あやかし神社には、妖狐と陰陽師が住んでいる

sakuru

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狐と鳥と聖夜を……

【8】

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 冷えた濡れ縁から腰を上げながら、一瞬外気に触れた寒さに身を震わせると、冷え冷えした青白い月が天空から見下ろしている。凛とした空気は冬特有の透明度の高さと、どこかで降っているのだろうか仄かに雪の匂いを秘めている。

 一瞬吹きつけた身を切るような寒風に、自らの体を抱きかかえつつ、後ろからついてくる二人の物の怪を見ると、寒さは彼らには何の影響も及ぼしてないことに気づく。

 そうか、こいつらには寒いという感覚はないのか、と納得する呼気も白い息だ。

 面倒なことになったともう一度白い息でため息を落とし、暁月は、慈英と、姑獲鳥と共に境内の外に向かって歩き始めた。



「で、あんさんはここにおったんか?」
 神社からしばらく歩いて暁月が足を止めたのは、神社から駅に向かう途中の5階建てのマンションだ。確か単身者が中心に住んでいるようなマンションではなかったか、と暁月は白い建物の上の方まで見上げた。

「……なんでここにいたの?」
 慈英が姑獲鳥に向かって尋ねても、彼女は首をかしげるばかりだ。
 その瞬間、マンションの横の生け垣の中で、キラリと妖しい光が瞬く。

 一瞬そちらに気を取られた慈英は、次の瞬間それが何かわかって、ニッコリと笑って手を伸ばした。

「ここは君の縄張りなんだね」
 金色のフサフサのしっぽを振って、その場に座り込むと、生け垣の中から、猫の目が輝き、なぁっという太い猫の声がする。

 暁月はそれに対して何か嫌味を言おうかと思ったが、次の言葉を聞いて、言葉を止めた。

「ねえ、この姑獲鳥、いつからここにいたの?」
 猫の目のような瞳をくりくりと好奇心に満ちた色で彩り、目の前の猫に話しかける慈英にきづいたからだ。この男は、霊性を帯びている生き物であれば、ほとんどのモノと話すことができる。

 猫がにゃあにゃあと、慈英の言葉に何かを答えているが、千年生きてきても、猫の言葉は暁月には理解できない。

「そっかあ。じゃあ、この子、まだ来て二ヶ月ぐらいなの?」
 ふむふむとサンタ帽から横にはみ出している狐の耳を引くつかせながら、慈英は頷く。どうやら、今夜はこの格好から耳としっぽを隠したり、そもそもこの浮かれたサンタクロースの衣装から着替える気もないらしい。
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