私の日常

林原なぎさ

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*参加しまして(後編)

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『お願いです!キスだけでいいんで、させて下さい!!』


いやいやいや!おかしい!!

なぜその発想になる!?

とりあえず、断固拒否だ!



「ムリです!ごめんなさい!」


慌てて村田先生から離れ、距離を取るが、扉は村田先生の向こう側でここは3階だ。


「お願いします!キスさえさせて頂ければ、綺麗さっぱり西園寺さんの事は諦めます。」


いや、おかしい!

何でちゅーしなければならないのだ!いやだ!


咲子さんや祈莉ちゃんの言葉を思い出す。


『歩ちゃんはひとりにならない方がいいわね。』

『真っ直ぐお家に帰るんだよ!!』


人間観察力の高いおふたりは、きっと村田先生の気持ちに気付いていたのだ。


碧も…もしかしたら、気付いていたのかも、しれない。

碧のあの微妙な態度やしかめっ面をした理由が、ここに隠されているのならば、頷ける。


秀一さん父親似の碧なら気付いていてもなんら不思議は無い。

そして…多分、秀一さんも気付いたので、私をひとりで学校に行かせたくはなかったのだ。


こんな状況になったのは、何の疑問も抱かずほいほいついて来た私が悪い。

だからといって、ちゅーも出来ない。



どうしよう…っ!


村田先生との距離があと少しのところで、救世主が現れた。


「村田先生!どこですかー?」


「おかしいわぁ。この辺にいたみたいなんだけども…。」


クラスのお母様方が村田先生を探しに来たようで、さすがの先生も仕方ないと判断したのだろう。

そのまま私の方を振り返らず、音楽室から出て行った。



…助かったぁぁ。


小躍りしたいのを我慢し、私も誰にも見られていない事を確認して、素早く音楽室から出る。


3階から校門前まで全力疾走したので、息が乱れた。


危なかったのだ。

暫く学校行事に参加するのは、よそう。

心に誓いゆっくりお家に帰る為、再び歩き出そうとすると。




秀一さんがいた。


車で迎えに来てくれたみたいだ。


帰宅は夜のはずだが…そんなことはどうでも良い。

まだ会えるとは思っていなかった秀一さんに会えて嬉しくなった私は、車内にいる秀一さんに勢いよく抱き着いた。

彼もまた、そんな私を黙って抱きしめ返してくれた。


…あぁ。腕の中にいるだけで安心する。


秀一さんとは普通の恋愛では無くて、初めての男性ひとというだけで身体の関係を持ったので、この人との相性が良い、悪いなどの一般的な知識や経験も無かった。

しかし今日、こうして触れ合うのはもちろん、キスも身体を繋げる行為も駄目なのだと思い知らされた。



いつもと違う私に気付いてか、秀一さんは両手で私の顔を包み込んで、触れるだけの口付けを繰り返す。

ちゅ、ちゅ…と短いキスでは足りなくなった様で。

いつもみたいに、深いキスに変わる。

出張へと出掛ける前にキスしたのを最後に、していなかったので、息が苦しくなるまで離してくれない。

呼吸がもう出来ない…と思うところで、やっと離れてくれるが、再び深いキスへ。

何度か繰り返し、満足した彼は。


「何もされてないんだろうな?」


ぎゅーっと私を抱きしめながら聞いてくる。

自惚れかもしれないが、心配とちょっとのヤキモチを妬いているのかもしれない。


なんだか嬉しい気持ちになる。


「…大丈夫ですよ。私には…秀一さんだけですから。」


抱き着いたまま、安心してもらえる様に笑顔を向ける。

そのまま押し倒され、えっちな気分になってしまう様なべろちゅーをされた。


今夜は秀一さんとずっといられるのだ。

私からお誘いしてみても、いいだろうか…。


そんなえっちなコト考えながら、秀一さんからの口付けを受け入れる。



秀一さんと結婚したい、と思っていなかったのは事実だが、今となっては結婚して良かったと思える。







その後、村田先生が私に接触してくることは無かった。
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