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目覚めたらまた夢のなかで、そこは大好きなオンラインゲームの世界だった。
血盟(クラン)に勧誘される。
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馬車はガッコンガッコンと揺れ、お尻が痛い。見れば車輪は木製だ。人生でまだ馬車には乗ったことがないが、実際に乗ればこんな感じかもしれないという、リアリティーのある夢だ。
馬車は大門に向けてガラガラガラガラと進んでいく。
「その服ちょっと変わっているけど、しぅちゃんは農民? それとも商売人?」
リュウがじろじろとぼくを見ながら訊いてきた。
(おぉー。ジョブの話だ。んー、ぼく、なに目指そっかなぁ。やっぱり他人の役にたちたいからアシスト職かな?)
「いまは無職です」
リアルじゃこうもハッキリ言えないだろうセリフを口にする。へへへ。
「へぇ。じゃあそのブラックウルフはただのペット?」
「これは、さっきから勝手にぼくについてきてるの」
「へぇ。うまく育てればいい戦力にもなるし、懐くだけでも荷物持ちになってくれて便利だけどね。まぁ懐くまでが大変だからねぇ。俺もがんばったときがあったけど、二月で諦めたよ」
「むずかしいの?」
「野生はね。まれにうまく繁殖させたひとが売ってたりするけど、はじめから人間が育てたヤツはすぐに懐いてくれる。工程を考えると絶対稼いでからそっちを買った方がいいよ」
「そうなんだ」
となりにちょこんと座っている黒犬、もといブラックウルフを見る。
(よし、コイツを育てよう! そして懐かせて荷物もち兼戦闘要員だ)
それにしても、このリュウって男。ちょっとぼくのことジロジロ見すぎじゃない?
「しぅちゃん、そのネックレスはなに?」
「さぁ、ぼくもよく知らないよ。これは、なんかの神様が入ってるんだって」
(しまった。これは金でできている。街で悪い奴にとられちゃうといけないから隠しておかないと)
ぼくは小さな仏像のペンダントをTシャツのなかに隠した。
「ふーん。じゃあさ、しぅちゃん、そのバングルはなに? そんな石、どこの街でも見かけたことないんだけど?」
「これはタイガーアイだって」
かぁちゃんがどっかの偉いお坊さんに大金払って、エンチャントしてもらったという数珠だ。
「タイガーアイ? 聞いたことないな? どこの領地で売ってるんだろう?」
「さぁ……」
(珍しいものなら、これも狙われるかもしれない。ポケットにでもいれておいたほうがいい?)
「ふーん。…………ねぇ、しぅちゃん。見たところクランに入っていないようだけど、どこかに所属することは考えてないの? ほら、いまは農民でも商売人でも入れるクランあるじゃない?」
「いずれどっかに入ろうとは思っているけど――」
(まぁ夢が覚めちゃうほうがさきかな?)
「じゃあさ、俺のクランに入らない⁉ ほら見て、俺一応盟主なんだ!」
リュウは片手を手綱から離し、襟をひっぱってそこに張り付いたバッチを見せてくれた。
「俺さ、いつか城持ちになりたいって思っていて、仲間を集めているの。うちのクラン、ヒーラー足りないからさ、しぅちゃんにやって欲しいんだけど?」
「えっと……、」
(ヤダな……、こんなふうにグイグイくるひとは苦手なんだよ)
「ヒーラーなら初期費用かかんないし、クランに入ってくれるならいろいろアドバイスしてあげれるしさ! うち、強いクラン目指してるから、所属したらしぅちゃんもはやく強くなれるよ? どう⁉ ねぇ、どう?」
「……その、まだお金もないんで」
リュウがぼくの両手首を握りしめ、ぶんぶん振りまわした。
「ひぃっ! あ、あの、手綱を……持って……ください……」
(ぜったいこのひとダメだよーっ)
「あぁ、ごめんごめん。でもこれくらい大丈夫大丈夫」
大丈夫じゃないよ。だめだ。このリュウってひとは、ない。クランは他をあたろう。
だいたい強さを求めるクランに、ロクなメンバーはいないんだ。パーティー組んでて、オレTUEEEEとか言ってるひととかいたら、ぼく恥ずかしいよ。
ふつうに強くて、おもしろいひとがいるクランがいいなぁ。
ようやく街にたどりついた。門をくぐるときに、ブラックウルフが馬車を飛び降りていった。
「あれ、下りちゃった」
ブラックウルフはしばらく馬車を見つめたあと、くるっと方向をかえてどこかに歩いていった。
「また明日にでも会えるんじゃない?」
がっかりするぼくを励ますように彼は言った。けっこういい奴かも?
馬車はガラガラガラガラ、ひとで賑わう街のなかを進んでいく。
「でさ、しぅちゃん、うちのクラン『カキオコ』って言うんだけど、入ってくれる?」
宿がたくさん建ち並び、噴水の前にはNPCらしきひとも立っている。あとで話を聞いておかなきゃ。でもまずは宿の相場も調べてぇ……。
(薬草売ったお金で宿代足りるかな? 足りなければ隠したヤナをとりにいかないと)
そうとなったら時間が惜しい。さっさと薬草を売らなければ。
「入ってくれたらさ、金策立ててあげるから。しぅちゃんのいまの装備うまく売ってクランを強くしよう!」
(あっ! それっぽいお店発見!)
「ちょっと止めてください」
「え? あ、ああ。うん」
「ありがとうございました。えいっ」
馬車が止まるなり、飛び降りる。
「え⁉ おいっ、しぅちゃん⁉ どこ行くのーっ?」
ぼくは水晶と薬草を抱えて雑貨屋さんを目指しててってか走りだした。
馬車は大門に向けてガラガラガラガラと進んでいく。
「その服ちょっと変わっているけど、しぅちゃんは農民? それとも商売人?」
リュウがじろじろとぼくを見ながら訊いてきた。
(おぉー。ジョブの話だ。んー、ぼく、なに目指そっかなぁ。やっぱり他人の役にたちたいからアシスト職かな?)
「いまは無職です」
リアルじゃこうもハッキリ言えないだろうセリフを口にする。へへへ。
「へぇ。じゃあそのブラックウルフはただのペット?」
「これは、さっきから勝手にぼくについてきてるの」
「へぇ。うまく育てればいい戦力にもなるし、懐くだけでも荷物持ちになってくれて便利だけどね。まぁ懐くまでが大変だからねぇ。俺もがんばったときがあったけど、二月で諦めたよ」
「むずかしいの?」
「野生はね。まれにうまく繁殖させたひとが売ってたりするけど、はじめから人間が育てたヤツはすぐに懐いてくれる。工程を考えると絶対稼いでからそっちを買った方がいいよ」
「そうなんだ」
となりにちょこんと座っている黒犬、もといブラックウルフを見る。
(よし、コイツを育てよう! そして懐かせて荷物もち兼戦闘要員だ)
それにしても、このリュウって男。ちょっとぼくのことジロジロ見すぎじゃない?
「しぅちゃん、そのネックレスはなに?」
「さぁ、ぼくもよく知らないよ。これは、なんかの神様が入ってるんだって」
(しまった。これは金でできている。街で悪い奴にとられちゃうといけないから隠しておかないと)
ぼくは小さな仏像のペンダントをTシャツのなかに隠した。
「ふーん。じゃあさ、しぅちゃん、そのバングルはなに? そんな石、どこの街でも見かけたことないんだけど?」
「これはタイガーアイだって」
かぁちゃんがどっかの偉いお坊さんに大金払って、エンチャントしてもらったという数珠だ。
「タイガーアイ? 聞いたことないな? どこの領地で売ってるんだろう?」
「さぁ……」
(珍しいものなら、これも狙われるかもしれない。ポケットにでもいれておいたほうがいい?)
「ふーん。…………ねぇ、しぅちゃん。見たところクランに入っていないようだけど、どこかに所属することは考えてないの? ほら、いまは農民でも商売人でも入れるクランあるじゃない?」
「いずれどっかに入ろうとは思っているけど――」
(まぁ夢が覚めちゃうほうがさきかな?)
「じゃあさ、俺のクランに入らない⁉ ほら見て、俺一応盟主なんだ!」
リュウは片手を手綱から離し、襟をひっぱってそこに張り付いたバッチを見せてくれた。
「俺さ、いつか城持ちになりたいって思っていて、仲間を集めているの。うちのクラン、ヒーラー足りないからさ、しぅちゃんにやって欲しいんだけど?」
「えっと……、」
(ヤダな……、こんなふうにグイグイくるひとは苦手なんだよ)
「ヒーラーなら初期費用かかんないし、クランに入ってくれるならいろいろアドバイスしてあげれるしさ! うち、強いクラン目指してるから、所属したらしぅちゃんもはやく強くなれるよ? どう⁉ ねぇ、どう?」
「……その、まだお金もないんで」
リュウがぼくの両手首を握りしめ、ぶんぶん振りまわした。
「ひぃっ! あ、あの、手綱を……持って……ください……」
(ぜったいこのひとダメだよーっ)
「あぁ、ごめんごめん。でもこれくらい大丈夫大丈夫」
大丈夫じゃないよ。だめだ。このリュウってひとは、ない。クランは他をあたろう。
だいたい強さを求めるクランに、ロクなメンバーはいないんだ。パーティー組んでて、オレTUEEEEとか言ってるひととかいたら、ぼく恥ずかしいよ。
ふつうに強くて、おもしろいひとがいるクランがいいなぁ。
ようやく街にたどりついた。門をくぐるときに、ブラックウルフが馬車を飛び降りていった。
「あれ、下りちゃった」
ブラックウルフはしばらく馬車を見つめたあと、くるっと方向をかえてどこかに歩いていった。
「また明日にでも会えるんじゃない?」
がっかりするぼくを励ますように彼は言った。けっこういい奴かも?
馬車はガラガラガラガラ、ひとで賑わう街のなかを進んでいく。
「でさ、しぅちゃん、うちのクラン『カキオコ』って言うんだけど、入ってくれる?」
宿がたくさん建ち並び、噴水の前にはNPCらしきひとも立っている。あとで話を聞いておかなきゃ。でもまずは宿の相場も調べてぇ……。
(薬草売ったお金で宿代足りるかな? 足りなければ隠したヤナをとりにいかないと)
そうとなったら時間が惜しい。さっさと薬草を売らなければ。
「入ってくれたらさ、金策立ててあげるから。しぅちゃんのいまの装備うまく売ってクランを強くしよう!」
(あっ! それっぽいお店発見!)
「ちょっと止めてください」
「え? あ、ああ。うん」
「ありがとうございました。えいっ」
馬車が止まるなり、飛び降りる。
「え⁉ おいっ、しぅちゃん⁉ どこ行くのーっ?」
ぼくは水晶と薬草を抱えて雑貨屋さんを目指しててってか走りだした。
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