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『逃げられない』
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銃 ネコ 探偵
題 逃げられない
薄暗い路地を抜けると人通りの多い街道に出た。帽子のツバを強く掴むと目元を隠す。そのまま人混みの流れに添うようにして溶け込んだ。
「――ちっ、逃げられたか」
追っ手は撒いた。あとは奴の基地に行くだけ、私は自然と早足になるのを感じながら不思議とワクワクしている自分に気付き驚いた。頭を振りそんな邪念は消し去る。
街道を抜け再び路地裏へ入ると走りながら慣れた手つきで角を曲がっていく。
バン!
「うっ……」
咄嗟に肩を押さえ出血を防ぐ。音がした方向へ顔を向けると拳銃片手に私を睨んでいる人が一人。
(もう見つかった……はやく、逃げなきゃ)
「どこに逃げても無駄ですよ? 私から逃れる事なんて、不可能ですからね」
そう言ってこいつは、探偵は不適に嗤う。私は苦虫を噛み殺しながら足を前へ前へ踏み出す。角を不規則に曲がり今度こそ探偵を撒く……が
「だから言っているでしょう? あなたが行く先は分かっているんですから、いい加減投降してくれませんかね。私だって暇ではないのですよ」
突如として目の前に現れるとそう言う。今のは完全に適当に曲がったはずだ。心を読んでいたとしても分かるはずがない。ならどうやって次の順路に現れることが出来たのか、どこかから見張られている? それとも位置情報を掴まれているのか。
真相は分からない。
だが逃げるしかない。
逃げなければ、待っているのは死のみ。
私達には未来もクソもない。
今を生きているだけで精一杯なんだ。
私は抗う。今まで体力を温存していたがもう限界だ。術式を展開し数キロ離れた地点へ転移する。
――住宅街へ飛ばされ、私は安堵からかため息を付く。ここから奴の基地まで多少距離はあるが間に合わないことはないだろう。そう思い血が染み出してきた左肩を応急処置として服を破り巻き付けた。
少し歩くと妙におかしい。具体的言うと周囲の雰囲気がおかしい。時刻は二十二時を過ぎ人通りはほぼ皆無となっている。誰かが来れば足音ですぐに分かるほど静かだ。
「……ここって、こんなにネコいたかな」
もう一つ、おかしな事があった。そう異常なほどのネコ。見つけたとして多くても二、三匹くらいだろうが、ここは圧倒的におかしい。数える云々というより、死んだ数の方が覚えやすい。ネコの眼がそれぞれ光を反射している。不気味だ。ここがお墓ならまず間違いなく出るだろう。
――ネコ達の眼が一瞬眩く光った。光がおさまると、そこにはあの探偵がいた。
題 逃げられない
薄暗い路地を抜けると人通りの多い街道に出た。帽子のツバを強く掴むと目元を隠す。そのまま人混みの流れに添うようにして溶け込んだ。
「――ちっ、逃げられたか」
追っ手は撒いた。あとは奴の基地に行くだけ、私は自然と早足になるのを感じながら不思議とワクワクしている自分に気付き驚いた。頭を振りそんな邪念は消し去る。
街道を抜け再び路地裏へ入ると走りながら慣れた手つきで角を曲がっていく。
バン!
「うっ……」
咄嗟に肩を押さえ出血を防ぐ。音がした方向へ顔を向けると拳銃片手に私を睨んでいる人が一人。
(もう見つかった……はやく、逃げなきゃ)
「どこに逃げても無駄ですよ? 私から逃れる事なんて、不可能ですからね」
そう言ってこいつは、探偵は不適に嗤う。私は苦虫を噛み殺しながら足を前へ前へ踏み出す。角を不規則に曲がり今度こそ探偵を撒く……が
「だから言っているでしょう? あなたが行く先は分かっているんですから、いい加減投降してくれませんかね。私だって暇ではないのですよ」
突如として目の前に現れるとそう言う。今のは完全に適当に曲がったはずだ。心を読んでいたとしても分かるはずがない。ならどうやって次の順路に現れることが出来たのか、どこかから見張られている? それとも位置情報を掴まれているのか。
真相は分からない。
だが逃げるしかない。
逃げなければ、待っているのは死のみ。
私達には未来もクソもない。
今を生きているだけで精一杯なんだ。
私は抗う。今まで体力を温存していたがもう限界だ。術式を展開し数キロ離れた地点へ転移する。
――住宅街へ飛ばされ、私は安堵からかため息を付く。ここから奴の基地まで多少距離はあるが間に合わないことはないだろう。そう思い血が染み出してきた左肩を応急処置として服を破り巻き付けた。
少し歩くと妙におかしい。具体的言うと周囲の雰囲気がおかしい。時刻は二十二時を過ぎ人通りはほぼ皆無となっている。誰かが来れば足音ですぐに分かるほど静かだ。
「……ここって、こんなにネコいたかな」
もう一つ、おかしな事があった。そう異常なほどのネコ。見つけたとして多くても二、三匹くらいだろうが、ここは圧倒的におかしい。数える云々というより、死んだ数の方が覚えやすい。ネコの眼がそれぞれ光を反射している。不気味だ。ここがお墓ならまず間違いなく出るだろう。
――ネコ達の眼が一瞬眩く光った。光がおさまると、そこにはあの探偵がいた。
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