三題噺(ホラー)

転香 李夢琉

文字の大きさ
上 下
3 / 39

『安眠と言う名の凶器』

しおりを挟む
お題 枕 剣 キーボード

 ……俺は今勝負を挑んだ。勝てるかは分からない……なぜなら
「えいっ!」
 ボフッ!!
「ぐへぇ……」
 俺は後ろに倒された。今俺に当たったのは……『枕』だ。
 この枕ちょー痛ぇんだよ! これほんとに枕なの?! て、思うくらい
 そしてその枕を投げた張本人がまた枕を持って、布団の上に倒れている俺の足下に仁王立ちになっている。
「おい? それ痛ぇんだよ? また投げる気なの?」
 俺は極めて優しい(怯えた)口調で制止を促した――がダメだったようだ。勢いよく枕を振り下ろされた。その直後俺は目を覚ました。
「……夢かぁー、マジで死んだかと思ったー」
 先程までのは夢だったようだ。安堵からか、後ろに倒れようとした――がそうはいかなかった。なにせ後ろには背もたれがあるからだ。俺はそのまま背伸びをして目の前の俺専用のゲーミングPCを見た。
 キーボードがカラフルに輝いている。同じくマウスも、赤、黄、緑、青……と。PCはスリープ状態に入っているので、部屋の光源はキーボードとマウスだけだ。それも少量のごく僅かな光。
 俺は自然と手を伸ばし、キーボードとマウスに手をあてた。するとPC画面に光が灯った。俺が寝る前(寝落ち前)にしていたゲームだ。案の定、モンスターに殺されてリスポーン位置に居た。俺は急いで持ち物を回収しに行くと大型のモンスターが何体か居た。俺はそこで逃げるはずもなく勇敢に立ち向かっていった。
「うぉぉぉ!! 俺の荷物返せぇぇぇ!!」
 そして見事に……返り討ちにされた。俺は一旦ゲームをセーブして、意識を現実世界へと戻す。部屋の電気をリモコンで点けると、パソコンの暗くなった画面に反射して後ろに何かの影があるのが見えた。俺は恐る恐る後ろを振り返ろうとしたその時、頭に強い衝撃が迸った。俺は反応できるはずもなく、椅子から転げ落ち地面へと倒れた。
 ガンッ!
 甲高い音と共に鈍い音も一瞬だが聞こえた。頬に冷たい床の感覚が伝わってくる中、段々と暖かくなってくる。液体のような物が頬を熱くさせ、感覚を狂わせていく。「グサッ!」となにかが刺さる音がしたが、俺はそれには気付かなかった。だが、視界に一瞬だけ、コンマ1秒だけそのなにかを捉えることが出来た。それで俺は悟った。
 あぁ、俺の頭に振り下ろされたのは「剣」のように硬く、切れ味のある「枕」だった……――
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。 スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

クトゥルフ・ミュージアム

招杜羅147
ホラー
本日はクトゥルフ・ミュージアムにご来館いただき、誠にありがとうございます。 当館では我々を魅了してやまない神々やその配下の、躍動感あふれる姿を捕らえ、展示しております。 各エリアの出口には展示品を更に楽しめるよう小冊子もご用意してありますので、併せてご利用くださいませ。 どうぞごゆっくりご観覧下さい。 ~3年前ほどに別サイトにに投稿した作品で、クラシカルな感じのクトゥルフ作品です。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

怖い話 が好きなヤマダさん

RERA
ホラー
怖い話集です。上から順番通りに読むのがオススメです。

ジャングルジム【意味が分かると怖い話】

怖狩村
ホラー
僕がまだ幼稚園の年少だった頃、同級生で仲良しだったOくんとよく遊んでいた。 僕の家は比較的に裕福で、Oくんの家は貧しそうで、 よく僕のおもちゃを欲しがることがあった。 そんなある日Oくんと幼稚園のジャングルジムで遊んでいた。 一番上までいくと結構な高さで、景色を眺めながら話をしていると、 ちょうど天気も良く温かかったせいか 僕は少しうとうとしてしまった。 近くで「オキロ・・」という声がしたような、、 その時「ドスン」という音が下からした。 見るとO君が下に落ちていて、 腕を押さえながら泣いていた。 O君は先生に、「あいつが押したから落ちた」と言ったらしい。 幸い普段から真面目だった僕のいうことを信じてもらえたが、 いまだにO君がなぜ落ちたのか なぜ僕のせいにしたのか、、 まったく分からない。 解説ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 近くで「オキロ」と言われたとあるが、本当は「オチロ」だったのでは? O君は僕を押そうとしてバランスを崩して落ちたのではないか、、、

ホラーの詰め合わせ

斧鳴燈火
ホラー
怖い話の短編集です

処理中です...