あやかし神社には、妖狐と陰陽師が住んでいる

sakuru

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狐と鳥と聖夜を……

【4】

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 ご馳走様、と呟いて、暁月が食べた皿を持って台所に向かおうとした瞬間。

「暁月ぅぅぅぅ……」
 情けない声が、忍び込む夜気と共に玄関から聞こえる。その声を聞いた瞬間に、ピキっと暁月の額の上が緊張で千切れそうになった。

「……今度はなんやっ」
 思わず暁月の声に、
「こっちまで来てよ……」
 玄関の向こうから情けなさそうな声が答える。

「……ほんまに、なんなんや……」
 慈英がこういう言い方をする場合、その答えは碌でもないものに決まっているのだ。なので厄介事の予感をひしひしと感じながら、暁月は声を上げる。

「そのまま外に出て、自分でなんとでもしはったらええやろ」
 そう言いながらも暁月は、食事をしていた部屋の扉を開けて、玄関の扉から覗きこむ慈英を睨みつけた。

「暁月~。ごめん、ごめんてばっ……助けてよ……」
 情けない顔をする狐耳の向こうに……イヤになるほどの数の化生の姿が見える。
 暁月は深い、深い溜息をつく。

「そこでしばらくじぃっとしとき。 絶対にそこからコッチに入ったら承知せぇへんで!!!」

 ブチッと切れた理性のまま言い捨てると、慌てて食事を取る直前まで着ていた狩衣を羽織り、木笏を持つ。袍は……この際かぶらないでもいいだろう。

 というかコイツはなんでこう、いつだって厄介事をこの静かな神社に持ち込むのか……。
 誰にともなく、愚痴りたいような気分になりながら、暁月は普段と違って、ドスドスと音を立てるほどの勢いで玄関に向かい、玄関の入口で大人しく待っている、百鬼夜行をそのまま背負ったみたいな慈英を睨みつけた。
 
 穏やかな夜の時間を邪魔されて、不機嫌な気分をぶつけるようにバシャンと音を立てて、横開きの玄関を開け放つと、ますますはっきりするのはその惨状だった。

「……どっから連れて来たん? その百鬼夜行」
 一体何体の妖怪を連れ帰って来ているのか。
 数える気すら起こらず、暁月の唇から零れ落ちるのは、ただただため息ばかりだ。

「境内まで引っ張り込んだら、始末つけんとあかんことは、慈英、あんた、よう知っておるよな?」
 目の前で困ったような中途半端な笑い顔をして、なんとか状況をごまかそうとしている半人半狐の男を暁月は、ぎぃぃぃぃっと音がするほど、睨みつけながら、狩衣から形代をまとめて引っ張りだし、呪術を唱える。

 すると先ほど同様に、慈英の姿を象ったミニチュアたちが二十体ほど飛び出てきた。
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