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しおりを挟むそりゃあね、家同士で決めた好きでもない相手と結婚させられるのだからひねくれたくなるのも分かるわよ。
だけど、それってお互い様じゃない?
シーリア・ハモンドには生まれた瞬間から婚約者がいた。
シーリアの祖父とサイモン・レイダーの祖父は大親友だったそうで、子供同士を結婚させる約束をしていた。
しかし、二人の子供たちはいずれも男の子だったので約束は孫の代に持ち越しとなった。
たまたま同じ年にレイダー家には男の子が、ハモンド家には女の子が生まれたことで浮かれ喜ぶ迷惑な爺さん達によって二人の婚約は結ばれ、更にサイモンの祖父はレイダー家の後継者になる条件としてサイモンがシーリアと婚姻を結ぶことを法的拘束力のある遺言書にしたためて死んでいった。
幼少期、シーリアとサイモンの関係は悪くはなかった。
父親同士も仲が良かったから頻繁に互いの家を行き来して一緒に遊んでいた頃の楽しい思い出もある。
10才の時、シーリアの母が亡くなった。
12才の時にシーリアの父が再婚し、血の繋がらない弟ルネができた。
13才で学園に入学すると、サイモンはシーリアを無視するようになった。
その後、女子に人気のサイモンはとっかえひっかえ色んな女の子を連れ歩いていたが、16才頃には特にお気に入りのご令嬢リンダ・モルガンと人目も憚らずベタベタするようになった。
そして現在17才。
放課後の校舎裏、忘れ物を取りに行くために近道を急ぐシーリアの耳に聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「さすがにオマエ遊びすぎだろ」
「オレの意見なんかお構い無しに勝手に結婚相手決められたんじゃかなわないよ」
サイモンだ。
思わず物陰に隠れて聞き耳を立てるシーリア。
「婚約は解消するのか?」
「しないよ。シーリアと結婚しないと家が継げないからね」
「リンダだってお前と結婚したいんじゃないの?」
「結婚はできないけど面倒はちゃんと見るよ」
「可哀想になあ、シーリア・ハモンド。
婚約者なのにいつも放っとかれてさ。
シーリアの何が不満なのか分かんないな。
美人じゃないか」
「陰気臭い女だよ」
「そうかなあ。
ああいう陰があるカンジの女ってオレは好きだけどな」
「まあ、タダでヤれる女って思えばお得だよな。
大人しくて言うことを聞く女を妻にして、俺は外で自由にさせてもらうさ」
ふうん、なるほどね。
シーリアはサイモンが自分に対して愛情など持っていないことにはとっくの昔に気付いていた。
その点についてはシーリアもどっこいどっこいなので批判するつもりはない。
ただ、それでもお互いの家の為に信頼を築きながら支え合って生きていくというのならば恋愛感情が無くてもそれでいいと思っていた。
だけど、
タダでヤれる女。
ふうん、そう。
心底気持ち悪い。
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