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26 キス泥棒。

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(このさき自分にいつ恋人ができるかだなんてわかんないし、いまのうちに堪能させてもらわないと)

 哲也くんの胸に顔をぐりぐりして、あったかいよなぁとうっとりする。彼からはちょっと消毒の匂いがした。
 俺は彼に抱きついたまま目を閉じると、未来の彼氏に抱きしめられている想像をしてみた。でもそれはうまくいかなくて、なんどやってみても想像の彼氏の姿は哲也くんになってしまう。

(哲也くん、ごめん。でもいまだけだから――)
 哲也くんにぎゅっと抱きしめられて頭を撫でられてと、そこまで妄想をすすめたところでふと気がついた。

(そういえば哲也くんの手の感触って、ゆうくんに触られた感じと似てるよなぁ)

 いまさっき美濃に手当をしてもらっている最中、美濃の手が触れる感じは哲也くんの手とはぜんぜん違うなと思ったのだ。でもゆうくんが俺に触ってくる感じと、哲也くんの手の感じはとても似ている。

 試しに哲也くんの指で自分の頬とつんつんつついてみた。
(うん、ゆうくんに触られたときもこんな感じだった)

 つづいてその指で、自分の唇をつついてみる。ふわっとしたぬくもりが伝わり、俺の唇がぷにっとたわんだ。とたんにズクンと下半身がうずく。めちゃくちゃ気持ちがいい。

(これもゆうくんに触られたときと似ている)
 やばい、心臓がドキドキしてきた。だって俺はゆうくんとはもう最後まで全部体験している。なにがヤバいって、これ、ゆうくんとしたエッチのぜんぶを哲也くんに置き換えて想像できちゃうじゃないか。そしてそれよりもさきに俺はまずしておきたいことがあった。

 すっかり調子に乗ってしまっている俺は、頭にすっぽり被っている掛け布団ごと彼の枕までずり上がってくると、ドキドキしながらそっと哲也くんの唇に自分の唇を押しつけてみた。

(あああああっ、なにこれ、なにこれ? 超気持ちいいんですけど?)
 指よりも柔らかい肉同士がぶつかると、それらはふにゃんと溶けるようにして広がった。俺はいろいろ試してみたくなって、そのまま哲也くんの唇をハムッと齧ったり、上下片側だけの肉を自分の唇で挟んでひっぱったり、まるごとぜんぶ舐めちゃったりと、やりたい放題やってみた。

(はぁ、もう、キスって最高じゃない?)
 カサカサしていた哲也くんの唇がしっとりとうるおいはじめるころ、俺の下半身はすっかり元気になっていた。

「おい、藤守、なにをやっている?」
「…………」
 美濃のことは無視だが、このままつづけていたらとんでもないことになってしまうと俺は自分を戒めた。
(ちょっと休憩……)

 はやく股間を沈めなきゃ、と俺はまたズリズリと掛け布団ごともとの位置にもどってきた。
 ふたたび哲也くんの胸のなかに顔をよせ、ふぅと息をつくと張りつめたお股を彼の太ももにスリスリと擦りつける。じわんじわんと痺れてとても心地いい。

「あん」
「おいっ」

 おっといけない、声がでちゃった。反省はしたが、それでもお年頃の性衝動は治めることはできない。そのまま俺は彼にすりすり、すりすりと腰をこすりつづけた。

「おい……、おいこらっ! お前っ、いい加減にしろっ! そりゃ犯罪だっ‼」
「ぎゃぁっ、やめろよっ!」
 
 美濃にガバッと布団を剥がれた。

「先生、もう帰れよっ」
「帰るなら、お前も連れて帰る。自分の生徒が性犯罪者になるのも、寝ているあいだに性犯罪に巻き込まれるのも見逃せるかっ」

 結局俺は美濃によってベッドから引きずりおろされ、彼の監視下のもと自分で作った夕食の弁当を食べ、面会時間が終わると彼に連行されるようにして家に送り届けられた。

 美濃とたくさんの幽霊を乗せて走り去っていくタクシーに、「いいもんね。今から哲也くんおかずにしていっぱいオナニーしてやるんだから」と毒づいた俺は、しかし部屋に入るなり、すぐにドスケベ色情霊に捕まった。

 そして学校のつづきだとばかりに、さんざんエッチなことをされてしまったのだ。それはもう頭のさきから足のさきまであますところなくエロエロともてあそばれて、これでもかってくらいにお尻のなかも気持ちよくされた。それはまるでかわいがられているってかんじのエッチで。

 そんなによくしてくれるゆうくんには申し訳ないとは思ったけども、でも俺はずっとそれを哲也くんとしてるって想像しながら愉しんだんだ。だからもうホントにホントに気持ちよくなちゃって――、なんと俺はエッチの最中に気絶してしまったのだ。


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