学問式恋愛術

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入学式からの出来事

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 朝起きて、目覚めの良かった漆原は、電子ウォッチを着けて今日のスケジュールを見た。入学式なので、殆どの学校とやることは変わりはしない。しかし、午後に行われる寮の相方の決定、各部活の懇親会などがとても重要なのはわかっていた。そこでほぼ、有意義に生きれるか別れるからだ。

「もうシャワーも浴びたし、そろそろ行くか。

まぁ、開いてなくても待ってればいいさ。」
そう言って持ち物に怠りがないかを確認してから部屋を出た。
 電子ウォッチは、必ず敷地内ではしなければならない必須アイテムである。これが無ければ、授業に参加できない事にもなる上、寮の部屋に入ることもできない。もちろん、交通機関やショッピングもすることが不可能である。それほど大切なものなのである。

 学園の正門の前では、8時前だというのに人だかりが出来ていた。いるのはほぼ男ばかり。入学式前までは男子が各部屋に行き、責任を持って住みやすいようにするのが伝統らしい。逆に言えば、女子は共同生活をする男子をわかっているという特権がある。何とも儚い...。そう思いつつ振り返ると 凛々しくも美しい女性が目の前に現れた。彼女もスカーフの色からして1年だと悟った。彼女はこちらを向いて微笑みかけたが、すぐに何処かに行ってしまった。
「あの子、俺に笑ったのか?それとも、別の男かな?」などと思いつつも、大掛かりな人の中でそれを確かめるのは疲労と時間の無駄だと思った。

 入学式も無事に終わり、講堂で一息ついている一年生たち。周りを見渡すと、まだ男女間での仲が進展しているわけでなく、むしろ部活動が同じ人たちが固まっているという見方ができる。

「何してんだお前。こんだけ居るのに話さないともったいないぞ?」

そう俺に話してきたのは、大北良輔だった。彼は俺と同じく世代別代表であり、共にサッカー部特待生。かなり面倒見が良くて、カッコいい。良輔は、俺のことをかっこいいとも言ってくれる、もしかしたら優しいやつなのかもしれない。

「あー、良輔か。見ろよこの人を。どう考えたって場違いだ。」
「大丈夫だ、世代別代表が相手なんだぜ?嫁さんの1人や2人楽勝だろ??」

根本的に何かが違う...。肩書きだけなら周りもすごいぞおい。

ホームルームが始まり、担任がやってきた。どうやら女のようなんだ。
「おい、俺らの担任かなり美人みたいだぞ。スタイルも良くて可愛くてさ」
「マジ?普通の学校なら狙い目じゃんか」
とまぁ、男子は妄想が爆発してしまうのだが、目の前に現れた瞬間、興奮してしまったのである。

「今日から三年間、君たちの担任をやらせていただく、塔矢雫です。...」

圧倒するスタイル、出るところは出て、締まるべきところは引き締まっている。これぞ理想体型。

「うん?そこ。私を見てなんだ。何かあるのか?」
「い、いえ、何もありません。」

俺と良輔はあっさり指摘されてしまった。2人して恥ずかしくもなった。

「とまぁ、自己紹介諸々はこの辺にしといて、今から共同生活を共にするパートナーを発表したいと思う。」

俺はこの時疑問に残ることがあった。確かに共同生活を共にするのはわかったが、最初に異性関係を持ったものってどういうことだ。

「先生、共に過ごす異性は自分たちで選ぶことができないんですか?」
「出来ません。君たちの着けている電子ウォッチから発信される情報をもとに、相性を考えて決めたのものですから」
「じゃ、他の女の子や男の子を好きになり、付き合ったりするのは?」
「ダメです。もしそれが発覚したら、停学ですかね。」

なんだそりゃ、まるで政略結婚みたいじゃないか。恋愛の自由というのが、まるでない。

「質問はないな、先ほどメールに相手の名前と寮の部屋が記載された。部活のオリエンテーションが終わったらすぐに行くように、以上だ。」

 すぐに移動し、部室への案内がされた。
俺たち一年は16人。サッカー部は伝統なのかスカウトされた16人しか入部が許されない。練習試合でも、プロのチームや社会人とやることもある。大体の部活の一学年の最大人数は20人前後。少数精鋭である。

「これから三年間、よろしくお願いします。」

気の抜けた挨拶するものも、しっかり張った声を出す者もいたが、この挨拶で先輩たちに火が点いた。

「おい、おんどれ。そんな挨拶で全国取れると思ってんのか。」

そんな檄を飛ばしたのは、明らかに主将であった。

「これから三年間よろしくだと。おんどれ、わいらから本気でレギュラー取るつもりで来ないか。
そんなんや、東京都すら勝ち抜けへん。おんどれの覚悟を持って来い。」
主将、荒金政伸の初めての挨拶にして、自己紹介であった。

「おい、宗馬、大北。」
「!?はいっ!」
「お前ら、世代別代表だから調子こいてたら沈めんぞ。ここでは肩書きなんて皆無だ。一年と三年、それだけだ。だが、練習だろうが試合同然で臨め。それがここでのやり方だ。」

「なら。遠慮なくやらせていただきます。」

2人の目と声は、信念そのものを感じるようなものであった。

 オリエンテーションも無事に終わり部屋に戻る漆原。

「しかし顔合わせたらびっくりだよ。先輩達は雑誌で見るような人たちばかりだけど、タメでは札幌の深海、大阪の眉斑兄弟、京都の鮫島、福岡の神楽、横浜の大石がいるんだからよ。」

世代別常連だけでなく、中体連でも有名な選手が数多く集まってきた。この面子で優勝出来ないことはないと断言してもいいくらいだ。

取り敢えず部屋に戻ると、灯りが点いてるのがわかった。恐らく同居人がすぐにいるだろうというのがわかった。

「えっと、俺の同居人は栢森千奈さんか。どんな人なんやろか、あんま高望みしたらあかんよな。」

そう思い恐る恐る部屋に戻った。ただ、鍵は開いているにも関わらず、反応がない。荷物もお互いそのままだし、取り敢えず着替えを出して休息をしようとした時

「ふぇ~~、お風呂よかった。部活も大変そうだし明日も頑張ろうー!」

と、バスルームから出てきた女の人がキッチンの方までやってくる。荷物の整理をしようとした時タオル一枚巻いてきた彼女と目が合った。相当動揺が走った。

「...!!! な、なんで男子がここにーー!!見ないでよ!!」

俺に向かって言ってきたのなら、ある意味その通りの話なんだが、ここでの生活はそういうものである。

「取り敢えず服を着てください。同居人なんでいろいろ話したいこともあるので。」
「え、同居人...。あ、そっか!あなたが宗馬漆原君ね!」
「そうだよ。お願いだから服を着てくれ」

同居人との初対面は、最悪なものであった。
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