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7 幽霊とお部屋でエッチ。

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 ジリジリジリジリジリジリジリジリ。
 その後軽快な目覚ましの音で目を覚まし、ガバッと身体を起こした俺はどっひゃーっとなった。
 とりあえずベルを止めて掛け布団をはぐと、案の定股間のモノがびょんと跳ね上がっている。パジャマがわりのハーフパンツまでもが恥ずかしい体液のせいですっかり色が変わってしまっていて。

「うぇぇっ」
 いやぁな気持ちで、それと下着をいっしょにひっぱった。のぞくと中は想像以上にびしょびしょで、ネバっと透明の糸を引いている始末。
 そしてなによりも情けなかったのが、ヘンな夢を見た余韻でお尻の穴がヒクヒク、キュンキュンしているのだ。
「うぅんっ」
 脚や布団が濡れないようにそうっとボトムと下着を脱ぐと、まずはティッシュで股間ごしごしと拭う。

「なんでこんなとこにまで……」
(いや、漏れすぎちゃったんだろうけど――)
 お尻の割れ目にそってぬるぬるをぬぐっていくと、もちろんヒクつく穴のところまでつづいていて。俺はトイレでお尻を拭くときにはない羞恥を味わいながら、ソコだけはちょっと手荒にごしっときとった。

「あんっ」
 とたんに背筋を這い上った快感に腰砕けになってベットに突っ伏してしまう。びくびく震えるムスコをぎゅと握りしめた俺は、そのままそれをにゅくにゅくと扱いた。
「ああっ、ああん、あっ、あっ、イクっ!」
 お尻をつきだし、プルプル震えながら白濁を放出する。すっかりヘンな癖がついたらしく、お尻の穴がピクピクしていた。

「き、気持ちよかったぁ……」
 手探りでテッシュボックスを引き寄せる。汚れを受け止めていたティッシュを新しいものにかえて、ごしごし後始末をしながら、空いたほうの手でヒクヒクする肛門をそっと撫でさすってみる。
「あんっ」
(うわ、めっちゃいい!)
「って、俺、朝からなにやってんのっ!」
 我に返ってガバッと跳ね起きる。時計をみるとベルが鳴ってからすでに10分も過ぎていた。のんびりしていたら遅刻じゃないか。

「あっ、洗濯もしなきゃ」
 このままボトムとパンツを洗濯機に放り込もうものなら、今夜母経由で伝わった父から説教をうけるハメになる。俺は洗濯ものを掴むと、
「遅刻する、遅刻するっ」
 お尻丸出しのまま、風呂場に急いぐことにした。



 
「ううっ。さむいっ」
 ビュウッと風が吹き荒む公園で、寒さに身を竦める。
 洗濯していたせいで家をでるのが遅くなってしまった俺は、いつもより二本遅い電車に乗った。そうしたら学校についたときにはすでに何人かの生徒がさきに教室にいて、俺の机はどこかに消えていた。

 クスクスと笑う声、こちらを見てひそひそと話すヤツらに嫌気がさした俺は教室に入るのをやめて氏家の病院まで移動すると、近くの公園で時間をつぶしていた。
 座り込んでいたブランコを揺らすと、キィッと音がたつ。

「あぁあ」
 今朝のことを思いだすとおおきな溜息がでた。
 どうやら、俺は幽霊にヴァージンを奪われてしまったらしい。
 
 この歳になってもなかなか女子に興味がわかず、あ、アイツかっこいいなぁ、とか、コイツの腕触ってみたいなぁ、とか思うのは決まって同性が相手だった。
 あまつさえドラマやマンガで恋人同士の抱き合うシーンを見たりすると、自分より体格のいいひとにぎゅっと抱きしめられるのって、どんな感じかなっと想像するようになってしまい、ついにはまわりにいる男友だちとの距離の取り方がわからなくなっていったのだ。

 それから俺は自分は恋愛対象が同性の人間なのだろうかと、不安な毎日を送るようになったのだ。受験勉強どころじゃなく、このさきまっとうに社会にでて生きていけるのだろうかと、本気で悩んだ。
 自分がゲイなのか、そうじゃないのか。このさき恋愛は男とするんだろうか、俺にもちゃんと恋人はできるのだろうか? はじめての恋人は男なのか女なのか。

 だれかとちゃんとエッチなことはできるんだろうか。それはちゃんと女相手なのだろうか、ちゃんと俺はできるんだろうか? それとも俺は男とエッチをするんだろうか? ちゃんとうまくやれるんだろうか?
 
 俺のことなんて好きになってくれるひと、本当にいるのかな? いないんじゃないかな? ‥‥‥いや、きっといないんだ。

 幸いにも両親は共働きだし祖父母も健康で安定した生活を送っていたりして、我が家は経済的に恵まれていた。せめて受験問題だけでも簡単に解決したいと、俺は私立大学を専願で受させてもらい既に合格を果たしている。
 これでもうこのさき、多少学校に行かなくてもなんとかなるだろうと、――だからゆっくり自分のセクシュアリティについて考えてみよう――と思っていたタイミングだったのだ。

 よもや恋愛をするまえに貞操を失うことになるなんて、予想してなかった。しかも。
「脱童貞じゃなくて、脱処女だったか……」
 がっくしと肩を落とす。この際相手が生きている人間か、死んでいる人間かはどうでもいい。

「きっと俺がもの欲しそうな目でオトコを見ていたから、ヘンなのを引き寄せちゃったんだ。自業自得だ。バチがあたったんだ」
(そりゃ、色情霊引きよせるぐらいにやらしい目で他人のこと見てたんなら、みんなそれに気づいて俺のことを嫌って当然だ)

「そっか、俺オトコ運悪いし、オンナ運もなさそうだし。このままだったら一生童貞で処女だったかもしれないんだ。だったら幽霊相手でも初体験できてよかったのかもしれない。それに気持ちよかったし‥‥‥」
(ダメだ、言っててむなしくなってきた……)

 今日は風が強い。ブランコの鎖を掴む手は冷たくなっていた。氏家に面会ができるのは一時からだ。
 あと二時間ここで時間をつぶして、それから軽く昼ご飯を食べてから彼のところに行って、愚痴を聞いてもらおう。そう思うと、まだすこし泣くのを我慢できそうだった。

「俺が悪いのかもしれないけど、でも、もうちょっとまわりにやさしいひといてもいいんじゃない?」
 ヒュウッと冷たい風が吹きつける。身を竦めると、またブランコの鎖がキィッと寂しげな音を立てた。

 




 




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