男子校、強制共学化

氷室ゆうり

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美化委員の場合。前編

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さて、唐突ではあるがそろそろ学園では文化祭が近い。当然一大イベントに向けて様々なクラスのわちゃわちゃを描く必要も出てくる。…やることはほとんど変わらないが。
そんなわけで今回は第一章のラスト。この話に章で区切るほどの重厚なストーリーがあるとはまるで思えないが仕方がない。文化祭に向けてをかくために、これまでを第一章と決めつける必要が出てきたんだからしょうがない。
さあ、そんなわけで委員会連合会や生徒総会を終えればいよいよ文化祭。文化再編がそろそろ幕を開ける。だがこのままぶった切ってしまうと問題となるキャラが一人。
どうしてもここで登場させておかねばならない組織がある。人間がいる。キャラが特別濃いわけではないが、それでも第二章に入る前に、こいつだけは。
そう、美化委員の旭川について語らねばなるまい。



「正直、保健委員があれば美化委員なんていらないと思うんだよ。俺は。」
「もう、女の子が俺なんて使ったらめっ、ですよ?」
「何が『めっ』だ。お前だってこの前まで男だったくせに。」
「一年たっても未だに男性意識が強いセンパイの方がどうかしてますよ。ためらいとか恥じらいはないんですか?」
「あるに決まってるだろ。あるけど表には出さないの。」
「もう、3年の女体化ランキング第二位でしょ?卒業して男に戻ったら非難殺到ですよ?ほら、やめてくれって嘆願書がこんなに。」
「破り捨てとけ。」
「いやです。一枚は僕が書いたんで。」
「おい」
癖の強い後輩の小言を受け流し、あくびをかみしめるのは、一人のいい加減そうな女。髪の毛も女にしてはいいかげんで寝癖がついている。きっとどこかで昼寝をしていたのだろう。頑張って手で治そうとしているがどう考えても櫛を持ってきた方が早い。というかそんなに面倒なら髪を切ってしまえばいい。
ここまで伸びてしまったのも何もしなかったら伸びてただけで、別に伸ばしたかったわけでもない。
美化委員らしさのかけらもない緩み切った人間である。こいつに語るだけの何があるというのか。


だが、腐っても第一部最後の主役。取り上げられるにはそれなりの理由がある。
美化委員、それは本来、図書委員などと同じく委員会では地味な部類に入り、大して影響力も持たない―



ハズだった。
現実は少しだけ違って、去年から美化委員は台風の目として注目されることになった。権力は相変わらずほとんどない。だが一人の男、いや、女によって強制的に影響力を持ち始めた。名前は旭川水樹(あさひかわみずき)。3年生で、現、美化委員長だ。
一応言っておくと、旭川が何かをしたわけではない。トラブルを起こすタイプでもない。ただ、女体化した直後に美化委員に入っただけだ。


女体化ランキング2位という、異常なまでの美貌をひっさげて。

こうなると男子どもは単純で、ドンドン人気は上がっていく。もともとかっこいい系で、イケメンランキングに入る位のルックスは持ち合わせていたが、女体化した後も自分は男だとクールにふるまうその姿が、ギャップ萌えと美人、クール系の票をかっさらったといわれている。それもツンデレとかではなく、あまりにも自由にふるまう。もはやこれは一種のカリスマのようなものだ。
一人の人気が学校を動かす。それがありうるのが女体化の怖いところである。
「いいじゃねえか。そもそも勝手に生まれてきた性別を変える方がおかしいんだ。別に美少女になりたかったわけでもないし、元の姿でも案外モテるしな。やっぱ俺はあれくらいの距離感がいいわ。」
「でも、女の身体って気持ちいいって聞きますよ?」
「否定はしないよ。前に写真部に頼まれてそういうこともしたけど。でも俺はやっぱり攻める方が向いてるし、あれはちょっとキャラがぶれたというか…」
そういって、旭川は思い出すように目を閉じた。



これは、去年の話。旭川が2年で、女体化して少しだけたったある日のこと。

「俺にアダルトビデオの撮影、ねえ。お前らにはいろいろ世話になってるし、見返りをもらえるならべつにいーよ。」
「ああ、女体化男子の中で好きなやつの情報をくれてやろう。他のやつらのアダルトビデオをやってもいいぞ。野球部とかどうだ?」
「そのあたりは終わった後だな。で、どうしてほしいんだ?オナニーか?それとも百合か。男優を連れてくるのか?」
「うーん、とりあえずオナニーと男優を用意するつもりだ。女体化百合は意外と人気が伸びなくてな。で、どうする?男優の好みだってお前の意見を反映させるぞ?」
「まじか、そりゃ俺も臭いやつは嫌だしな。エントリーシートを見せてくれ。俺の好みで決めていいんだろ?」
「ああ、この中の誰でもいいから、よろしく頼む。」
瑞樹はある程度の物色の後、一人の男を選んだ。
「ん、じゃあ、こいつで。」
「おお、なんだかんだで女になったからか?随分面食いじゃないか。いや、面食いというか。かわいい系を選ぶのは少し意外だったぞ?」
「まあな。男にせよ女にせよ。どうせなら美形がいいだろ。抵抗感まで考えた結果だ。」
そうして旭川が選んだ一年は、おどおどした様子の一年だった。

「黒田か。かわいい顔してるな。正直女にも見える。男モードでも普通に抱けそうだ。」
「あ、あの、おねがいします。」
「おう、好きに触ってくれていいぞ。たくさん気持ちよくしてやる。」
それは女のセリフではないが、その時の旭川は黒田がきゅんとするほどかっこよかった。


「まずはオナニーだ。黒田に見せつけるようにやってくれ。」
「そういわれるとちょっと恥ずかしいな…」
「おお!クール系美少女のためらいの表情!いいぞ!もっともっと!」
「お前も美少女だろうが。ったく、じゃあ、触るぞ…あっ、ああっ…」
水樹は、優しいタッチで胸を触り始めた。女慣れしている分自分の体をあまりいじっていなかったらしく、反応は実に初々しい。
「…あっ、これっ、なかなか気持ちいいな、ははっ…あっ、ふぁあっ…黒田…みてるか?・・っああっ」
「見、見てますっ、センパイ、す、すごいです。」
現代、図書委員と美化委員は共通点が多い。活動も権力も地味なくせに一人の人間が絶大な知名度を誇る。だが、少なくとも当時は、二つの委員会の関係性は普通であった。
そして同じような境遇の二人。タイプは違えど美形同士。案外あっさりと打ち解けたのである。

「ふぁあっ、ほ、ほら、揉んでみろよ。んあっ、ああんっ、がっつかなくていいからっ」
「で、でも、初めてで…女の人の胸揉むのも、触るのも…」
そりゃそうだろうと旭川は思う。それと同時に、こいつの初めてが自分でいいのかと、若干の不安をいだく。
(ま、まあ。喜んでるし、興奮してくれてるみたいだからいいけどな…少しサービスしてやるか。)
「ああんっ、こ、こっちも触っていいぞ。く、クリトリスだ…ひゃああんっ、ふぁあんっ」
「せ、せんぱい、僕…」
「ほら、大丈夫だから、触ってみろよ…ああん、あんっ」
たどたどしく、不慣れな手つきでも、それゆえに優れていることもある。
快感が予測できず、不意にやってくるのだ。
「はあん…う、うまいぞっ、もっとっ、もう挿れてもいいから…」
こんな感じで、あくまでもリードは保ったまま、黒田の初体験を奪ったのである。



「こ、これはっ…気持ちいいな…あんっ、う、動き早いっ、ちょっとゆっくりっ、はああん」
「む、むりですっ、腰が止まらなくてっ…ご、ごめんなさいっ、でもっ、気持ちよくて止まらないんです…」
「ふぁ…は、はは・・・んあっ、ならっ、いいからっ、はあっ、もっと動いていいから…ひゃあっ」
「できるだけやさしくしますから、せんぱいがきもちよくなれるようにがんばりますからっ」
「ああんっ、俺もうダメだっ、そろそろイキそうっ、んあああああああっ!」

これが後の図書委員のカリスマ、黒田の初体験である。
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