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目覚めたらまた夢のなかで、そこは大好きなオンラインゲームの世界だった。
薬草あつめ。
しおりを挟む「ふんふんふーん。あっ、きれいな石発見。売れたりするのかな?」
拾った虹色の欠片をスウェットのズボンのポケットに入れておく。
「ふんふんふーん」
せっせかせっせか草をつむ。
「ふんふんふーん」
せっせかせっせか草をつむ。ヤナとはちがう色の濃いギザギザ葉っぱを発見。
「これは……、ヘンな草? ヤナの仲間? これも薬草だったりするのかな?」
いかにもな匂いを発する植物に首を傾げる。
(触ってカブレるといけないからやめておくか?)
「ふんふんふーん」
せっせかせっせか草をつむ。
いったい頭の怪我にどれくらいヤナが必要なのかわからない。しかも葉っぱがいるのか根っこがいるのかもわからないので、丁寧に根っこから引きぬいている。
(とりあえず疲れるまでがんばってみることにしよう)
天気もいい。風も気持ちいい。気分上々で鼻歌だってつづく。
「ふんふんふーん」
「フンフンフン」
「ふんふんふーふふん」
「フンフンフン」
「ふんふ‥‥…あれ?」
「フンフンフン」
歌いながらせっせと草をつむ自分の背後で、なにやら気配が……。
「フンフンフン」
(な、なに⁉)
おそるおそる振り向いてみると、
「フンッ!」
「ぬあぁぁぁああああっ‼」
同時にでっかい獣に伸し掛かられて、ヤナの草むらにひっくりかえった。
「なっ、なに⁉」
よくみるとそれはおおきな黒犬だ。犬はなつっこく、ペロペロと顔を舐めてくる。
「やっ、やめてっやめてっ きゃははははっ」
「クウゥン」
聞き分けがいいのか、犬はすぐに身体の上から退くと、お座りしてしっぽをクルンクルンと振っている。
「あーっ、びっくりした。おしっこちびったらどうするのっ」
「クウン」
「なんだ、いい子なの? でもぼく餌持ってないよ? これ食べる?」
ヤナを犬の口にもっていったが、ヘンッと顔を背けられた。
「むっ。……まぁいいか。じゃあコレは?」
と、例の香りをはなつ草を指さすと、犬は草の匂いをクンクンと嗅いだあと、パクリと食べた。
「おぉ、食べられるんだ。野菜かな?」
そんなことよりも、舐められた顔が痒くなってきた気がする。ぼくの肌は繊細なんだからこのままにしておくわけにはいかない。さっきの小川でいいから、すぐに顔を洗わないと。
「ついでに街に行ってみよう」
集めたヤナは抱えきれないほどの量だ。鞄がないうえに、自分には水晶がある。
「持てないぶんはあとで取りにくればいいか」
大木の根っこの間ならひと目につかないだろう。こんなところにひとは来そうにないが、念のために穴を掘ってヤナを隠すことにする。
立派な大木の根上がりの間を、落ちていた平たい石や木の枝などを使って掘っていると、ずっとそばで見ていた犬も真似をしはじめた。
「おっ。なに? 手伝ってくれるの? じゃあこんど餌になるようなもの見つけたらあげるからな」
「クウン」
できた穴にたくさんの薬草をいれ、落ちていた枝や枯れ葉をかぶせて隠すと、ぼくはヤナの群生地をあとにした。
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