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不良筆頭と顧問

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翌日。
「ふ、ふざけるなっ!」
俺たちは頑張って森本の説得にあたっていた。かき氷連合会の本部である。だが今回ばかりは俺たちとしても気持ちが分かる。不良でも怖がるのだ。一般人が怖がるのは当たり前といえるだろう。かき氷を差し出しても、食べようとしない。食べもしないのに震えている。
かき氷連合会のなかでも、冬にかき氷を食べないものは存在する俺と徳川は冬でもかき氷を食べることによって、かき氷のもつ力強さを体に蓄え、力に変えてこれまでも力に変えてきたが、それでも、寒い日はかき氷の気分でない日もある。
そういう意味では、寒気が止まらない森本がかき氷を食べないことも仕方のないことかもしれない。溶けてしまってはもったいないので、見物に来ていた山崎と桜井におすそ分けした。どうやら、というかやはり森本を心配してきてくれたらしい。
すると、足音が聞こえてくる。
「みんな、静かに、来たぞ。」
皆がしんと静まり返る。がラララと音が鳴って、郷田が現れた。
「おっす、邪魔するぞ。ってお前ら、本当にかき氷つくってんのか、あはっは!」
郷田は何かがツボにはまったらしい。とりあえず、
「氷はまだまだたくさんありますが、たべますか?」
俺は、郷田のためにかき氷を作ることにした。


「なんというか、不良の巣窟というよりも、文化祭の教室って感じだな。」
そんなことを言いながらかき氷を食べる郷田。どうやらレモン味が気に入ったらしい。よかったよかった。
郷田は森本をはじめとした、一般人の方を向く。
「で、お前たちは一般の連中か。悪いな、別に怖がらせるつもりもないんだが」
そんなことを言っても、普通は今の森本のように何も話せず固まってしまうのが普通だ。だから、
「初めまして、山崎かれんでーす」
「あ、どうも、桜井ほのかです。」
こんな風に普通の挨拶をしてしまう2人はある意味異常なのかもしれない。
だが、一番驚いていたのは郷田のようだ。
「お、おお。不良の俺に対してビビらねえとは。昨日のグラタンのとこの子といい、この学校の女子ってのはすげえなあ。3年は女子をなかなか見かけなかったし、俺にこんな風に話しかけてくるやつはいなかったが、とんでもないのがたくさんいるじゃねえか。」
やはり、うちの女子たちは異常に度胸があるようだ。
あろうことか、山崎が郷田に質問を始める。
「郷田先輩。」
「なっ!」
郷田が驚く、先輩呼びに慣れていないようだ。
「郷田先輩はなんで不良になろうと思ったんですか?」
いきなりとんでもない質問をぶつけた。下手をすれば怒らせてしまいかねない、そんな問題をかき集めた質問だ。
だが、郷田は怒るでもなく、困惑した表情をしている。
「え、ええと、喧嘩して、強くって、いつのまにか」
ああ、割とありがちな答えだった。郷田が照れている。
「ふふ、郷田先輩、かわいいですね。」
「か、かわいいっ!?」
そういってくるのは桜井ほのかだ。彼女はかわいいを誉め言葉として使っているようだが、かわいいと言われるのを嫌う男は多い。しかも今回は俺の眼から見てもかわいいというよりいかつい大男だ。こいつのかわいいの定義が本当に気になるところだ。
「うん、そういうことを言われたのははじめてだ、ああ、まったく。」
あの郷田が押されている。いつも女子を近くに配置しておけば郷田は大人しくなるのではなかろうか。
ちなみに森本や山崎の方を見ると、何やら不機嫌そうだった。郷田を怖がるのはいいとしても、せめて大人しくしていてくれと思う俺である。
だが、そんな森本に郷田は気づいてしまう。不機嫌な森本、またこの前みたく爆発してしまうのだろうか。
だが、郷田はすべてを分かっていたようで。
「ああ、すまんな。すっかり忘れていた。君がこいつらにオセロを教えてる森本だな。大変だと思うが頑張ってくれ、今日はそれだけの用事だ、そ、それじゃあ!」
そういうと、なぜか急いでこの空間から立ち去っていく郷田。正直よくわからないが、女子たちが原因なのは間違いない。ふと、二人を見やる。
「ねえ、ほのかはああいう人がタイプなの?私はかわいくないの?」
「うーん、かれんちゃんのかわいくないところもたくさん知ってるからなぁ。」
「へ、へぇーそうなんだ。」
「でも」
「ん?」
「それでもこれからもずっと、ずっと一緒にいたいとおもうなぁ」
「…ず、ずっと?」
「うん、ずっとだからそんな心配そうな顔しなくても大丈夫だよ。」
「べ、別に不安そうな顔なんてしてないしっ!…でも、そ、そっか、ってなんで頭なでるのっ//」
「んーなんとなく?ふふっ。今のかれんちゃん、すっごくかわいい」

うん、相変わらず仲がいい。こういう素直さが郷田にも負けない強い心を生むのだろう。


すると、森本が小さな声でつぶやいた。普通の人なら聞き逃すところだが、俺は耳がいいので、その内容を聞いてしまった。
「あの郷田ってやつ、これ以上俺と山崎の中に入ってみろ、ぶんなぐってやる。」
…やめてくれ、間違いなく殺される。俺たちが。


「そういえば、お前らに教えるのはまあいいとしても、チームグラタン、だっけか?あいつらはいいのか?まあこれ以上人数が増えると俺の負担が増えるからめんどいんだが。」
森本は俺たちのことをきにしてくれているようだ。だが問題ない。
「ああ、多分向こうには東雲がいるからな。あいつが特に何もしてないってことはどうにでもなる自信があるんだろう。」
あいつの頭がいいのはみんなの知るところだ。だから誰も心配などしていない。大体いつもこういうときは美味しいところを見事に持っていってる気がする。



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