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31 カオスなクリスマス
しおりを挟むラウラとニコの乗った列車はクリスマスの朝に王都のセントラルステーションに着いた。
二人は早朝から営業しているカフェで朝食を取った。
「一度部屋に戻ってから買い物に行こうよ。
デリカでご馳走買おうよ。
良いワインも買わなくちゃね。」
二人はウキウキしながら手を繋いでカタバミ荘の階段を登った。
だが、ラウラの部屋の前には大柄な男性が仁王立ちしていた。
「オマエは何を考えているんだ!!!」
「・・・お、・・お父様」
二人は文字通り首根っこを掴まれてヘミング邸へと連行された。
ヘミング邸の応接室には母、兄、ラウラより年下の兄の妻、そして口の動きで、
『ごめ~ん』
とメッセージを送るカリスがいた。
怒りで顔を赤くして額に青筋を立てた、赤いんだか青いんだかハッキリして欲しい父が、
「どうやらお前を自由にさせ過ぎたようだな!」
と怒鳴った。
「独身の女が男と二人で旅行なんかしたら世間からどういう目で見られるか分からないのか!!」
「・・・・スミマセン」
「ラウラを叱らないで!」
ニコが訴える。
「君は一体なんなんだ!ラウラとどういう関係なんだ!!」
「ニコです。初めまして。ラウラお嬢さんと結婚したいです」
「結婚?!・・・君、随分若そうだけど歳はいくつだ?」
「18です」
「じゅ、・・・18~?!」
「やるじゃんラウラ」
とは兄嫁。
「こうなるとラウラは被害者というよりは少年を連れ回した毒婦って見方にもなるな~」
と兄がニヤニヤ。
「ちょっと!毒婦って」
「ラウラはボクの女神様だよ!」
「君ねぇ、家庭を持つっていうのは遊びじゃないの。どうやって家族を養うつもりなの?」
「ボク、俳優やってるんです。お仕事頑張りますから!」
「あれ~?貴方もしかしてNico?」
「え?」
「ほら、お義母様!よく見てください。
髪の毛染めてメガネかけてるけどNicoですよ!
『記憶の島』の」
「あ、ホントだ~!」
急に母と義姉が手を取り合って盛り上がりだした。
そしてニコを挟んでベタベタ触り始めた。
「うわ~、お肌スベスベ~」
「可っ愛いわね~」
「な、なんだ。コイツは有名なのか?」
「やだ、お義父様ったら遅れてる~。
Nicoは若手実力No.1の人気俳優なんですよ~」
義姉の小馬鹿にしたような口調にちょっとムッとした表情のラウラの父。
「ならば尚のこと黙って見過ごす訳にはいかないではないかっ!
ニコ君!君の周りには美人な女優がうようよいるだろう?」
「羨ましいな~」
と兄。小突く義姉。
「今からもずっとだよ?
君の周りにはその時々に世間を騒がせる一級の美女たちが存在することになる。
目移りしない方がおかしいくらいだ。
きらびやかな世界の中で君は必ず後悔する。
『なんでこんな年増の地味な女を妻にしたのだろう』
そしてラウラを捨てるに決まっている!!」
そうなんだろうけど、第三者の口から客観的な事実みたいに言葉にされるとツライものがあるな~と項垂れるラウラ。
「私は大事な娘が傷つくと分かっていて見過ごすことはできない!!」
「ラウラは世界一美しいです!」
「うぁ~お義母様、今のはポイント高くないですか?」
「そうねぇ~5ポイントくらいあげちゃう?」
キャッキャする二人。
「よく考えなさい!
10年後、君は28才で女性達にモテモテだろうが、ラウラは40のオバハンだぞ!」
「ちょっとお父様、勝手に四捨五入しないでください!」
「40才には40才の美しさ。50才には50才の美しさ。
全ての女性はそれぞれの年齢で皆 美しいんです!」
「「10ポイント!!」」
「ボクが貴族じゃないからですか?
ボクが貴族じゃないから認めてもらえないんですか?」
「いや~。家は貴族ったって、かろうじて貴族ってだけで、皆一生懸命働かないと暮らしていけない なんちゃって貴族だからな~」
と兄。
「ニコのことは私が養子にします!!」
突然の大声に皆が振り返るとランディーが入り口に立っていた。
「ニコは私の養子にして私はラウラと結婚します!!
三人で暮らして、ラウラとニコの間に子供が出来たら、私とラウラの子供として育てます!!」
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
シーーーンと静まり返った応接室。
時が止まったかのような空間にカリスの遠慮会釈ないゲラゲラ笑いが響いた。
「・・・ランディー君。君は一体、何を言ってるのかね?」
「私はラウラの為なら、・・・ラウラの幸せの為なら!」
うわ~っ!!と泣き出すランディー。
困る面々。
笑うカリス。
「・・ニ、ニコ君。・・君もランディー君になにか声を掛けてやっては?」
え?ボク?
おずおずとランディーに近寄ったニコは、
「・・・メ、・・メリークリスマス」
「そうよ!今日はめでたいクリスマスなんだから!」
ラウラの母が明るく言って、不思議なメンバーは食堂に移動し、切り分けられたケーキを言葉少なにモソモソと食べた。
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