私の日常-それぞれの-

林原なぎさ

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愛歌から見たお話

なんだって

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歩と結婚した事で、自然と会う事が増えた西園寺先輩。


私や湊音には普通に話し掛けてきたりしてくれるが、最低限の会話のみ。


歩といる時の様な意地の悪い表情も、和かに笑う顔も、もちろん向けられる訳が無い。


やはり歩は特別なのだ。


相変わらず歩にべったり張り付く様子に未だに驚きつつも、歩の事が大好きなのだとわかる。


いつもこんな感じだと言うのに歩には、多分半分程しか伝わっていない。


それでも歩と西園寺先輩は側から見ても、分かり易い程のらぶらぶ夫婦だ。






歩と西園寺先輩の第一子として誕生した碧は4歳になり、今ではいろいろ話をしてくれる。


今日も何かお喋りしたいようで。


その証拠に、ソファに座る私の横に碧はわざわざやって来た。


「これ。」


薔薇の花を一本、私に手渡して、受け取ってほしそうな顔だ。


突然何事だと思ったが、私にくれるという碧にありがとう、と言って受け取った。


「お母さんも、わらってた。」


「歩が?」


こっくり頷く碧が、何を言いたいのかまだ理解出来なくて、聞いてみる。


「笑ってたっていつ?」


「きのう。」


昨日、といえば遼哉の2歳の誕生日だ。

母親になった歩からすると、我が子の誕生と成長を最も感じる日なのではないかと察する。


そりゃあ笑うに決まってる。


しかし、碧の口から驚くべき発言だ。


「お母さん。お父さんから、もらっててうれしそうだった。」


薔薇を貰ったのは歩で、贈ったのは西園寺先輩らしいコトが判明した。

そしてその花束を碧と遼哉の誕生日それぞれに贈っているらしい。


そういえば…湊音が、そんなような事を言っていたのを思い出した。


「あいをつたえる、お花なんだって。すきってキモチをつたえるお花だって。」


確かに薔薇は愛を伝える花言葉があるが、何故そんなコトを碧が知っているのか謎だ。


「なおさんが言ってた。」


その謎はすぐに解けた。

どうやら西園寺先輩と仲良しの宮園先輩から聞いたらしい。


「お父さんはお母さんがだいすきなんだって。だからおくるんだって。」


らぶらぶなんだって。


なんと、4歳の碧の目から見ても、両親は仲良しなようだ。


それよりも、毎回歩へ花束を贈る西園寺先輩に、どんだけ歩の事が大好きなんだ?と言いたくなる。



「らぶらぶだから。もうすぐくる、クリスマスはふたりだけで、すごさせてあげようって。」


なおくんが言ってた。

碧にナニを言っているんですか、と聞きたくなる。


「わたしも、お父さんはよろこぶとおもう。」


余計なお世話な気もするが、碧の言う通り、西園寺先輩が間違いなく喜ぶクリスマスプレゼントだ。


「だからね。おばあちゃんのおうちに、おとまりするって…あいかさん、いっしょに言ってくれる?」



可愛いおねだりに、もちろん頷く。

碧の言わんとしている事が理解出来て嬉しいのと、こんな良い子に育ったのか、と生んでもいないのに母親のような気持ちになる。


しかし、おばあちゃんには言っているのか碧に確認すると。


「おばあちゃんとおじいちゃんはいいよって言ってくれたの。」


どうやら電話でもう話はしているようだ。

本当にしっかりした子に成長したものだ、とまた母親のような気持ちになった。





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