その恋心、反転します

その恋心、反転します

『おはよう、いまから君たちには僕の実験に付き合ってもらうよ。』
その言葉に、二人の女子高生は、心底恐怖した―


優希と南海は遊園地に来ていた。
「ああ、あそこか、もう何度もいったよ。彼氏が案外こういうとこ好きでさ。」
「うんうん、最近の男の子って案外こういうところ好きだよね。」
お互い彼氏を持つ二人。今日は二人の息抜きというか、女子会のつもりだったようだ。
だが、その直後に着ぐるみと握手をしたとき、二人は唐突な睡魔に襲われ意識を失った。目が覚めたらすでにこの状態。特に何かをされた様子はないが、それでも二人は怖くて怖くて仕方がなかった。

「いったい、私谷に何をしようってのよ…！」
優希のその質問に、男は答えることはなく、その代わりにいちまいの黒い紙を投げ捨てた。
恐る恐る二人が神の中を確認すると、そこには…


『セックスをしないと出られない部屋。試験版』
「ざけんな」
優希は恐怖を忘れ、与えられた紙をびりびりに引き裂いた。




『まーま。危害は加えないし、ちゃんとしてくれたら返すし、僕も行為の最中はいないし。セックスしてくれたら扉は勝手に開く仕組みになってるからさ。』
「アタシたちは女だ！おんなどうしがみたいのかよ！」
変態め！と、勇気が男の幻影に罵倒する。だが、
『違う違う！魔法のチェックがしたいだけさ。それも扉の開閉なんてもんじゃない。もっと根深い、感情のね。君らにはあさーく反転魔法をかけた。』
「…反転？」
『そう！そっちの子は静かでいいね！反転内容は君たちのお互いに対する恋愛感情の有無！もう少しで始まるから、そうしたら頑張ってね！』
男の声は一方的に消え失せた。

それから数分が経った。


「ううっ…優希ぃっ…」
「み、みないでよっ、何でっ、私っ、ドキドキしてっ…」
二人はすでに抱き合っていた。
反転魔法。突き詰めれば有無の逆転。恋愛感情がなければ生まれ、あれば消える。要するに惚れ薬の亜種といってもいいかもしれない。
お互いがお互いに、強制的に惚れてしまっているのだ。
「南海っ、見てるとドキドキしてきてっ…んちゅっ、ちゅるるっ！」
「んちゅっ、これは魔法のせいなんだからっ…んちゅうっ！んああっ！だめええっ！」
お互いがお互いの割れ目に手を伸ばしているが、南はすでに息も絶え絶えといった様子だ。

「んっ！みなみぃっ！ああんっ！」
「ゆうきっゆうきぃぃっ！だめぇぇっ！ふぁあっ、ちくびこすれてえっ！」
「アアンッ、これが貝合わせっ、んあっ、すごいっ、すごいぃっ！こんなのっ、わたしっ、だめなのにぃっ！」

強制的に互いに惚れてしまった二人は、いまだけは彼氏のことも忘れてお互いを求めあっていた。だが二人とも、本来同性愛者ではない。
それでも。
「んああっ！私っ！女同士でっ！ただのともだちなのにぃっ！ああんっ！イッチャうぅぅっ！」
「んああっ！私もっ…！ふぁああああああっ！」

そして、扉は開かれた。



『なるほど。本人たちは恥ずかしそうにしてたけど…うーん。こじんてきにはもっとためらいと恥じらいがほしかったかなー。まあいいや。』
この後正気に戻った二人がどれだけ赤面したかもつゆ知らず、男は微妙に納得いっていない顔で席を立った。