ヒキこもりニートが異世界に転生したら、夢のなかだと思ったまま暢気に暮らしはじめました。

たがみ狐子

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目覚めたらまた夢のなかで、そこは大好きなオンラインゲームの世界だった。

目が覚めたら、夢のなかだった。

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 ぱちっと目を覚ますと、一面青い空だった。
 
 ここはどこ? ぼくはだれ? しぅちゃんです。じゃないっ。

「いたたたたっ」

 頭が割れそうに痛い。後頭部に両手を当てようとした瞬間、枕になっていたなにかがツルンと転がっていき、ゴチンと地面に頭を打ちつけるハメになる。痛む箇所をさらに打ちつけ、目から火花が飛んだ。

「くぅぅぅぅっ」
「ねぇ、あんた。大丈夫?」
 激痛の走る頭を抱え、草っぱらでゴロゴロのたうちっまわっていると、頭上から声がかけられた。

 銀髪の韓国アイドルみたいな女が自分を見下ろしている。銀色の長い髪に白い肌。緑の瞳に、中世の騎士のような服装。

「えと、あの……。だいじょぶ…もにょもにょ」
「え⁉ なんて? 聞こえない。声が小さい、はっきりしゃべりなさいよ!」
「はいっ! 大丈夫です!」
「うわっ」

 怒られてヤケになって繰り返した言葉は、今度は変に裏返ってしまった。
「なによ、そんなでかい声ださないで。びっくりしたじゃない」
 腰に手を当て睨んでくる女は、美女だが偉そうだった。
(怖いぃぃぃ)

「ってか、あんた頭の後ろから血が出てるわよ? ほんとに大丈夫なの?」
「……はい。大丈夫です」
 へこへこ頭を下げる。
(はやくどっかに行ってください。だって怖いから)
 心臓はどきどきで、手にはじっとり汗が滲んてきている。ぼくは人見知りなんだから。

「ふん。じゃあたしは行くわよ。その頭、化膿するまえにさっさと薬をつけときなさいね!」
 彼女はそう云いながら足もとの草のひとつをブーツのさきで、ちょんちょんとつついた。
「ヤナはこのあたりなら、あっちに見える大木のあたりに群生してるよ。じゃあね!」
「あ、はい」
 ペコリと頭を下げて彼女を見送る。
 周囲を見渡せば草原と青い空。女が走っていった方向には城塞のような壁がある。
「ふふふふ。まるでネリージュⅡみたいだぁ。そっかここは夢のなかかぁ」
 だからぼくの髪もふさっとしてるんだ。実はさっき頭に手を当てたとき、髪がある感触にびっくりしたのだ。

「たしかこの間もネリージュⅡの夢見たんだよな」
 それはみんなでマイムマイムを踊っている夢だった。ぼくとおあきちゃんとアキラやレジィ。他にもクランのみんながいてとても楽しい夢だった。歌いながら飛び起きて、隣で寝ていたおあきちゃんにびっくりされた。

「ちょっとゲームしすぎかな? おあきちゃんに怒られる前に自重しなきゃね」
 そんなことよりもだ。日ごろ薄毛で悩んでいる自分に髪が生えているのだから、目が覚めてしまうまえに鏡で見ておかなければならない。
「神さま素敵な夢をありがとー」
 ぼくは鏡をさがすべく、草むらから立ち上がった。



 

 
 

 

 

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