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目覚めたらまた夢のなかで、そこは大好きなオンラインゲームの世界だった。

髪がふさふさ。肌はぴちぴち。シュウヘイは若さを手に入れた。

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「鏡、鏡、かがみ……」
 
 キョロキョロ見渡すが、もちろん草原に鏡なんて落ちているわけがない。
「やっぱり世界観を大切にして、こういうときは小川や噴水に姿を映すんだよ」

 そうとなったら小川探しだ。
「小川、小川、小川……」
 それっぽい方角に一歩足を進めたとき、コツンとつま先にぶつかるものがあった。

 メロンサイズの丸いそれは水晶の玉で、おあきちゃんのかぁちゃんに押しつけられた、いや、貰ったものだった。
「あぁあっ! ヒビが入ってるっ。どうしよう⁉」
 こんど会ったときに、「しぅちゃん、このあいだ上げた水晶大切にしてるぅ?」って訊かれたら困る。割ってしまいましたって正直に話しても、かぁちゃんは正面切って怒りはしないかもしれない。でもきっと心の中で、もうっ、せっかく買ってあげたのに、高かったのに! と思うに違いない。

(おあきちゃん助けてくれるかな……)
 割れた水晶としょんぼりする自分のまえで、さながらハブとマングースのように歯を剥きだしにして口汚くののしりあう親子の姿が浮かんで、ブルブルッと震えた。こ、怖い……。

「と、とりあえず持っていかなきゃ……。うんしょ」
 また落としでもして粉々になってしまってはいけないと、メロン玉サイズの水晶を丁寧に両手で持って歩きだした。

 

                 * 




「おおおおおおおおっ! 髪がっ、髪があるよっ」
 ゲームの世界らしいきれいな川の水面みなもに映ったぼくの頭は、ふさふさになっていた。それでもふつうのひとと比べると、毛量少な目のくるくるしたクセッ毛だ。

「あれ? っていうかちょっと若返ってる。十歳以上若返ってるかな? なんだ。そっか髪が生えたんじゃなくてちょっと昔に戻ったのか。そういえば身体も軽いよ」
 ウンショッ、ソリャッ、エイッ、と軽く運動していると視界のなかに、さっき銀髪の女が指さしていた大木が目にはいった。


 右に少し行ったところに、大木。左にけっこう行ったところに街の壁。後頭部を撫でてみるとピリッと痛む。見ると手のひらに血がついていた。傷口が痕になってそこがハゲたら大変だ。
「ヤナだっけ?」

 採取したところで使いかたはわからない。でも街で訊いたら誰かが教えてくれるだろう。現実では無理でも夢の中、しかも得意のゲームの世界ならコミュ力も割増だ。
「ヤナを採取して街に行ってみよう!」

 ぼくはまたメロン玉サイズの水晶を手に持つと、大木目がけててってか走りだした。
 








 
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