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カフェにて
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パークでのデートはエリーが予想していたよりはずっと楽しかった。
アベルは変人だし度々発言がおかしいが、人間性に重大な欠陥があるわけでもないし(?)、誠実さもある。
婚約時代や初夜の仕打ちを思い出すとムカつきはするが、人間誰しも欠点はある。
パークでは頑張って歩み寄ろうと努力してくれたのだから、自分も少しは応えるべきかも知れない。
そう思ったエリーは数日後にハイヤー家を訪れたアベルがダメ元で誘ってきた街のカフェでのお茶を快諾した。
オッケーが貰えると思っていなかったアベルはみっともないくらい喜んで、
「調べたところによると現在若い女性達に特に人気のあるカフェがセントラル・ストリート沿いに7軒、サザン・ストリート沿いに5軒、ノーザン・パーク周辺に4軒あるようだ。更にイースト・ゲート周辺には」
「そ、そうなんだ。色々調べてくださったのね」
苦笑いするエリーの横で早口で捲し立てた。
「その中で最も有名なのは老舗のトリオンファンテ、あ、因みにトリオンファンテというのは音楽用語なんだけど君は何か楽器の演奏はするかな?俺はフルートを少しばかりやるんだけど、やはり音楽というのは才能も必要だけどそれを上回る熱情が必要だと思うね。
いけないいけない、話が横道にそれてしまったが、そもそもカフェの起源は」
「あ、あの、続きはカフェでコーヒーでもいただきながら・・・」
エリーは前途に不安を抱えながらも約束してしまったので出掛けることにした。
老舗珈琲店の年代物の調度品に囲まれてゆったりとした時間を過ごせるかと思いきや、今度は目についた家具の歴史についてアベルは語り始めた。
うっとおしい。
「あ、あの・・・。
もっと、アベルさんご自身のお話を聞きたいな」
言ってからエリーは
『言葉のチョイスを間違えたのでは?』
と即座に思ったが、時既に遅し、
「俺のことが知りたいんだね」
とキラキラした目で見つめてきた。
「あ、・・えっと、・・アベルさんは兄と同級生なんですよね?
学生時代の話とか聞きたい・・・かな?」
するとさっきまでアホのように喋りまくっていたアベルが静かになった。
「・・・君のお兄さんはいつも楽しそうだったよ。
男女問わずいつも沢山の人達に囲まれて、まさに青春を謳歌しているって感じだったな・・・羨ましかったよ」
「へ・・・へぇ~・・・。
あ、アレとかどうでしたか?
学園生活のメインイベントともいうべき秋の文化芸術祭!
毎年すごく楽しかった~。
あれがきっかけでカップルができたりとかねっ。
私達は去年はカラー綿あめ屋さんやったんですよ!
色が混じってキモチワルイの出来たりして面白かった~。だって、まるで綿ゴミみたいなんだもん!」
「・・・俺は生徒会役員とかやってたから、いつも展示物会場で番をしていた。
〈ミドルリバーに生息する生き物〉の展示などをやったんだ。
実際に膝まで川の水に浸かって網で集めたザリガニや小魚、カニや淡水の貝などを捕まえて水槽も用意して・・・。
徹夜して説明文を書いたり模型を作ったりしたんだが、当日はほんの数人しか見に来なかった。
来場者に手渡そうと思って手書きのパンフレットも印刷して沢山用意したんだが、持ち帰った人はほとんどいなかったな。
窓の外からは楽しそうに模擬店を回る生徒たちの声や音楽が聞こえて、屋台のいい匂いが漂って来た。
俺にはそれが渇望しても到達することのできない楽園のように感じられたものだよ。
『おなかすいたな・・』
って思いながら・・・」
「・・・・・」
「本来は役員同士で交代のはずだったが誰も来ない。
やむを得ずトイレで席を外した間、誰かが展示ブースに見学に来ているのではないかと気が気じゃなくて、急いで教室に戻ったんだが・・・誰もいなかった」
「・・・・・」
「やっと夕方になって俺を呼びに来た者がいたんだが、
『各集積所を回ってゴミの回収をしてください』って。
・・・まあ、俺の文化芸術祭は毎年そんな感じだったな」
「・・・・・・」
「あっ、でも翌年からは弁当を持参したよ。
俺は学習能力が高いからね」
ポ・・・ポジティブ~。
・・・なんだか可哀想になってきた。
「・・・えっ・・とぉ・・・そのパンフレット今も持ってる人がいたらプレミア物ですね?」
エリーがお見舞いの言葉を贈る。
「今度持ってくるよ!!100冊以上クローゼットに眠ってるんだ」
『えっ?あ、要らんけど・・』
翌日ハイヤー家に現れたアベルは、
「あ、これ頼まれてたヤツ」
と言ってパンフレットを手渡してきた。
『いや、頼んでは無い』
「あ、ありがとうございます」
受け取ったパンフレットの表紙にはアベルのサインがしてあった。
アベルは変人だし度々発言がおかしいが、人間性に重大な欠陥があるわけでもないし(?)、誠実さもある。
婚約時代や初夜の仕打ちを思い出すとムカつきはするが、人間誰しも欠点はある。
パークでは頑張って歩み寄ろうと努力してくれたのだから、自分も少しは応えるべきかも知れない。
そう思ったエリーは数日後にハイヤー家を訪れたアベルがダメ元で誘ってきた街のカフェでのお茶を快諾した。
オッケーが貰えると思っていなかったアベルはみっともないくらい喜んで、
「調べたところによると現在若い女性達に特に人気のあるカフェがセントラル・ストリート沿いに7軒、サザン・ストリート沿いに5軒、ノーザン・パーク周辺に4軒あるようだ。更にイースト・ゲート周辺には」
「そ、そうなんだ。色々調べてくださったのね」
苦笑いするエリーの横で早口で捲し立てた。
「その中で最も有名なのは老舗のトリオンファンテ、あ、因みにトリオンファンテというのは音楽用語なんだけど君は何か楽器の演奏はするかな?俺はフルートを少しばかりやるんだけど、やはり音楽というのは才能も必要だけどそれを上回る熱情が必要だと思うね。
いけないいけない、話が横道にそれてしまったが、そもそもカフェの起源は」
「あ、あの、続きはカフェでコーヒーでもいただきながら・・・」
エリーは前途に不安を抱えながらも約束してしまったので出掛けることにした。
老舗珈琲店の年代物の調度品に囲まれてゆったりとした時間を過ごせるかと思いきや、今度は目についた家具の歴史についてアベルは語り始めた。
うっとおしい。
「あ、あの・・・。
もっと、アベルさんご自身のお話を聞きたいな」
言ってからエリーは
『言葉のチョイスを間違えたのでは?』
と即座に思ったが、時既に遅し、
「俺のことが知りたいんだね」
とキラキラした目で見つめてきた。
「あ、・・えっと、・・アベルさんは兄と同級生なんですよね?
学生時代の話とか聞きたい・・・かな?」
するとさっきまでアホのように喋りまくっていたアベルが静かになった。
「・・・君のお兄さんはいつも楽しそうだったよ。
男女問わずいつも沢山の人達に囲まれて、まさに青春を謳歌しているって感じだったな・・・羨ましかったよ」
「へ・・・へぇ~・・・。
あ、アレとかどうでしたか?
学園生活のメインイベントともいうべき秋の文化芸術祭!
毎年すごく楽しかった~。
あれがきっかけでカップルができたりとかねっ。
私達は去年はカラー綿あめ屋さんやったんですよ!
色が混じってキモチワルイの出来たりして面白かった~。だって、まるで綿ゴミみたいなんだもん!」
「・・・俺は生徒会役員とかやってたから、いつも展示物会場で番をしていた。
〈ミドルリバーに生息する生き物〉の展示などをやったんだ。
実際に膝まで川の水に浸かって網で集めたザリガニや小魚、カニや淡水の貝などを捕まえて水槽も用意して・・・。
徹夜して説明文を書いたり模型を作ったりしたんだが、当日はほんの数人しか見に来なかった。
来場者に手渡そうと思って手書きのパンフレットも印刷して沢山用意したんだが、持ち帰った人はほとんどいなかったな。
窓の外からは楽しそうに模擬店を回る生徒たちの声や音楽が聞こえて、屋台のいい匂いが漂って来た。
俺にはそれが渇望しても到達することのできない楽園のように感じられたものだよ。
『おなかすいたな・・』
って思いながら・・・」
「・・・・・」
「本来は役員同士で交代のはずだったが誰も来ない。
やむを得ずトイレで席を外した間、誰かが展示ブースに見学に来ているのではないかと気が気じゃなくて、急いで教室に戻ったんだが・・・誰もいなかった」
「・・・・・」
「やっと夕方になって俺を呼びに来た者がいたんだが、
『各集積所を回ってゴミの回収をしてください』って。
・・・まあ、俺の文化芸術祭は毎年そんな感じだったな」
「・・・・・・」
「あっ、でも翌年からは弁当を持参したよ。
俺は学習能力が高いからね」
ポ・・・ポジティブ~。
・・・なんだか可哀想になってきた。
「・・・えっ・・とぉ・・・そのパンフレット今も持ってる人がいたらプレミア物ですね?」
エリーがお見舞いの言葉を贈る。
「今度持ってくるよ!!100冊以上クローゼットに眠ってるんだ」
『えっ?あ、要らんけど・・』
翌日ハイヤー家に現れたアベルは、
「あ、これ頼まれてたヤツ」
と言ってパンフレットを手渡してきた。
『いや、頼んでは無い』
「あ、ありがとうございます」
受け取ったパンフレットの表紙にはアベルのサインがしてあった。
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