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狐と鳥と聖夜を……
【1】
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「……どこへ行くんや?」
真っ赤なド派手な衣装に身を包み、目の前で獣の耳としっぽを付けたまま、ふらふらと境内を抜けだしていこうとする男に、暁月は、かじかむ手をもう一方の手で覆いながら声を掛けた。
いつもの通り夕拝の掃除の最中だ。
この後境内内を掃き掃除し、本堂の拭き掃除をして、ご神体の周りを綺麗に清浄した上で、夕方の参拝をして、神主としての一日の仕事が終わる。
暁月は毎日、毎日、変わらない日々を過ごしている。
「……なんだ、暁月か……」
ぴくんと男の感情に連れて動く耳を見て、その耳が紛い物でないことを再度確認して、暁月は思わず呆れた声を漏らした。
「……せやから、そない酔狂な格好でどこに行かはるんや?」
苛立ったように尋ねる暁月の言葉に、男は自分のふさふさとしたしっぽを、これみよがしにゆらゆらと揺らす。
「……オレの格好?」
にっこり、男は目を細めて笑う。機嫌良さそうに。
真っ赤なサンタ帽の合間から、ピクンと耳が跳ねて、しっぽがまた揺れた。
「……コレ? 意外とクラブだと、人気があるんだけど」
部活動とかの【クラブ】の呼び方じゃなくて、チャラい【クラブ】の発音をして、コレ、と指さした淡い金色のしっぽを、睨みつける暁月に魅せつけるように、左右に大きく揺らす。
意志を持って揺れるその尻尾は、まがい物ではなく、真っ赤なズボンの中から生えているようにしか見えない。
「めっちゃキュートとかって言われて、オレ、女子にモテモテだったり?」
ウインクを一つ飛ばされて、暁月は情けなくてため息をついた。
「慈英……」
暁月の目の前にいる男は、人ではない。慈英は物の怪だ。
しかも仮にも千年の齢を生きた妖狐の成れの果てだ。それが、この姿では相当お粗末だと言わざるを得ない。
まあそれも仕方あるまい。あきらめたように嘆息を落とす。暁月にとっては、慈英は半分は血の繋がった弟でもあるからだ。物の怪で、血の繋がった弟で……。
真っ赤なド派手な衣装に身を包み、目の前で獣の耳としっぽを付けたまま、ふらふらと境内を抜けだしていこうとする男に、暁月は、かじかむ手をもう一方の手で覆いながら声を掛けた。
いつもの通り夕拝の掃除の最中だ。
この後境内内を掃き掃除し、本堂の拭き掃除をして、ご神体の周りを綺麗に清浄した上で、夕方の参拝をして、神主としての一日の仕事が終わる。
暁月は毎日、毎日、変わらない日々を過ごしている。
「……なんだ、暁月か……」
ぴくんと男の感情に連れて動く耳を見て、その耳が紛い物でないことを再度確認して、暁月は思わず呆れた声を漏らした。
「……せやから、そない酔狂な格好でどこに行かはるんや?」
苛立ったように尋ねる暁月の言葉に、男は自分のふさふさとしたしっぽを、これみよがしにゆらゆらと揺らす。
「……オレの格好?」
にっこり、男は目を細めて笑う。機嫌良さそうに。
真っ赤なサンタ帽の合間から、ピクンと耳が跳ねて、しっぽがまた揺れた。
「……コレ? 意外とクラブだと、人気があるんだけど」
部活動とかの【クラブ】の呼び方じゃなくて、チャラい【クラブ】の発音をして、コレ、と指さした淡い金色のしっぽを、睨みつける暁月に魅せつけるように、左右に大きく揺らす。
意志を持って揺れるその尻尾は、まがい物ではなく、真っ赤なズボンの中から生えているようにしか見えない。
「めっちゃキュートとかって言われて、オレ、女子にモテモテだったり?」
ウインクを一つ飛ばされて、暁月は情けなくてため息をついた。
「慈英……」
暁月の目の前にいる男は、人ではない。慈英は物の怪だ。
しかも仮にも千年の齢を生きた妖狐の成れの果てだ。それが、この姿では相当お粗末だと言わざるを得ない。
まあそれも仕方あるまい。あきらめたように嘆息を落とす。暁月にとっては、慈英は半分は血の繋がった弟でもあるからだ。物の怪で、血の繋がった弟で……。
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