ゴーラーの不良たちがオセラーになったところで、ねえ？

平和な不良生活は、こうして終わる。

俺の名前は加賀谷直人（かがや　なおと）。高校2年生の不良であり、とあるチームの副総長をしている。そんな俺が所属する氷室高校は、やっぱり不良が多いことで有名だ。どれくらい有名かというと全校生徒の３人に１人ほど不良がいるほどである。それでいてみんな馬鹿かといえばそんなことはなく、ちゃんとした大学に行くやつもそこそこいる、不良校からは不良校の面汚しといわれ、普通の高校からは怖がられる。そんな中途半端でごちゃごちゃしたそんな高校だ。今日も俺は、硬派な不良として、ものの見事に硬派、硬派、と掛け声をかけながらグラウンドでランニングをしていた。毎日の日課である。もちろんストレッチもした。いくら硬派だからといっても、体は柔らかいほうがいいしな。うん、今日も頑張った。
いい汗をかいた俺は校舎に戻る。だが、教室に入った俺は違和感に気づいた。今日はなぜかほかの不良たちの様子がおかしい。いつもならこの時間は伊藤と佐藤がガンを飛ばしあっているはずの時間帯だ。そういえば最近かつあげにハマりだした武藤の姿も見えない。危険な仕事を始めたとか言っていた加藤もなぜか今は教室で大人しく机に突っ伏している。一体どうしたのだろうか。俺は、加藤に聞いてみた。
「おい加藤、今日はどう考えても不良たちの様子がおかしい。一体どうしたんだ。」
「ああ、加賀谷か。お前今日遅刻してきたんだもんな。知らねえなら仕方ない。実は今日の朝礼であの、郷田がこの学校に来たことが分かった。」
「なに！あの郷田が！？なるほど、そういうことだったのか。」
俺はその一言で、すべてを理解した。
郷田といえばこの辺りを占める最強の不良だ。俺たちの一つ上の三年で、その恐ろしさといえば恐ろしすぎて誰も話すことができないらしい。誰も話すことができないので俺も聞いたことがない。…それなのに恐ろしさが伝わっているのはいったいどういうことだろうか。まあいい。
「だから今日は３年の教室が大人しいのか。二年と三年の激突が起きてないのもそういうことか、合点がいったぜ」
そう感心したおれだが、やはり加藤は恐怖に飲み込まれているようだ。だが無理もない。郷田という男は、一人で暴走族を全滅させると言われているほどだ。俺は加藤に声をかける。
「安心しろよ。あいつは三年、俺らは二年だ。俺らにどうこうはしてこねえよ。」
俺がそう慰めるが、加藤の言葉に、俺は血の気が引いていった。
「それが、あいつが、不良たちは、放課後みんな校庭に集まれって！来なければぶち殺すって！」
こうして、俺は、いや俺たちは放課後に校庭に行くか、放課後までに不良をやめるかの２択を迫られることになった。