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『コロコロかわる』 7
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――放課後、俺はいつもの場所に向かった。全くもって気の乗らない、それでいて憂鬱だ。いつもの場所――視聴覚室に着くと俺はため息をこぼしてドアをノックした。
コン、コンコン、コン。
少しすると内側から鍵が開く音がした。誰も居ないか周囲を確認するとそっとドアをスライドすると素早く中に入りドアを閉めた。
「……はぁ、それで何かな」
俺は相手が先生であるにも関わらずタメ口で訊いた。
「ほんっとうに申し訳ないッス……」
開口一番俺にしがみつくとそう言ってきた。
「だから良いって、あれは元々俺の不注意が招いた事故なんだから……」
俺が窘めるようにそう言うと「いえ、ユキ様の不始末を整えるのが私の仕事ッスから」と言われ俺はなんとも不甲斐ない気持ちになってしまった。
今更だがこの先生……っていうかこの娘は俺の傍付きだ。腐っても王族なんだよな……。一応カイやサラ姉さんが居るからそれほど心配はないが先生として見張っていれば変なことをする輩はいないだろう。彼女、始めは俺に怒るとか注意することにすごく抵抗を持っていたけど、いつの間にかなんだか怒るのが普通になってしまっている。慣れって恐いな。
「それでクオリアはどうする? 俺は実家の方に帰るけど」
「私も仕事が終わり次第そちらに帰るッス……んん。ではな、私は行くよ」
学校での口調に戻るとクオリアは視聴覚室を後にした。俺はクオリアと居たところを誰かに見られてはいけないので少しだけここに残ると学校を後にした。
――他の生徒に見つからないように裏門から出ると俺を待っていたのかミリアが飛びついてきた。
「おにいさまー!」
「おおっとっと。わざわざ待ってたのか」
いきなり飛びついてくるものだから体勢を崩しかけた。
「リア姉とおはなししてたの?」
「よく分かるね」
「ミリアはおにいさまのことなら、なんでも分かるの!」
俺は「そうかそうか」と言いながら頭を撫でるとミリアは「えへへ」といいながら頬を赤らめた。
「じゃ、帰ろうか」
「うん!」
俺が左手を差し出すと飛びつくようにミリアは右手で握ってきた。ミリアの手を優しく握ると裏の駐馬場へ歩き出した。
馬車の前にミリアの執事が立っていた。
「お疲れ様です。クロさん」
「いえいえ、ユキ様はお気になさらず」
クロさんは手慣れた様子で馬車の扉を開けた。俺はミリアの手を持ったままエスコートし馬車に乗せた。続いて俺も手すりを使い乗り込んだ。クロさんが扉を閉めると御者となるべく手綱を握った。
馬車が進み出すとミリアが俺の膝の上に乗ってきた。
「えいっ。ふふふ」
ミリアは俺の顔を見上げると可愛らしい笑みを零した。
家に着くまでの間ミリアはずっと「今日はね、今日ね」「ミリアも、ミリアも!」とはしゃいでいた。ミリアと話すのはもちろん楽しいが、こうもずっと話しているとさすがに疲れてきたのか家に着く前にミリアは俺の膝の上で眠ってしまった。
俺が頭を優しく撫でるとミリアは嬉しそうに身体を預けてくる。起こさないように俺が楽な姿勢にミリアの位置をずらすと「……おやすみ」と呟いた。
コン、コンコン、コン。
少しすると内側から鍵が開く音がした。誰も居ないか周囲を確認するとそっとドアをスライドすると素早く中に入りドアを閉めた。
「……はぁ、それで何かな」
俺は相手が先生であるにも関わらずタメ口で訊いた。
「ほんっとうに申し訳ないッス……」
開口一番俺にしがみつくとそう言ってきた。
「だから良いって、あれは元々俺の不注意が招いた事故なんだから……」
俺が窘めるようにそう言うと「いえ、ユキ様の不始末を整えるのが私の仕事ッスから」と言われ俺はなんとも不甲斐ない気持ちになってしまった。
今更だがこの先生……っていうかこの娘は俺の傍付きだ。腐っても王族なんだよな……。一応カイやサラ姉さんが居るからそれほど心配はないが先生として見張っていれば変なことをする輩はいないだろう。彼女、始めは俺に怒るとか注意することにすごく抵抗を持っていたけど、いつの間にかなんだか怒るのが普通になってしまっている。慣れって恐いな。
「それでクオリアはどうする? 俺は実家の方に帰るけど」
「私も仕事が終わり次第そちらに帰るッス……んん。ではな、私は行くよ」
学校での口調に戻るとクオリアは視聴覚室を後にした。俺はクオリアと居たところを誰かに見られてはいけないので少しだけここに残ると学校を後にした。
――他の生徒に見つからないように裏門から出ると俺を待っていたのかミリアが飛びついてきた。
「おにいさまー!」
「おおっとっと。わざわざ待ってたのか」
いきなり飛びついてくるものだから体勢を崩しかけた。
「リア姉とおはなししてたの?」
「よく分かるね」
「ミリアはおにいさまのことなら、なんでも分かるの!」
俺は「そうかそうか」と言いながら頭を撫でるとミリアは「えへへ」といいながら頬を赤らめた。
「じゃ、帰ろうか」
「うん!」
俺が左手を差し出すと飛びつくようにミリアは右手で握ってきた。ミリアの手を優しく握ると裏の駐馬場へ歩き出した。
馬車の前にミリアの執事が立っていた。
「お疲れ様です。クロさん」
「いえいえ、ユキ様はお気になさらず」
クロさんは手慣れた様子で馬車の扉を開けた。俺はミリアの手を持ったままエスコートし馬車に乗せた。続いて俺も手すりを使い乗り込んだ。クロさんが扉を閉めると御者となるべく手綱を握った。
馬車が進み出すとミリアが俺の膝の上に乗ってきた。
「えいっ。ふふふ」
ミリアは俺の顔を見上げると可愛らしい笑みを零した。
家に着くまでの間ミリアはずっと「今日はね、今日ね」「ミリアも、ミリアも!」とはしゃいでいた。ミリアと話すのはもちろん楽しいが、こうもずっと話しているとさすがに疲れてきたのか家に着く前にミリアは俺の膝の上で眠ってしまった。
俺が頭を優しく撫でるとミリアは嬉しそうに身体を預けてくる。起こさないように俺が楽な姿勢にミリアの位置をずらすと「……おやすみ」と呟いた。
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