、ラウラちゃん元気になったのね、良かったわ~」
 
 「おば様ご無沙汰しております。
 この度は大変なご迷惑をおかけいたしまして」

「いいから、いいからお茶にしましょうよ。
 丁度ね、キャラメルを使った何か、のお菓子をいただいたのよ」

 マークス夫人は呑気だ。

「あの、ランディーの具合は?

 ・・・火傷したって」

「あー、大したこと無いわよ。
 今日も仕事行ってるし」


「・・・大切な息子さんにケガをさせてしまって申し訳ありません」

「もー。ラウラちゃんが無事だったからいいじゃない」

 
 二人のお茶会が始まった。


「お宅にお邪魔するの何年振りでしょうか。
 懐かしいですわ」

「昔はしょっちゅう子供達が行き来してたのにね」

そう笑ったマークス夫人は、

「ランディーはずっとラウラちゃんに迷惑をかけてばかりだったから、今回のことはほんの罪滅ぼしってところよ。
 気に病まないでね」

そう言っていただけると、と眉を下げるラウラに、

「私だって、何度あの子をぶっ殺そうと思ったことか」

 とハンカチを握りしめるマークス夫人にラウラは反応に困る。

「マーガレット王女様がスローン家に降家なさった後、化粧品の開発をお始めになってね。
 それこそ女性達の垂涎の的だったわけよ。
 身分の高い貴族の奥様達ならともかく、私達みたいなギリギリ貴族の手に届く品物ではないの。
 値段云々って言うより紹介とか伝手つてがないと手に入らないのよ」

 あー、なんか先が読めて来たぞ。

「それが、やっと手に入ったのよ。

 もうね、いつも使ってる化粧品の10倍も高価でね、容器も気品があって良~い匂いがしてね」
 
 当時を思い出したのか、一瞬うっとりしたマークス夫人はキッと目つきを鋭くした。

「あの子、クリームとパウダーをねてクッキーを作ったのよ!!!」

 あ~。そうきましたか~。

「勿体無いから、ちょっとずつ、ちょっとずつ、大事に使ってたのよ。
 
 もう、私、頭に血が上っちゃって思いっきりあの子を引っ叩いちゃったのよ」
 
 マークス夫人は怒りと自己嫌悪の混ざったような複雑な顔をしていた。

「・・・し、仕方ないですよ。

 人間だもの・・・・」


そこにランディーが帰って来た。

 「お、ラウラ来てたのか。元気になったか?

 って、なんで母ちゃん怒ってんだよ」


「なんか色々昔の事思い出したら腹が立ってきて」

「おい!思い出し怒りとか勘弁してくれよ」






  

「あ、あのランディー。助けてくれてありがとう。
 火傷したって、大丈夫なの?」


 ランディーは首と左腕に包帯を巻いている。

 見えないだけで肩や上腕にも火傷をしている可能性が高いとラウラは思った。


 落ち込むラウラをランディーは庭に誘った。

 

 

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