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初対局

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すごいな、優斗は。どうやってこんな情報を見つけたんだろう。だが、ほかの連中も目星をつけてたらしいし、この森本がオセロできるということはそこそこ有名だったのかもしれないな。ありがたいことに変わりはないが。
見ると、森本が死んだような眼をしている。どうしたのだろうか、気分でも悪いのだろうか。
「森本、大丈夫か?」
すると、森本は死にそうな声でこう答えた。
「…大丈夫じゃない。まず変な運ばれ方して酔った。それにみんなにお姫様抱っこ見られた。…昨日はあんなにいい日だったのに。肉体と精神が同時に致命傷を受けている感じだ。」
「そうか!しばらく休むといい。今日の午前の授業は自習だしな!」
よくわからんが、少し休ませた方がいいようだ。とりあえず歓迎としてかき氷を作ってやることにする。冷凍庫で作っておいた氷を機械にセットして、回す。
店のものにくらべたらどうしようもなく出来は悪いが、こういうがりがりしたかき氷も悪くないだろう。鮮やかなレモンをかけて完成だ。


森本は、いきなりかき氷が出たことに驚いているようだが、やはり、かき氷の魅力には抗えないらしい。夢中で食べ進めていく。よかった。やはりレモンが好みのようだ。
森本はかき氷の完食後、冷静さを取り戻してきたようだ。言葉にも熱が入る。元気になって本当に良かった。
「いや、なんで俺が連れてこられてんだよ!おかしいだろ!」


どうやら森本は先週の俺の話を忘れてしまっているらしい。もう一度説明する。

「その説明は知ってんだよ!なんで俺なんだ!」
どうやら森本はおかしくなってしまったようだが、仕方がない。
「お前がクラスで一番オセロが強いらしい。弟の調査結果だ!」
「どんな調査をしてそんな結論を出したんだ!お前の弟は!」
そういわれても俺にはまったく分からないことだ。だが賢い弟のことだ。信じるに値する理由があるはずだ。
「それは弟に今夜にでも聞いておく。だからとりあえず今は、俺にオセロをおしえてくれ!」
こうして、俺の人生をひっくり返す、俺のオセロ対局が始まった。オセロだけに。










やはりというか、当然というか、やっぱり俺の勝てる相手ではなかった。俺はかっこいい黒を選んだのだが、目の前も、盤上も、真っ白になっている。勝てない相手にも、最後まであきらめなかったが、それでも負けるというのは悲しいものである。
見ると、森本の方も、勝利に対して表情の変わる様子は見られない。勝っても油断しない。これでこそ強者というものだ。こいつは本物だ。味方になってくれて本当に良かった。





森本side

(いや、まあ、分かってはいたが、)
自分が強いか弱いか分からないって言われたときは、まあそんなもんかと思ったが、正直言って弱いとか以前の問題だ。駒をひっくり返すのもしょっちゅう斜めを忘れるし、何より一番やべぇこいつって思ったのは、
「あれ、いま俺って黒だっけ?」
と聞かれたことだ。今であれ後であれ、決着までお前は黒だよ!真っ黒だ!馬鹿だ馬鹿だと思っていたが俺はこいつの認識を改めなければならない。こいつは、大馬鹿だ!
(それにしてもどうする?この程度なら正直おれでもなんとかなるぞ。)
こいつの弟がどうやって調べたかは知らないが、まあ、普通のやつよりは強いとは思う。まあ、ちょっとだけだが。正直小学生にオセロで勝負するよりもレベルが低い。こんなことで不良たちに貸しを作れるなら案外いいことかもしれない。
そう考えた俺は、答えを出した。
「わかったよ。俺がお前らを強くしてやる。その代わり、ちゃんと言うこと聞けよ!」
「ああ!ありがとう!」
元気だけはいいやつだ。さてさて、どう使ってやろうかな。

森本勇がこの言葉を後悔するまで、そう時間はかからなかった。そりゃそうだ。






そのころの2年c組では不良共が、らしくなく、腹の探り合いをしていた。不良は格好つけるのが好きなので、椅子に偉そうに腰掛け、オブラートに包みつつ話をしているつもりのようだ。そうはいっても所詮は不良。実際は調理室から借りてきたラップを手に取りながら、格好つけた話を展開している。どうやら武藤の手伝いでから揚げに下味をつけているようだ。平和そうな雰囲気を醸し出しつつも、あくまでも不良たちは本気である。
「そういえば、お前はどうやって森本の実力を見抜いたんだ。」
「ああ、俺か、俺は弟に話をしたら、探ってくれるって言ったんだ。」
「本当か、実は俺もだ。」
「俺も!」
「俺も俺も!」
腹の探り合いどころか自分から個人情報をどんどん流出していく。プライバシーが川ならばとっくに大氾濫といったところだろう。どいつもこいつも弟に頼りすぎていることがよくわかる話の内容。一見情けない不良のほほえましい話のようだが、実はこれ、







伏線です。お忘れなきよう。
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