異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな

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【リーンハルト:7歳】

第16話 クリス兄様が帰ってきた

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「ハルト様、起きてください」ジョルジュの声がする。
「いやだ、まだ寝る」と僕が布団をかぶろうとすると
「今日はクリスフォード様が戻ってこられるから朝早く起きて体力づくりされるとおっしゃっていましたよね。起きないとアトレ様にお願いしますよ」
「そうだった、ごめん忘れていた」と飛び起きた。

「アトレも一緒に走るか」と聞くと、アトレはお気に入りのクッションで寝たままの体制で、ここにいると返事してきた。
アトレは日中、騎士団がランニングしているときに一緒に外を走り回っているからな。

アトレを部屋に置いてジョルジュと一緒に屋敷の庭へ行き、いつもは午後からしている体力づくりをはじめていたら、
「ハルト、こんな朝早くからどうした。珍しいな」とジェラ兄様が声をかけてきた。
「クリス兄様が昼頃戻ってくるでしょ、いろいろ話を聞きたいからいつも午後にしている体力づくりを今のうちに終わらせようと思って」

「そういうことか。朝が弱いお前がいるからびっくりしたぞ。一緒に走るか」
「手加減してよ。ジェラ兄様についていくのは無理」
あははは・・・と笑いながら僕のペースで付き合ってくれた。


体力づくりのメニューをこなしてシャワーを浴びてから朝食を食べ、午前中の勉強に取り組んだ。今日の午後は自由だ。

本来、王都から屋敷までは鉄道で1日かかるが、クリス兄様は途中下車して仲の良い友達の家に1泊してから戻ってくるから今日の昼頃に屋敷に着く予定だ。
クリス兄様が王都に行ってから、もう3か月半たったが、色々あってあっという間に経ってしまったように思う。王都の話聞きたいしお土産も楽しみにしている。


「ハルト様、そろそろクリスフォード様が屋敷に着かれると早馬が着ましたので玄関にいきましょう」
「ジョルジュ、わかった。玄関に行ってクリス兄様をお出迎えしよう。アトレも一緒に行こう」
「わかった。一緒に行くよ(キャンキャン)」とクッションで寝ていたアトレが起きて伸びをする。
玄関に行くとすぐに母様やジェラ兄様も来た。
父様は樹海の砦に行って今は不在だ。

それからしばらくして馬車が見え、玄関前に止まり馬車の扉を騎士が開けクリス兄様が降りてきた。僕たちの目の前まで来て
「ただいま戻りました。出迎えてくれたありがとう」と笑顔で言ってくる。

「クリス、おかえりなさい。手紙では楽しそうにしているようだったけれど後で色々教えて頂戴。楽しみにしているわ」
「もちろんです。ジェラ、ハルト、アトレ出迎えありがとう。王都土産もあるからあとでゆっくり話そう」
「兄上、おかえり」
「クリス兄様、おかえりなさい。王都のお話し楽しみにしています」
「キャンキャン(おかえり)」
クリス兄様がシャワーを浴びて落ち着いてから居間に集まることになった。


2時間後、家族みんなが居間に集まった。
お茶菓子と紅茶を飲みながらクリス兄様様が王都土産をくれた。

父様には王都で流行しているお酒ウィスキーで他国からの輸入品。この国にはウィスキーはなかったみたいだ。
母様にはなかなか手に入らないスパイダーシルクで織った絹織物。
ジェラ兄様には王都で有名な鍛冶工房の短剣。
僕には王都で人気の新刊3冊と魔法付与できる魔石付ブローチ。僕の8歳の鑑定儀式のあとに魔法付与は決めればいいと言われた。
アトレには今使っているものより倍はあるふかふかのクッション。
僕でも寝られそうな大きさのクッションだった。アトレも大喜びでさっそくクッションにダイブし寝転がっている。


学園でいつも一緒に行動しているのが、メイベル侯爵家長男ラインハルト、父親はやり手の宰相閣下。息子のラインハルトもニコニコ笑顔で毒舌を吐く。でも勉強もできるし面倒見がよく慕う人も多いそうだ。

ザガリー伯爵家次男マクスウェル、本人は次男なので騎士を目指しているらしい。
おおらかで細かいことは気にしない脳筋に近いタイプみたいだがムードメーカーでもあり一緒にいて楽しい存在らしい。
今回一泊した先は、ザカリー伯爵家の領地にあるブロッサムレイクという有名な湖の避暑地で、レインボーフィッシュ釣りと料理を楽しんだそうだ。

ローザリンデ伯爵家の長男ジャレット、美形姉妹で有名な3人の姉がいて末っ子。
老若問わず女性に対して非常に優しく、見た目もいいため常に女性に囲まれているが本人は女性が苦手らしい。
小さいころから姉3人に女性への接し方を徹底的に叩き込まれており、その習慣が抜けきらず負の連鎖に陥っているそうだ。たぶん3人の姉のせいで女性が苦手になったような気がする。

学園に戻る前に我が家に遊びに来てから一緒に学園に戻り、来年の夏はメイベル侯爵家とローザリンデ伯爵家へ行くそうだ。
個性豊かな面々みたいで会えるのが楽しみである。

彼らと仲良くなったきっかけは、僕がプレゼントしたブックバンドをラインハルトがどこで買ったのか聞いてきたのがきっかけらしい。
ラインハルトとマクスウェルは領地が隣どうしの幼馴染。
ジャレットについてはマクスウェルが女性に囲まれ困っているジャレットを助けたことから懐かれたらしい。

3人ともブックバンドを欲しいとせがまれ、ラジエルが王都の別邸に見本やデザイン画をもっていって対応したそうだ。
そうしたら周りにも欲しいといわれラジエルに対応をお願いしたそうだ。

「ラジエルってずっとこっちにいるのに、いつ王都にいっているのかな」僕がつぶやくと
「こっちに来ようとしていた時にクリスから手紙が来て対応してもらったのよ。今は我が家を通さずに宝石商と直接やり取りをお願いしているわ。ラジエルはハルトとマリアの対応で忙しいから」
母様、なぜか僕とマリアが問題児のように聞こえますが・・・

「そうそう、マリアって商会に入った魔道具師だよね。王都に送ってもらった新しいアイロンが使いやすいって侍女長達が喜んでいたよ。もっと台数が欲しいとも」

「そうなのよ。マリアが開発した新しいアイロンは評判が良くてお友達にも贈ったらもっと欲しいと言われているの。それにドライヤーという髪を乾かす魔道具も新しく作ってね。これも販売したら絶対売れると思うわ。ハルトの方もやらかしててねぇ。我が家の利益なるからいいのだけれど人手不足で対応が追い付かないのよ」と母様が愚痴っぽく言っている。

ヘンリーがドライヤーとガラスで作ったチャームやペンダント、イヤリング、カフスボタンの見本をクリス兄さまに見せる。
「へぇー、ガラスに模様つけるって発想面白いし、これも流行りそうだ。カフスボタンは2、3個こっちにいる間に作ってもらおうか。いやあいつらも見たら欲しがるだろうな。それと僕は風魔法で髪を乾かすけど魔法が使えない人にはドライヤーは便利だと思う」とクリス兄さまはドライヤーを直接髪にあてて試していた。


トンボ玉は同じデザインでも微妙に違っているから1品ものだしなと思っていると
「兄上いいだろ。コレ」
ジェラ兄さまの誕生日プレゼントに贈った飾りナイフを見せびらかすようにクリス兄さまの目の前にもっていく。

ジェラ兄さまの飾りナイフはプレート部分に防御の呪文と植物の葉が絡まったデザインを彫刻している。鞘の部分はフィアンマという火を吐く鳥をくず宝石でデコってもらった。
フィアンマは樹海奥にいるAランク魔獣で遭遇することはめったにない。

だけどアトレのこと羨ましがっていたし、ジェラ兄さまは火魔法が使えるから従魔契約できたらいいかなと願いを込めてと、もっともらしいことを言って渡したらとっても喜んでくれた。

絵柄の意味も自慢げにクリス兄さまに話している。
クリス兄さまは飾りナイフを手に取ってプレート部分や鞘の絵柄を見ていたと思ったら、僕の方を見てニッコリする。
「ハルト、もちろん私にも作ってくれるよね」

クリス兄さまの誕生日は来月初めだ。夏休みなので家族でお祝いできる。
「来月の誕生日まで楽しみにしていてください」
「ハルト私達にも頼んだよ(わ)」と父様と母様も言ってくる。
言われると思ったよ。余分に短剣を作ってもらってよかったぁー。
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