嘘つき女とクズ男

猫枕

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 卒業式は厳粛に行われ、キャサリンが最優秀成績者賞を受賞した。

 オーディナリーの生徒が獲得したのは開学以来初めてのことだった。

 進学する場合は奨学金も出るそうだ。

式の後のパーティーはクラスで会場が別れていたので気楽に楽しむことができた。

 カトリーヌとキャサリンはカトリーヌのドレスをリメイクした色違いのお揃いコーデで参加した。

 カトリーヌはヒースと息が上がるほど何回も踊って楽しんだ。

キャサリンもヴィッラーニ先生と嬉しそうに踊っていた。

 まさかお下げでドレスというわけにもいかないのでキャサリンの髪はアップにセットされていたが、

『あの約束はどうなるんだろうな?』

 と二人を見ながらカトリーヌは考えていた。



 卒業すると早速ヒースはユージンに連れられてあちこちを飛び回る生活が始まった。

 なかなか会えない生活だったが、ヒースが2人の将来の為に頑張ってくれていると思うとカトリーヌは嬉しかった。

 カトリーヌはヒースがそのままソアルーサー商会の社員として働くのか、自分で商売を始めるつもりなのかわからなかったが、いつでも手伝えるように帳簿のつけ方などを学んだり、メイドに家事の仕方を教えてもらったりして過ごした。

 カトリーヌは時々ヒースの家にも行っている。
 ヒースのお母さんのナディアさんにヒースの好物の料理を教えてもらったりしている。

 ナディアさんはヒースが言っていたのとは全然違って、しゅっとした美人だった。

 「ヒースから聞いてたイメージと全然ちがいます」

 「あの子、私のこと外でどんな風に言ってんの?」

 「・・・箒もって追っかけてくる怖いオバサンって言ってました。
 だからもっと、ドスドスした女性を想像してました」

「ほぉ~?」

「いや、こわい、こわい」

 ナディアさんは独身時代は警備隊に属していたそうだ。

「なるほど、箒片手に立つ姿が美しいです」

 

  一方その頃グレアムは、セリーヌと結婚し陸軍に入隊した。

 特別待遇一切なしの下士官からのスタートだった。

  農村上がりの屈強な先輩たちに、ヘトヘトになるまでしごかれる毎日だ。

 口が利けないくらい疲れ果てて帰宅するとセリーヌが可愛い笑顔で迎えてくれる。


「ねえ、グレアム様。

 せんざい意識っていうのは、自分でお洗濯しない人にはないの?」

「??」

「人生のせんたく?には、その、せんざい意識っていうのが、大きく関わっているんだって」

 「・・・・」 

 ハッ、疲れる・・・。

「そうだね。今度の休みには一緒に洗剤買いに行こうね」

 「うん。良い匂いのにしようね」

 ニコニコと微笑むセリーヌに微笑みを返しながらグレアムは自分に言い聞かせる。


 これが幸せなんだ。

 

 
 
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