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第29話 毒見をさせていないか

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「クリス、君の末の弟、リーンハルト君、とても面白い発想をするね」
「フェンリルが従魔契約したこと、いやクリス達兄弟が従魔契約したのがわかった気がする」
「クリス達家族はとても仲がいい。それにこの厳しい、恐ろしい樹海を大事にしているからウエストランド一族の結束が固いのがわかったかな」とラインハルト様、マクスウェル様、ジャレット様たちは僕が眠っているとき焚火の前でクリス兄様と話をしていたみたいだった。


僕は毎日体力をつけるために剣の素振りや走ったりしているけれど、足元の悪い樹海を一日中歩きまわったからか寝心地がいいとはいえないテントの中でもぐっすりと寝ていた。

「リーンハルト様、起きてください」とジョルジュが僕をゆすってくる。
「やだ、まだ眠たい」
「寝ぼけないでください、樹海の中ですよ」と言われて目が覚める。
「・・・・・・ジョルジュ、ありがとう。助かった」
「いつものことですから、早く身支度を整えましょう」と肩をすくめながらジョルジュが支度にとりかかる。
テントから出ると兄様たちはすでに起きて待っていた。
「ハルト、おはよう。頑張って起きられたね」とクリス兄様がパンとスープを手渡してくれた。


「ハルト、世界樹見て見ろ」とジェラ兄様が言うから、世界樹の方を見ると全体的にしなっていた葉が、一部分だけだけれど青々と元気になっている所があった。
「完全復活ではないけれど、昨日の回復ポーション効果があったということだ。お手柄だ」とジェラ兄様が僕の頭をワシャワシャとなでてくる。

「ジェラ兄様、僕、朝ご飯中です」スープの入っているカップがこぼれそうになる。
「おっと悪い、しっかり食べろよ。俺はこれから見回りに出るから」と離れていった。
僕がスープを飲みほしたところで、クリス兄様やカイル隊長が今日も回復ポーションを与えるか相談してきた。

前世で植物活力液のやりすぎはよくないと聞いたことがある。植物を育だてた経験ないから詳しいことわかんないなー。

「クリス兄様、人間と同じでポーションのあげすぎはよくない気がします。ちょっと別のこと試したいのですがアルラウネって戻ってきています?」
「いや、今日はまだ見ていないな。呼べば来ないかな」

試しに世界樹に向かってアルラウネいるーと呼ぶと
「よんだー?」とのんきそうな声で僕たちの目の前に飛んできた。
いたのかよ。
どっか行ったままだと思っていたよ。


世界樹の状態を聞くと昨日の回復ポーション(植物活力液もどき)が効いているそうだ。ただ、だいぶ弱っていたから時間はかかりそうともいう。
他の方法も試した方がよさそうだ。

植物に水は必要だから水の中にカイル隊長の魔力を入れてみたらどうだろうか?
上手くできなかったら、また考えればいいや。
「桶はないか。・・・・スープが入っていた鍋って使えますか」そばにいた隊員の一人が持ってきますと走っていき、鍋をもって戻ってきた。
「だれか鍋に水を入れてもらえませんか」とお願いしたら、別の隊員が鍋にたっぷり水を入れてくれたので、カイル隊長に水の中に魔力を注いでくれるようにお願いした。

質問したいだろうけれど何も聞かずにカイル隊長は魔力を注いでくれたが、今回、色は変わらなかった。
失敗かなとは思ったけれど、アルラウネに飲ませてみたら「これ、美味しいわ」と追加を要求されるのであげる。

今度は別のコップに水だけを入れたものをアルラウネに飲ませたところ、さっきの方がいいと一口飲んでやめてしまった。


「ハルト・・・・アルラウネに毒見させているように見えてしまうのだけれど、いいのか」
「僕たちでは世界樹に効果あるかわからないではないですか。世界樹と一緒にいるアルラウネが気に入れば世界樹にも効果があるとわかっているのでよいのです」というと「そうだな」とクリス兄様は納得してくれた。

鍋に作ったカイル隊長の魔力入り水を世界樹の根元に撒いてもらうことになった。
しかし世界樹は大きいので根元周辺にカイル隊長の魔力が入った水を撒くのには鍋の水だけでは足りなかったから、何回か作ってもらい撒いてもらう。
できることはやったはず。
相談して、様子を見に2週間後、再度ここへ来ることになった。


アトレに少し遠くにいたリプカとビアンカの家族に世界樹の様子を見に来たいから、2週間後また案内を頼みたいとお願いしてもらう。
世界樹のことについて協力はするが、ここへくるメンバーは今日いるメンバー以外は認めないとのことだった。
クリス兄様と学友たちは学園が始まるので来ることはできないが、他のメンバーでくると伝えて了承してくれた。

今日中に樹海を出るのなら、はやく出立した方がいいとカイル隊長が言ってきたのでアルラウネに2週間後また来ると挨拶しに行く。


「あなたと隊長さんに、これあげるわ」とキラキラした粉が入った小瓶が2つ渡される。
「私たち精霊族の脱皮した羽を粉にしたものよ。薬として使えるわ」
精霊族は数年に一度、羽が生え変わるらしい。

「貴重なものなのにもらってもいいの」
「世界樹と一緒に朽ち果てるだけと諦めていたのに、たった一日でここまで回復できたわ。またここまで来てくれるのでしょう。だから貰って頂戴」
「ありがとう。貰うよ」小瓶の一つをカイル隊長に渡す。

「私が貰うには貴重すぎます」と小瓶を受け取ろうとしないので
「カイル隊長しか世界樹を治すことはできないのだから、妥当な報酬だよ」と僕は押し付け、アルラウネと別れた。
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