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7 ランディーという男
しおりを挟む「そうそう。私ランディーとお見合いしたのよ」
ラウラが言うとカリスは嘘でしょ、と仰け反る。
事の顛末を語ると、ホントどうしようもないね、と呆れる。
「ランディーは誰にでも分け隔てなく嫌がらせをする人だったわよね」
「まあ、ある意味平等だったわね」
ランディーとは幼馴染みで同級生のカリスも当然「被害者の会」のメンバーの一人である。
「あれは忘れられないわよねー。ウ◯コ事件」
「ヤメテよ。思い出したくもないわ」
ある朝登校すると教室が騒がしい。
何事かと思いながら席に着こうとすると、ラウラの机の上に、それこそ絵に描いたような見事なウ◯コが鎮座していた。
悲鳴を上げたラウラは取り乱して泣き出してしまった。
「皆で大騒ぎしてたらロゼッタ先生が駆けつけてきてウ◯コ見るなり固まっちゃってさ、
『ヘミングさん。我慢できなかったんですか?』
って言った時は悪いけど吹いたワ」
カリスは思い出して笑っている。
「そしたらラウラが泣きながら『私じゃないです~』って」
カリスはヒーヒー笑っている。
「百歩譲って私だとしても机の上になんかするわけないじゃないねぇ。
ロゼッタ先生ってどこかズレてたわよね」
「ヒステリックなオバチャンって思ってたけど、今の私達くらいの年だったんじゃない?」
「今日イチ怖い話なんだけど」
結局先生が ちり紙を何枚も分厚く重ねてウ○コを包むように取って、窓の外に放り投げたのだが、『高かったんだから捨てるなよー』と慌てて拾いに行ったランディーによって、それが夜店で買った玩具であったことが判明した。
その後ランディーはこっぴどく叱られたが、
『より本物らしく見えるように配置に工夫した』
と誇らしげに語り、全く反省していなかった。
「悪戯するためだけにお小遣い全部つぎ込んでウ◯コ買うってスゴイよね」
「でもさ、ラウラも仕返ししたじゃない」
「そんなことあった?」
「チューインガム事件よ」
「ああ、アレね」
それはまだ小学校の低学年のこと。
日曜学校の後で子供ばかり集まって遊んでいた時のこと。
ランディーは親戚からお土産に貰ったというチューインガムを噛んでいた。
当時はまだチューインガムは珍しくてラウラもカリスも口に入れたことがなかった。
ランディーはポケットにたくさん入れているのに誰にもやらずに自分だけ噛んでいる。
なんとも言えない良い匂いが漂ってきて、皆に一つずつくらいくれたっていいのに、と思っていた。
「それって美味しいの?」
「うん。甘くてイチゴの味がして美味しいんだよ」
「ふーん」
ランディーは一度に3つ4つと口に入れてモゴモゴやっている。
そしてプーっと風船を膨らませたかとおもうと口からガムを取り出して手で捏ねくり回して再び口に戻す。
「きったなーい!」
羨ましさと悔しさも手伝って、馬鹿にしてみたがランディーは知らん顔してガムを引っ張って伸ばしてみたりそれをまた口に戻したりしていた。
「ねえ、それでハチマキはできないでしょう?」
ラウラが言うとランディーは
「できるさ!」
と言って口から出したガムをビヨーンと伸ばして自分の頭に巻いた。
「カッコいい!」
ラウラが褒めると、そうか?と喜ぶランディー。
「うん。ピンクのハチマキがすっごくカッコいい!」
調子に乗ったランディーは午後をハチマキで過ごした。
その夜マークス家にランディーの悲鳴混じりの泣き声が響いた。
ガッチガチに固まったチューインガムはどうやっても取り除くことができなかった。
痛い、痛いと泣きわめく息子を前にマークス夫人は決断するしかなかった。
週明けの学校に現れたランディーはご自慢のサラッサラ坊っちゃんヘアを見事な丸刈りにされていた。
「でも、あれは私のせいじゃないでしょ」
ヘラヘラと思い出話に花が咲く。
「だけどさ、私達の間では毛虫のように嫌われていたランディーが中等部くらいからモテだしたのは謎だったわよね」
「そう、そう。後輩から何回もランディー先輩を紹介してくださ~いって言われたわ。
私はあくまでも不幸な人間を増やさないための親切心として『アイツだけはヤメとけって』言ってたんだけど、『オレが他の女と付き合うのが嫌だからって邪魔すんなよ』って言われてからは事務的な対応に切り替えたわ」
「でもアイツ、モテてた割には具体的に誰それと付き合ってる、みたいな話が聞こえてこないんだよね」
「性格悪いからすぐにフラれるんでしょ」
「私はこういう商売してるから色んな噂が入ってくるけどランディーの浮いた噂は無いな」
そんな話をしているとお客さんが増えきた。
忙しくなってきたのでラウラも手伝う。
閉店作業をしている時、ふいにラウラが、
「私、一人暮らししようかと思ってて」
「そうなの?うちのアパート部屋空いてるよ」
カリスはバー経営の他にアパートを一棟持っている。
ラウラはカリスの家に泊めてもらって翌日アパートの部屋を見に行くことになった。
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