上 下
5 / 20

第5話 もふもふバンザイ

しおりを挟む
行きと同じようにマイヤー騎士と一緒に馬に乗る。僕は子フェンリルを抱いて。
走ってついてくるかと子フェンリルに聞くが僕の腕の中から出てこないので抱けということだろう。
屋敷に着くと、執事のヘンリーはじめ侍女たちが出迎えてくれる。
僕が抱いている子フェンリルを見て顔には出さないがみんな興味津々のようだ。

「おかえりなさいませ。無事のお戻りで安堵いたしました。お風呂の用意はできておりますので汗を流されたらよろしいかと」
「ヘンリー、わかった。ジェラにハルト、汗を流してから父上に報告に行こう」とクリス兄様が言う。

「ところでリーンハルト様が抱いているのは魔獣の子供でしょうか」
「フェンリルの子供だ。ハルトに懐いて離れないのだよ。だから連れて帰ってきた」
「・・・フェンリルですか。わたくしから先に旦那様にご報告しておきますが、詳細は皆様から旦那様にご報告をお願いいたします」


僕は子フェンリルとジョルジュと一緒に僕の部屋に戻る。
子フェンリルに向かって「君も一緒にお風呂に入ってきれいにしようね」と話しているとジョルジュが呆れた顔をする。
「だって、屋敷にいることになったのだから奇麗にしないと。それに洗ったら毛並みがもっと良くなると思うんだ」

「承知しました。用意は済んでいると聞きましたので一緒にお入りください」
子フェンリルはちょっといやそうな顔をしたような気がするが気にせず抱いて浴室に向かった。
浴室から出ると子フェンリルをジョルジュの風魔法で乾かしてもらった。
毛並みがサラサラのフサフサになり触っていると気持ちがいい。
子フェンリルも気持ちよさそうだ。


僕たちの支度が終わり居間にいったら、クリス兄様はすでに来ていた。
「子フェンリル、なんか毛並みが奇麗になってない」
「あっ、わかった。一緒にお風呂に入って洗ったら、すごいサラサラのフサフサになったんだ。ねぇ、クリス兄様に触らせてあげてくれないか」と子フェンリルに尋ねるとキャンと鳴くので了解してくれたみたいだ。

「ありがとう」とクリス兄様が子フェンリルに礼を言ってからなではじめた
「ほんとに毛並みがサラサラしているしフサフサだね。これは癖になりそうだ」と笑いながら言うがなでるのをやめなかった。


「この子がフェンリルの子供か」と居間に入ってきた父様が言うので
「そうです」と僕は答える。
子フェンリルを保護した経緯をクリス兄様が話してくれ、父様が僕の前に来て子フェンリルに話かけた。

「リーンハルトを気に入ってくれてありがとう。しかし中には君に悪意を向けてくる者もいるだろう。攻撃してきたら反撃しても構わないが殺さないでくれ。殺してしまうとリーンハルトとは一緒にいられなくなる。我々家族やリーンハルトが戦ってもいいといった時は構わない。約束してくれるだろうか」と問うと父様と僕の顔を見てキャンと鳴く。

「本当に我々の言葉を理解しているようだな。君を我々の家族の一員として迎えよう。リーンハルトと仲良く過ごしてくれ。ハルト、この子の名前を早く決めなさい。決めたら冒険者ギルドに従魔の申請に行こう。この子を守るためでもある」


母様も僕たちの前に来て
「ハルト。お友達ができてよかったわね。わたくしはリーンハルトの母です。ハルトのことよろしくお願いしますね」と子フェンリルに挨拶をしてくれた。
子フェンリルも母に向かってキャンと挨拶をする。

「ほんとに賢いわね。ところで奇麗な毛並みね。触らせてもらえないかしら」
子フェンリルがキャンと鳴き了解したので、母様にフェンリルを渡す。
「なんてサラサラでフサフサして気持ちいいわ。癒されるわ。時々でいいからこれからも触らせて頂戴ね」とお願いしながらなでるのをやめない。

「こんなにあっさり飼うのを認めてくれると思わなかった」
「反対されたかったのか」父様が面白そうに言う。
「まあ、このフェンリルがハルトを気に入ってくれているし、我々の言葉も理解しているようだしな。反対する理由はないから名前を決めなさい」


「うーん、どうしようか。ウェントゥス、アトレ、ヴェント・・・」
子フェンリルがキャンキャンと鳴く。
「気に入った名前があったの」子フェンリルがキャンキャンと僕の周りでくるくる回る。
行動が子犬そのものなのだけれど・・・

「ウェントゥス」「・・・」
「アトレ」キャンキャンと鳴く。
「ヴェント」「・・・」

「アトレがいいの」キャンキャンと鳴く。
「今日から君はアトレね。僕はリーンハルト。改めてよろしく」突然、ピカッーと僕とアトレに光が降り注ぐ。
眩しい、何が起こったのか。


僕が混乱している間に光は徐々に消えていった。家族も周りにいる執事のヘンリーや侍女たちもボーゼンとしている。
いち早く正気に戻ったヘンリーが
「リーンハルト様、お怪我はありませんか。ご気分が悪くなったとかございませんか」
「ヘンリー、大丈夫。なんともないよ。今の何だったのかな」

考え込んでいた父様が
「ハルト・・・・、書物で読んだだけだからはっきりとは言えないが、アトレと従魔契約したのではないか」


僕はアトレを僕の目線まで持ち上げて「父様が言っていることって本当」と聞くと、アトレは「そうだよ」と胸を張って言ってくる。
「アトレが・・・・今しゃべったぁー」
「「「「えー」」」」家族みんな大騒ぎである。

「ハルト、本当にアトレがしゃべったのか」父様が確認してくるがスルーして
「アトレ、僕と従魔契約したの」
「そうだよ。ハルトの魔力は多くてとても気持ちがいい。だから一緒にいたいって思った。あと僕の傷も治してくれたし、なによりハルトとしゃべりたかったから」
アトレの言葉をみんなに伝える。

「ハルトの魔力か。8歳の儀式が終わるまで魔法は使えないが、高位種のフェンリルが気に入るということは魔力量が思っていた以上に多いのかもしれない。ところでアトレ、従魔契約をしたら魔獣と意思疎通ができるものなのか」

アトレの話だと高位種の魔獣なら意思疎通可能。
ただし本当に魔獣がしたいと思わない限りだめだそうだ。アトレから聞いた話を伝えると父様と兄様たちが残念そうな顔をした。
わかるよ。相棒・・・ほしいよね、うん。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族はチート級、私は加護持ち末っ子です!

咲良
ファンタジー
前世の記憶を持っているこの国のお姫様、アクアマリン。 家族はチート級に強いのに… 私は魔力ゼロ!?  今年で五歳。能力鑑定の日が来た。期待もせずに鑑定用の水晶に触れて見ると、神の愛し子+神の加護!?  優しい優しい家族は褒めてくれて… 国民も喜んでくれて… なんだかんだで楽しい生活を過ごしてます! もふもふなお友達と溺愛チート家族の日常?物語

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました

上野佐栁
ファンタジー
 前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。

出来損ない皇子に転生~前世と今世の大切な人達のために最強を目指す~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日、従姉妹の結衣と買い物に出かけた俺は、暴走した車から結衣を庇い、死んでしまう。 そして気がつくと、赤ん坊になっていた。 どうやら、異世界転生というやつをしたらしい。 特に説明もなく、戸惑いはしたが平穏に生きようと思う。 ところが、色々なことが発覚する。 え?俺は皇子なの?しかも、出来損ない扱い?そのせいで、母上が不当な扱いを受けている? 聖痕?女神?邪神?異世界召喚? ……よくわからないが、一つだけ言えることがある。 俺は決めた……大切な人達のために、最強を目指すと! これは出来損ないと言われた皇子が、大切な人達の為に努力をして強くなり、信頼できる仲間を作り、いずれ世界の真実に立ち向かう物語である。 主人公は、いずれ自分が転生した意味を知る……。 ただ今、ファンタジー大賞に参加しております。 応援して頂けると嬉しいです。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ
ファンタジー
死ぬ間際、俺はじいちゃんからある土地を譲られた。 木に囲まれてるから陽当たりは悪いし、土地を管理するのにも金は掛かるし…此処だと売ったとしても買う者が居ない。 何より、世話になったじいちゃんから譲られたものだ。 そうだ。この雰囲気を利用してカフェを作ってみよう。 なんか、まぁ、ダラダラと。 で、お客さんは井戸端会議するお婆ちゃんばっかなんだけど……? 「おぉ〜っ!!? 腰が!! 腰が痛くないよ!?」 「あ、足が軽いよぉ〜っ!!」 「あの時みたいに頭が冴えるわ…!!」 あ、あのー…? その場所には何故か特別な事が起こり続けて…? これは後々、地球上で異世界の扉が開かれる前からのお話。 ※HOT男性向けランキング1位達成 ※ファンタジーランキング 24h 3位達成 ※ゆる〜く、思うがままに書いている作品です。読者様もゆる〜く呼んで頂ければ幸いです。カクヨムでも投稿中。

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

処理中です...